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第7章 将来を見据えたリーダー選抜

 現在を歴史的に把握する

 既に述べたように、現在は江戸末期以降の三度目の国難です。広範囲な地震と津波の被害に加え、福島第1原子力発電所の放射性物質大量飛散事故が重なり、復興を困難にしています。おそらく、地震と津波の災害だけなら、東北は直ちに従来型の社会モデルで復興に動き出しています。ところが、それを困難にしているのが原発事故です。従来型の社会モデルは、エネルギー及び物質の大量消費であり、その象徴が原子力発電所なのです。電力不足に端を発した節電を始めとするエネルギー及び物質の消費低減方向は、近代西欧で誕生した西欧文明が近年のグローバリズムにより競争激化を招き、生き残りをかけた競争によるエネルギー及び物質の消費増大傾向と真逆になります。ここにおいて、政府は復興モデルを描けず困難に直面しているのです。そうは言っても、いつまでも復興に着手しないわけには行きません。多分、従来型の復興モデルにするでしょうが、多くの人は多量のエネルギー及び物質を消費する文明社会をこのまま続けてよいか疑問が湧いています。ここに、有権者という環境が変わり始めたのです。

 さらに、西欧文明成立の基盤は順調な経済成長にあります。しかし、経済をグローバル化させたため、米国の2007年サブプライム・ローン問題と2008年リーマン・ショックにより、自国の経済が不良債権の処理に忙殺され、正常な経済成長が不可能になりました。米国経済の変調は西欧にも影響を与え、ギリシャの経済破綻を招き、スペイン、ポルトガル等も経済苦境になりつつあります。そして、ユーロ圏全体の経済成長ができなくなりつつあります。日本も1990年のバブル崩壊以降、経済成長はできておりません。中国、インド、ブラジルなど人口の多い発展途上国の一部の国は、巨大な市場規模を生かし経済成長をしていますが、先進国は米国の金融資本主義をまねたため、コンピュータの仮想市場による市場原理主義が、莫大なお金を一瞬に不良債権に換えドブに捨ててしまいました。ゆえに、西欧文明成立の基盤を金融資本主義が壊してしまったのです。

 加えて、公害が地球規模に拡大し温暖化を生み出し、記録を次々と塗り替える異常気象を惹起させ、将来の食料不足と水不足等から西欧文明に暗雲が漂っています。現実を考えれば分かりますが、西欧文明はあくまで人工都市の発展を中心にしています。従って、巨大都市が世界中に出現し、自然の豊かな田舎は寂れて行きます。その田舎に原子力発電所を建設し、発電した電気を都会に送り消費しています。その原子力発電所で放射性物質大量飛散事故を発生させ、自然の豊かな田舎をますます寂れさせました。人工都市しか発展できず、自然の豊かな田舎を衰退させる西欧文明は、原理的欠陥を内包しており寿命が短いのです。国連は、持続的経済成長を標榜していますが、都市と田舎が均衡した経済成長でなければ持続的経済成長は実現できません。

 

 これからのリーダーの資質

 戦後の困窮期に朝鮮戦争が勃発し特需により一息ついた日本は、米国をモデルにした高度経済成長へと進みます。1990年のバブル崩壊まで日本は、程度の差こそあれ誰もが豊かになれました。このような順調な環境では、リーダーの出来不出来が国民の生活に影響を及ぼさないのです。そこでのリーダーは、万遍なく才能が発達した東大卒型の目立ちがり屋的人間が多かったのです。東大型才能を拠り所に、多少しゃべりが上手であるとかアイディアの改良ができるといった人間がリーダーになっていました。ところが、1990年のバブル崩壊以降、さらには2011年3月の東北関東大地震と福島第1原子力発電所の大事故以降、4章で述べたように近代的な生き方をしていては早晩どうにもならなくなるという、西欧文明の不安がだんだんと大きくなってきました。だからこそ、近代的な生き方でリーダーシップをとり、その線上で指導を続けているためますます近代社会の矛盾が大きく広がるのです。ゆえに、経済成長が続いていた時期のリーダー選びをしていては、日本がますます衰退の一途をたどります。

 新しい時代が到来しつつあります。ここは真の創造力、真のアイディアを持つ人間がリーダーになるべき時代です。リーダーとして、大きな可能性を秘めたアウトザイダーとしての資質が躍動する時代は、始まっています。歴史を遡れば南北朝時代から室町時代は、古い価値体系と秩序が崩壊した、創造性に富んだ乱世でありました。しかも、これらの時代は明治維新とちがって儒教風道徳やうるさい国体論や古代主義の強制もありません。この点は、南北朝時代から室町時代の社会とこれからの社会が似ています。

