閉じる


10日目〜14日目

10日目

だいたいさ
アイドル云々以前に
イイトコ島に戻ること自体が不可能だよな。
遠すぎてワタリドリさんぐらいしか行けないもんな。

でも俺は考えた。


赤ちゃんアザラシが
遠い遠いイイトコ島水族館から流されて
無事にここに辿り着いたという
とんでもないラッキーについて。
(大抵は他の動物に食べられるか
力尽きて死ぬよね。)
ウェッデルちゃんはもしかしたら
超ラッキーな女の子なのかもしれない。

辿り着いたとこが
たまたま同種の仲間のたまり場だったってのが
その証拠のような気がする。

だとしたら、夢の実現もあながち
無謀とは言えないような気がしてきた。

うん。俺はそう思うよ。

ま、俺の「飛ぶ」っていう夢のほうが
実現すんの早いと思うけどね。
だって俺
鳥だもん。




なんだよ!
この前はたまたま失敗しただけだよ!
こんな写真載せんなよペンサク!

11日目

また一晩考えて、ついに俺は確信した。


ウェッデルちゃんの夢は
実現不可能なんかじゃない!

だってイイトコ島に行く方法はあるんだよ!
俺、考えついちゃったもん!


=イイトコ島に行く方法=
1・ウェッデルちゃんがすっごく頑張って泳ぐ
2・大きなお魚さんにつかまって運んでもらう
3・ニンゲンに連れていってもらう


どうだ!いい案ばっかりだろ?
俺って頭いいなぁ。
さっそく明日ウェッデルちゃんに報告に行こう!



ん?
何か言ったか?ペンサク。
え?
どの案も無理っぽい?
なんでだよ


=ペンサクの反論=
1・泳いで行くには遠すぎる。
  すっごく頑張るとかいう問題じゃなくて。
2・大きな魚はみんな遠くの沖にいるから
頼みに行けない。
3・ここにはニンゲンがいないし
ニンゲンが来たのも見たことない。
  (オオタハカセ除く)


なんだよ全否定かよ!
否定するんならおまえも何か1個ぐらい
いい案だせよ!


=ペンサクの案=
「すっごく大きなワタリドリさんの背中に乗って運んでもらう」


鳥?
ウェッデルちゃんを乗せることができる鳥?



どんだけでかい鳥だよ!
いたらすげーよ!
バカッ!


12日目(前半)



こ、これはっ!

伝説の怪鳥・デカワタリ!?




12日目(後半)



スゲースゲー!
伝説の渡り鳥・デカワタリが目の前にいるよ!
俺、初めて見ちゃったよ!

デカワタリさん
ほんとでっかいねぇ!




デカワタリさんは100年以上生きてる大先輩だった。
礼儀にはキビシイようだ。
今後は気をつけないと。

敬意をはらって
これからはアニキと呼ばせていただこう。


アニキは渡りの途中に
ケガをして泳げないでいるゾウアザラシを見つけて
ほっとけなくなって
一番近いこの海岸まで運んできたらしい。

でも、重いゾウアザラシ運んでだいぶ体力使っちゃったから
一ヶ月ぐらいはこの海岸で休んでいくってさ。
(渡り鳥なのにマイペースだね)

よし!
アニキの体力が回復したら
ウェッデルちゃんをイイトコ島まで運んでもらおう!
アニキが元気になったら頼んでみよう!

大丈夫!きっとOKしてくれる!
デカワタリって一見こわそうだけど
心の優しい鳥だってウワサだもんな!



ウワサだけかも。

13日目

あれからデカワタリのアニキは、ずーっと寝たまんま。
ゾウアザラシ運んでよっぽど疲れたんだろうなぁ。
(そりゃ疲れるよね)

今日は
ウェッデルちゃんのいる西の海岸まで行った。
怪鳥デカワタリと知り合いになったよ!って
報告しようと思って。
うまくいったら
イイトコ島に運んでもらえるかもしれないよ!って。

西の海岸は、俺んちからはちょっと遠いんだけど
ウェッデルちゃんの喜ぶ顔を想像しながら歩いてたら
あっという間に着いちゃったよ。



ウェッデルちゃんは海からあがったばかりで
頭に海草がついてた。
へんてこな頭のウェッデルちゃんを見て
ちょっとかわいいな、って思った。
俺、天然ぽいコに弱いんだよなぁ(照

ウェッデルちゃんに
「大きなワタリドリの背中に乗って
イイトコ島に運んでもらう作戦」について話した。
あともちろん、アニキと出会った事も。
ウェッデルちゃんはやっぱりすっごく感激してくれた。


「すごい!ありがとうペンゾー君!
私、そんな作戦ぜんぜん考えつかなかった!
でもなんでそんなに私の夢のこと考えてくれたの?
ペンゾー君、自分の夢のことで忙しいのに」

俺は言った。
「無謀な夢をおっかけてるウェッデルちゃんの気持ちが
俺はすごくよくわかるから、他人事とは思えなくてさ。
つい一生懸命考えちゃったよ。」



ウェッデルちゃんは目を細めて(←たぶん笑顔)
「ありがとう。一緒に頑張ろうね。
私も夢をあきらめないから
ペンゾー君も絶対あきらめないでね。
ペンゾー君が途中であきらめたら私
『やっぱり夢は叶わないものなのかしら』って思って
頑張れなくなっちゃいそうだから
ペンゾー君
絶対飛んでね。
約束だよ。」
と言った。

そうか。
俺があきらめたら
ウェッデルちゃんも頑張れなくなっちゃうのか。
ガッカリしちゃうのか。
その笑顔ももう見れなくなっちゃうのか。
それは悲しいなぁ。

じゃあ俺、飛ぶよ!
絶対に飛ぶよ!
だからウェッデルちゃんも
あきらめるなんてナシだぞ!

俺が夢中でそう叫んでたらウェッデルちゃんが



ギュってしてきた。

びっくりした。
すっごいドキドキした。

あと、ちょっと痛かった。
アザラシの爪ってけっこう鋭いんだな。
ちょっと爪アトついちゃったよ。
そんなのどうでもいいけどさ。



ちょっとどころじゃなかった。

14日目

ゆうべは眠れなかった。

なんか
胸が一晩中キューッてして
苦しかったんだ。

どうしちゃったんだろ俺。

病気かもしれない。
今日はおとなしく寝ておくよ。



ちょっと爪アトもね…
思ったより痛いっていうか…