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12日目(後半)



スゲースゲー!
伝説の渡り鳥・デカワタリが目の前にいるよ!
俺、初めて見ちゃったよ!

デカワタリさん
ほんとでっかいねぇ!




デカワタリさんは100年以上生きてる大先輩だった。
礼儀にはキビシイようだ。
今後は気をつけないと。

敬意をはらって
これからはアニキと呼ばせていただこう。


アニキは渡りの途中に
ケガをして泳げないでいるゾウアザラシを見つけて
ほっとけなくなって
一番近いこの海岸まで運んできたらしい。

でも、重いゾウアザラシ運んでだいぶ体力使っちゃったから
一ヶ月ぐらいはこの海岸で休んでいくってさ。
(渡り鳥なのにマイペースだね)

よし!
アニキの体力が回復したら
ウェッデルちゃんをイイトコ島まで運んでもらおう!
アニキが元気になったら頼んでみよう!

大丈夫!きっとOKしてくれる!
デカワタリって一見こわそうだけど
心の優しい鳥だってウワサだもんな!



ウワサだけかも。

13日目

あれからデカワタリのアニキは、ずーっと寝たまんま。
ゾウアザラシ運んでよっぽど疲れたんだろうなぁ。
(そりゃ疲れるよね)

今日は
ウェッデルちゃんのいる西の海岸まで行った。
怪鳥デカワタリと知り合いになったよ!って
報告しようと思って。
うまくいったら
イイトコ島に運んでもらえるかもしれないよ!って。

西の海岸は、俺んちからはちょっと遠いんだけど
ウェッデルちゃんの喜ぶ顔を想像しながら歩いてたら
あっという間に着いちゃったよ。



ウェッデルちゃんは海からあがったばかりで
頭に海草がついてた。
へんてこな頭のウェッデルちゃんを見て
ちょっとかわいいな、って思った。
俺、天然ぽいコに弱いんだよなぁ(照

ウェッデルちゃんに
「大きなワタリドリの背中に乗って
イイトコ島に運んでもらう作戦」について話した。
あともちろん、アニキと出会った事も。
ウェッデルちゃんはやっぱりすっごく感激してくれた。


「すごい!ありがとうペンゾー君!
私、そんな作戦ぜんぜん考えつかなかった!
でもなんでそんなに私の夢のこと考えてくれたの?
ペンゾー君、自分の夢のことで忙しいのに」

俺は言った。
「無謀な夢をおっかけてるウェッデルちゃんの気持ちが
俺はすごくよくわかるから、他人事とは思えなくてさ。
つい一生懸命考えちゃったよ。」



ウェッデルちゃんは目を細めて(←たぶん笑顔)
「ありがとう。一緒に頑張ろうね。
私も夢をあきらめないから
ペンゾー君も絶対あきらめないでね。
ペンゾー君が途中であきらめたら私
『やっぱり夢は叶わないものなのかしら』って思って
頑張れなくなっちゃいそうだから
ペンゾー君
絶対飛んでね。
約束だよ。」
と言った。

そうか。
俺があきらめたら
ウェッデルちゃんも頑張れなくなっちゃうのか。
ガッカリしちゃうのか。
その笑顔ももう見れなくなっちゃうのか。
それは悲しいなぁ。

じゃあ俺、飛ぶよ!
絶対に飛ぶよ!
だからウェッデルちゃんも
あきらめるなんてナシだぞ!

俺が夢中でそう叫んでたらウェッデルちゃんが



ギュってしてきた。

びっくりした。
すっごいドキドキした。

あと、ちょっと痛かった。
アザラシの爪ってけっこう鋭いんだな。
ちょっと爪アトついちゃったよ。
そんなのどうでもいいけどさ。



ちょっとどころじゃなかった。

14日目

ゆうべは眠れなかった。

なんか
胸が一晩中キューッてして
苦しかったんだ。

どうしちゃったんだろ俺。

病気かもしれない。
今日はおとなしく寝ておくよ。



ちょっと爪アトもね…
思ったより痛いっていうか…

15日目(前編)

ようやくアニキが起きたから
「紹介したいアザラシがいる」っつって
ウェッデルちゃんのとこに連れていった。


俺はウェッデルちゃんの顔を
なかなかマトモに見ることができなかったよ。
なんかドキドキしちゃってさ。

まぁ、それはいいや。


で、アニキに
ウェッデルちゃんの生い立ちや夢を話して
イイトコ島に連れてってやってくれないか、って頼んでみた。

アニキに頼みごとするのはちょっと勇気がいったよ。
だってホラ、こわそうだし。



アニキは言った。

「イイトコ島水族館には今、フワフワの子アザラシがいて
そいつがアイドルだ。
多分あんたの弟か妹だろ。
あんたのママも子アザラシの人気には勝てなくて
アザラシショーから引退したぐらいだ。
今あんたが帰っても」




い、いくらそれが事実でも
直球すぎるぜアニキ!(涙)

こういう時って
なんて言ってウェッデルちゃんをなぐさめたらいいんだ?
俺はそれがわかんなくて、ちょっと黙っちゃったよ。

情けないなぁ俺…(涙

そうだ!せめて話を変えよう!
と思って俺は
アニキに自分の夢を語って
飛ぶためにはどうしたらいいか聞いてみた。

アニキは言った。

「ペンギンなんだから




…ミもフタもないよアニキ…(涙

15日目(後編)

アニキはハラがへったと言って
1人で餌を取りに行ってしまった。



いや、こんな時に俺が凹んでてどうする!
俺があきらめたら
ウェッデルちゃんも頑張れなくなるって
この前言われたばっかじゃないか!
俺が前向きになって
ウェッデルちゃんを元気づけなくちゃ!

そう思って
俺は夢中で叫んだ。



飛ぶ!
飛ぶったら飛ぶ!
アニキには申し訳ないけど
絶対に飛んでみせる!
ウェッデルちゃんの目の前で!



ウェッデルちゃんは
びっくりしたような顔で俺を見た。

そのあと
「うん、そうだよね。私も頑張る!」
って目を細めた。


ウェッデルちゃんが
ちょっと元気になってくれたのを見届けてから
バイバイした。




帰り道、俺は思った。
ウェッデルちゃんに、こう言ってあげたらよかったんだ。

「フワフワの赤ちゃんもたしかにかわいいけど
ウェッデルちゃんのほうがずっとずっとかわいいから
きっとアイドルになれるさ!」って。

一番いい言葉って
一番いいタイミングで思いつかないで
絶対あとで思いつくんだ。
あとで思いついたってどうしようもないのになぁ。

まぁ、思いついたところで
目を見て言えるセリフじゃないけど。
スラッと言えるヤツいたら尊敬するよ。
弟子入りしたいぐらいだよ。


なんか今日は凹みぎみな話になっちゃったなぁ。
こんな話ニンゲン語に翻訳しなくていいよペンサク。








しなくていいって言ってんじゃん!


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