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新刊
□迷い仔猫の居候(ひとでなしの二人組1)
A5(2段組み)/84P/オンデマンド/600円
空から幽霊少女が降って来た!
現代オカルトファンタジー。web連載をまとめたものです。

既刊

■調律師
A5(2段組み)/252P/オンデマンド/1000円
現代オカルトファンタジー調律師サイト掲載分+後日談。
Amazonでも取扱あります(委託分は1,500円です)

かふぇ・えくすぷれす
A7/52P+α/コピー/100円
喫茶店の話に+αしてまとめたもの。
JR某駅改札でてすぐ右側にある関東チェーンの喫茶店かふぇ・えくすぷれすを舞台にした連作短編集。
コピー本ならではの、お遊び一杯の本にした、つもり


呪詛裁判所にようこそ!
B6/コピー/100円
ジュソサイバンショって変換すると「呪詛裁判所」になるよね?(正しくは、受訴裁判所)
ということから発展した傍聴×ゴーストバスターもの。
高校生の一海さん二人と小学生沙耶の話。

■この点に関する原審の判断は結論において正当である
B6/27頁/コピー /100円
リーガルラブ(と呼びたい)法律小ネタでの恋愛掌編。
九官鳥メンバー+α。連作短編風。
大体いつも九官鳥でやってるノリの話です
収録作:この点に関する原審の判断は結論において正当である
    原因において自由な行為/背信的悪意者/承継取得/原始取得
    宣誓/明認方法/債務不履行
**電子書籍版もあります→
Amazonでの取扱あります→委託分は200円

■法律童話
B7/コピー /100円
童話の法律パロ。ツイノベとSS。赤ずきんや白雪姫など。

完売しました。パブーの方で電子書籍販売中。


■恋愛色 (残部極少)
A6/47頁/コピー /100円 
[約30の嘘]からお借りしたお題で、色と恋愛の掌編集。
話のテーマカラーの紙をそれぞれ使用
収録作:しばし完熟を待て(緑)/泥にまみれたアンクレット(茶色)/空が泣くなら(青)
    トワレの小瓶(桃)/舞い上がる粉砂糖(白)/カスタードマスタード(黄)
完売しました。パブーで電子書籍販売中



表紙



『ちょっとあんた! そこの茶髪にギンガムチェックのシャツきた、むっつりしたそこのあんた! あんた、あたしのこと見えてるんでしょう? うら若き乙女がビルから飛び降りてきたっていうのに無視するなんて一体どういう了見よっ! ひとでなし!』

神山隆二の前に降って来たのは、自称記憶喪失の幽霊少女だった。
なし崩し的に隆二のもとで居候を始める幽霊少女、マオ。
一人で怠惰な生活を送っていた隆二には、マオがいる生活もそれなりに刺激的で楽しいものだった。
そんなある日、少女が現れる。
「ソレを渡してください」
マオが抱える秘密とは!?

おまけ


おまけの栞

本文見本

 女は、足下を見下ろした。
 人が豆粒のような小ささで歩いているのが見える。
 スカートの裾が、風でふわりと揺れる。
 一つ息を吸う。
 そして女は、ビルの屋上から飛び降りた。


 それは三日間続いた雨が止み、憎らしいぐらい快晴の日だった。
 神山隆二は、切れた珈琲と煙草を買いに普段蟄居している自宅からしぶしぶ出てきた。
 日差しがまぶしい。
 ほどほどに人通りのある道をだらだらと歩く。家から一番近いコンビニが徒歩十分というのはやっぱりよくない。家から二分のところにあったコンビニは昨年末閉店した。たかだか珈琲と煙草を買うのに五倍も歩くなんて非生産的だ。
 などと堕落しまくったことを思いながら、のばしっぱなしの茶色い髪を右手でかきあげる。
 ジーンズのポケットに両手を突っ込んでだらだらと歩く。
『やー』
 上から何かかけ声のようなものが聞こえた気がして、上を見る。
 ぎょっとする、とはこのことだ。
 ビルの上から女が一人ふってきた。
 え、何自殺?
 思わず立ち止まる。急に立ち止まった隆二の背中に真後ろを歩いていたサラリーマンがぶつかった。スーツ姿の彼はちっと舌打ちする。
 すみません、ともごもごと呟いて頭を下げる。
 その間に、女は隆二の鼻先を通り過ぎて地面に落下した。
 アスファルトに頭をのめり込ませて、足だけが二本飛び出ている。なんかで見た事ある光景にしばし考え、
「すけきよかよ」
 有名な小説の一場面を思い出し、口の中で言葉を転がすようにしてつっこむと、その足を通り抜けてコンビニを目指した。
 こうも暑いと変な輩が増えるな。
『って、ちょっとまったー!』
 後ろから声が聞こえる。女の声にしては高すぎず、耳に心地いい程度の高さで、隆二は少し感心する。声量はともかく。
『ちょっとあんた! そこの茶髪にギンガムチェックのシャツきた、むっつりしたそこのあんた! あんた、あたしのこと見えてるんでしょう? うら若き乙女がビルから飛び降りてきたっていうのに無視するなんて一体どういう了見よっ! ひとでなし!』
 ギャギャー騒ぎつつ、近づいてくる。
『聞いてるんでしょう! 逃がしはしないわよっ!』
 女は隆二の前に両手を広げて立ちふさがる。しかし、それは丁度コンビニの前。隆二は女の鼻先で曲がり、すっと店内に入った。
 入ってすぐの角を曲がる。窓際、雑誌のラックの前を通り過ぎる。週刊誌には毒々しい字で「怪奇! ミイラの謎!」という文字が踊っていた。
 いつも飲んでいるインスタントコーヒーを手に取り、レジにむかい、
「マルボロ」
 すっかり顔なじみになった店員にそう声をかける。店員はいつも通り三箱用意してくれた。
『ちょっとちょっとちょっとちょっと!! 何無視してくれちゃってんのよ!』
 慌てて店内に入ってきた女が耳元でぎゃーぎゃー騒ぐ。
 相変わらず愛想のない店員に代金を支払う。
 もっと愛想のいい可愛い女の子もいるのに。なんでこいつはこんなに愛想がないんだか、同じ店なのに。
 黙ったまま金銭の授受が行われる。
『ちょっと、聞いてるの!? 聞いてるでしょう!? なんとかいいなさいよ! あ、だからって「なんとか」ってだけいう、そんなお約束な展開は許さないんだからね! 無視しないでよー!』
 乱暴にビニールに入れられたコーヒーと煙草を持ち、コンビニを後にする。ついでに入り口のところにあったバイト情報誌をとると、袋の中に押し込んだ。そろそろなにか仕事を探さないと。
『あんた、あたしのことをなんだと思ってるのよ? 馬鹿にしてるの!?』
 ぎゃーぎゃー騒ぐ女を通り抜ける。
「なにってそりゃぁ」
 小さく口の中だけで呟く。
「頭湧いた幽霊だろ」
 あっついなー、と空を睨み、家路を急いだ。

