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嫌わないで

水無月は人に嫌われる事を極度に恐れる。
他の猫の相手をしていると背中を向けて傍に居る。
肩に乗るときも、軽く前足を置いて気付くまで待っている。
「乗るの?」
その一言が欲しくて水無月は待っている。
決して爪を立てずに体重に反比例して軽いジャンプで乗り切る。
声をかけると期待と不安の入り混じった顔を向ける。
猫の表情は解りにくいというけれど
水無月は解り易い方だと思う……むろん犬ほどではないけれども。

不動の三番目

水無月は愛嬌のある仕草と人懐こさで
実は神経質で、臆病者なのだと知る人は少ない。
猫に派閥や序列はないという人も居るけれども
完全室内飼育で20匹近く存在したら序列くらいは生まれる。
数が少なかった頃は古参の猫と雄同志で
じゃれあう事が多かったのに
序列など感じさせないほど水無月は2番目に居たのに
非常識な雄猫の行動が嫌いで
その白い大きな猫が嫌いで…………
水無月は3番目になった。
滅多にじゃれあうこともなくなって
彼の背中を見る日が増えていった。


11年目

水無月は元気な状態でやってきた。
だから年に一度のワクチン注射も受けさせてきた。
けれど最近は目が腫れ易くて
耳も薬に頼る事が多くなった。
じっと見つめ続ける視線の先には
水無月を過剰に恐れる三毛猫、飛鳥がいる。

団地のゴミ捨て場で保護されたという過去を持つ水無月
奈良県明日香村の山の中で生まれた飛鳥
二匹は人が大好きな猫同志なのに
甘える事が大好きな猫同志なのに
飛鳥と水無月は、初対面のときから犬猿の仲だ。

(* 飛鳥とは過去に出した「二十分の一の猫」で撮影している猫である)

ニオイ

水無月は意外にも神経質なのだ。
例えば、知らない人のニオイは犬より嗅いでいる時間が長い。
来客が猫嫌いでなければ水無月は同席する。
そうして相手が年配の男性であろうが
妙齢の女子であろうが
じっと見つめて、それに応えるような笑顔を向けられると
うなじのニオイまで嗅いで回る……
何か納得して、彼なりに解ろうとしているのだろう。
女の子の悲鳴に身を引く悲しそうな瞳に気付かなければ
彼は無神経で大胆な猫に他ならない。

カメラは嫌い

人懐こくて、傍に居る事が大好きだから撮影は出来るけれど
水無月ほどカメラというものを嫌う猫は少ない。
あまり動く子ではないから撮影し易いのだけれど……
何枚も撮り続けていると
こうして横を向いて、目を閉じてしまう。
彼は世界を閉じてしまう。
水無月は人が大好きで、嫌われる事をしないだけで
本当に猫らしい、自分勝手すぎるところを隠しているだけなのだ。


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