 リーダー選びである国政選挙における環境とは、有権者のことです。そのリーダーに求められる資質は、環境により異なってきます。有権者は、現在を歴史的にどのように見立てるかで候補者の選別が変わります。秀才はリーダーに適さないことを踏まえて、有権者は投票基準を変えなければなりません。まちがっても、マスコミの選挙情報には惑わされないことです。有権者は、西欧文明と異なる価値観を有すするアウトサイダー資質の候補者を探さねばなりません。そのためには、自分自身の文明の価値観を変えることと、社会を裏切るリーダーを選ばぬよう、しっかりと人物鑑定をしなければなりません。


あとがき

 1990年の年頭からの株式大暴落以降、日本社会は徐々に社会が停滞し始めました。社会停滞を打破するため、小泉元総理の時期は改革が叫ばれ、マスコミに煽られた国民は支持しましたが、その結果、米国の市場原理主義と金融資本主義が我が国に持ち込まれ、中間層が破壊され日本の良さである社会の流動性を失いつつあります。

 この当たりを考えるに、単なる経済敗戦ではなく、明治維新に輸入した西欧文明が1989年ベルリンの壁崩壊後共産圏に拡散し、世界中が西欧文明化したがため、西欧文明の暗黒面が世界中に現れてきたと考えられます。その西欧文明の中心をなす科学技術の象徴が、2011年3月の福島第1原子力発電所の放射性物質大量飛散事故なのです。巷間、この大事故に対して各方面の人が本を出版されていますが、西欧文明の暗黒面の露呈と見抜き、西欧文明からの決別を主張されている人は少数です。この度の東北関東大地震と福島第1原子力発電所の大事故は、我々の近代的な生き方が問われているのであり、従来の近代的生き方を前提条件とした議論をしても西欧文明を延命しているようなものであり、早晩どうにもならなくなるのです。

 西欧文明黎明期の人間は、個人としては死ぬが人類は栄えていくだろうということを、信仰に近いほど確信していました。しかし、現在ではそのような楽観主義にはなれません。ことによったら、あと150年ぐらいで・・・・・と個人の死を予感するようなかたちで、人類の滅亡が予感されるのです。ここは真の創造力、真のアイディアを持つ人間が活躍すべきなのです。歴史を遡れば南北朝時代から室町時代には、真の創造力、真のアイディアを持つ人間が活躍しました。我々は、新しい文明に向けて模索すべきであり、従来のようなマスコミに誘導された選挙投票をしていては、自分で自分の首をしめかねません。その理由は、マスコミのビジネスモデルに、社会を裏切る要因が内在しているからです。

 昔は、天変地異が発生すればリーダーと年号が代わりました。科学技術の発達した昨今では、天変地異とリーダーの因果関係なしと断じるでしょう。しかし、昔のリーダーは、天変地異を単なる偶然とせずに 「天が怒っている」 と考え、いい意味での責任感から辞任しました。幸いにも我が国は、民主主義です。国政選挙においてマスコミの情報に幻惑されることなく、自分の人物選別眼力または会田雄次氏の人物選別眼力で投票することが確かなリーダーを選択できると申し上げたいのです。つまり、マスコミが持ち上げるリーダーは、社会を裏切るのです。

 

                                                                                                                            2011年10月20日


参考文献

第1章 リーダーの出来不出来

 

第2章 リーダーの資質は環境と共に変化

  ・ 会田 雄次 著    日本人材論ー指導者の条件ー     講談社 

  ・ 渋田 駿 著    戦史に学べ    図書出版社 

 

第3章 日米のエリート教育

  ・ 佐々木 紀彦 著    米国製エリートは本当にすごいのか?    東洋経済新報社 

  ・ 会田 雄次 著    日本人材論ー指導者の条件ー     講談社 

 

第4章 原発事故後の世界

  ・ 安田 喜憲 編   文明の原理を問う   麗澤大学出版会  

 

第5章 リーダー選択論

  ・ 会田 雄次 著    日本人材論ー指導者の条件ー     講談社 

 

第6章 日本文化創造の時代

  ・ 会田 雄次 著    日本人材論ー指導者の条件ー     講談社 

  ・ 井沢元彦著   逆説の日本史 中世王権編  小学館文庫

  ・ 井沢元彦著   逆説の日本史 中世混沌編  小学館文庫

 

第7章 将来を見据えたリーダー選抜

 


この本の内容は以上です。


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