 **

 少女は正直、途方に暮れていた。
 少女が追っている実験体の情報が、ぷつりと途絶えてしまった。
 ただ、それに関係すると思われる女性は見つけた。もしかしたら偶然かもしれないけれども、多分、少女が探しているものと関係している。
 それは、目撃情報の最後の場所とも一致していた。
 なので、あの辺りに住んでいる知り合いに聞く事にしよう。そうすれば、何かあるだろう。
 少女はそう思った。


 静寂は嫌いではない。
 聞こえてくるのはただ風が動く音と自分が歩く音。後は他に、聞こえてくる音がない。
 そんな状態は、嫌いではない。
 真夜中、道の真ん中に立って、隆二はそんなことを思う。
 いつも隣にいるマオは、眠っていたのでおいてきた。
 突然コーヒーが飲みたくなって、でもあいにく切らしていた。
 今は便利だよなぁ、コンビニなんてあって。そんな年寄りみたいなことを考えながら、コーヒーと思いつきで買ったチョコの入った袋を振り回すようにして持ちながら歩く。
 かさかさと、袋の音がする。
 静寂は嫌いではない。
 寧ろ、心地よいとも思う。

 家の鍵を出して、開ける。
『隆二っ!』
「うわっ!」
 開けたと同時にマオが飛び出て来た。
『もぉ、どこ行ってたのよぉっ!』
 半分泣きそうな顔をして、マオは言った。
「コーヒーを買いに」
 そういって袋をかかげてみせると、マオは頬を膨らませた。
『起きたら一人ぼっちで寂しかったんだからぁ! 起こしてよ、誘ってよ。このカフェイン中毒!』
 言いたいだけ言うと、マオは部屋の奥に引っ込んだ。
 多分、ソファーの上でふて寝している。うつぶせになって、こちらが声をかけても反応しない。それでも、横目だけでちらっとこちらを見てくることだろう。
 すっかり慣れたマオとのやりとりを思い、少しだけ笑う。
 そう、静寂は嫌いではない。
 寧ろ、心地よいとも思う。
 ずっと一人で居たから。長い事、一人で暮らしていたから。
 
 昔、一緒に暮らしていた女性がいた。
 体の弱い女性だった。
 ずっと一緒にいたいと思っていた。
 でも、自分は彼女を見捨てた。
 彼女が自分より先に死んでしまうことが怖くて、彼女の元から姿を消した。
 一度、様子を見に戻った。もう一度、やり直せないか、とも思っていた。
 けれども、彼女は既に亡くなっていた。
 あの時、誓った。
 彼女のお墓の前で。もう、人とは深く関わらないと。亡くしてしまうのが、怖いから。
 それなのに、と少しだけ自嘲気味に唇を歪める。

「マオー、機嫌直せー」
 それなのに今、ソファーの上で拗ねたマオを、居候猫を宥めている。
「マオ、ごめんな」
 ちょっとだけ、マオが身じろぎした。
『起きたら一人で、寂しかったの』
 半分だけ顔をあげて、こちらを見る。膨らんだ頬。
「ごめん」
 もう一度謝る。
『隆二の唐変木』
「ごめんって」
『いいよ、もう。どーせ、隆二だもん』
 そういって、マオは再び顔を枕に押し付けるけど。ちょっと笑っていたからこれでもう大丈夫。
 隆二は少しだけ微笑んだ。

 マオは人じゃない。だから、あの時の誓いを破った事にはならない。
 幽霊は自分より先に死んだりしない。
 だから、大丈夫。
 そんなことを思う。



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