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鳥取時代に好きだった女の子との事を、僕は初恋と呼んでいる。

鳥取に昔住んでいた。幼稚園から小学校一年生までの事だ。

そんな幼い頃の話なので、鳥取の思い出はそんなにないのが正直なところだ。

ただ、そこに好きな女の子がいた。小学校一年生の時の話だ。苗字も名前も平仮名の、今考えるとちょっと珍しい子だ。

ショートカットで凛としていた子だった。

当時、僕はクラスでも非常に優秀なお子様だった(記憶がある)。そしてまた、彼女も優秀なお子様だった。僕等はエリート同士、何か繋がっているのではないかと、幼心に思ったものだ(生意気なガキですね)。

あるとき、僕等は一緒に下校した。どうというつもりもなかったのだろうけど、僕等は手をつないで帰っていた。好きだったのだが、あれは何を意味して手をつないでいたのだろう。今となっては謎だ。

まあ、とにかく手をつないで帰った。すると、学年が少し上の女の知り合いの人に会って、からかわれた。「仲いいねー」みたいな。
僕は、照れたのだ。「こいつが手つなぎたいっていうからつないでるんだ」みたいな事を言ったのを覚えている。言った後、しまったと思ったのも覚えている。でも、その後彼女が何を言ったかは覚えていない。確か、だまっていたのじゃないかと思う。そして、一人ですたすたと先に行ってしまった。


ところで、僕の友人も彼女の事が好きだった。ある日、僕とその友人とでお互いの心の内をさらしたのだ。そしてあるとき、下校する僕等の少し前に彼女が一人で帰っているのが見えた。だから僕等は、一人ずつ彼女の元にかけていき、「あいつがお前の事好きだってよ」と互いの名前を言い合って彼女の元から走り去っていった。

しばらく走って友人と合流し、妙な達成感で少し興奮していたのを覚えている。とにもかくにも、僕達は自分の気持ちを伝えたのだ(人づてだけど)。
だけど結局、その後彼女とばったり道端で顔をあわせて気まずかった。彼女は恥ずかしそうに笑いながら僕を見た。

僕が東京に転校になるのが分かったのはその年の夏だった。実に彼女とは半年も一緒にいなかった事になる。学校から帰って妹からその事を聞かされた時、目の前が回ったのを覚えている。暑い、暑い日だった。

東京に引っ越してから、鳥取の学校のクラスメイトから手紙が来た。その中に彼女のものも入っていた。彼女の手紙にははっきりと、「あなたの事が好きでした」と書かれていた。

僕がずっと鳥取にいてもう少し大人になっていたら、僕は彼女と恋人として付き合ったのだろうか。それは分からない。ただ分かっているのは、所謂両思いというのはこれ位で、こっから僕は怒涛のふられ人生に入っていくという事だ。

童貞考察

僕が童貞を捨てたのは20歳。これはまあ、一般的には普通な範囲なのだろう。もっと早い人だってたくさんいるしもっと遅い人だってたくさんいる。とりたてて特別にどうとかいう年齢ではない。

童貞って、今となっちゃもうどうでもいい事なような気がする。でも当の本人が童貞だったときはちょっとばかり気になる事だったはずだ。

大学に入学して男友達とか新しく出来始めると、そいつが童貞かどうかがちょっと気になったりする。そういう矮小な子でした。僕は。ええ。でも、みんなそうだったろう?童貞捨てたやつは気にならんのだろうけど、童貞だったときはそうなんだよ。

童貞ってのはつまるところ男性の最も潜在的なパワーを秘めている季節の事だと思う。何故かって、そこには膨大な妄想力がうずまいているから。妄想、想像こそが人を動かす。そこには果てしない欲求、ロマンがある。だから人は動くのだ。

みんな童貞捨てる前は過剰な幻想を持ってる。そしていざ初めて女の子とベッドインをした際には意外なほどあっさり終わったりする。最初の一回なんてそんなもんで、二回目三回目以降ようやく気持ちよくなっていく。
でも、この最初の一回がものすごく重要だと思うのです。あの瞬間に、意味もわからずとりあえず腰をまぬけにふっているあの瞬間に、「あれ?うまく動けないな」とか焦っているあの瞬間に、僕等は確実に何かを失う。しかしそれに気づかない。

そして長い夜が明けて朝を迎えて、いっちょまえに世界が変わったような気がしている。でも、変わったのはお前であって、それは成長ともいえるかもしれないけども、でも違う。君は得たのではなく、失ったのだ。

一生童貞でいたいなんていわない。
でも、僕が何かしらエネルギーを失ったのは、童貞を失ったあの夏からなんじゃないかと、思ったりもする。

背中側で着替える少女

僕が高校二年生の時だったと、思う。

学校でソフトボール大会というのがあった。戯れるわけだ。玉とバットで。

で、僕は結構な弱小チームに入った。男は確か僕ともう一人位しかいなかったのじゃないかと思う(僕のクラスは男が少なかったのだ)。

で、あまりにも弱いからみんなちょっと頑張って練習してみよーぜという事になり、朝練なんてやってみる事になったのだ。どこにでもある、高校生の青臭い中途半端な一こまだ。

その日、僕が朝早く登校してクラスに入るとどうも一番だったらしく、教室はもぬけの空だった。僕は手早くジャージに着替えて誰か来るのを待っていた。

すると、何故か地味だが意外にかわいいチームメイトの女の子が来た。あまり話した事はないが、実はちょっと気になっていた子だ。

多少どもりながら会話をちょろちょろする。白々しい空気がした。相手も緊張しているようだった。季節は夏の少し前だったから、夏服の制服を着ていて、僕は彼女のほんのりとした胸の膨らみを少し見たのを覚えている。チェックのスカートからはみ出した、日本の足の膝小僧を見ながら会話をしていたのを、覚えている。

するとその子が、とんでもない事を言い出した。

「あたし、ジャージに着替えていい?」

「え、ここで?」

「うん」

「じゃ、じゃあ僕、しばらく出てるよ」

「ううん、いいよ、後ろ向いててくれれば」

「・・・」

と、いうわけで僕はしばらく後ろを向いていて、背中側でその女の子のブラウスのボタンを外す音とか、シャツを脱ぐ音とかを息も絶え絶えで聞いていた。

あの時は律儀に本当に見なかったけど、ちょっと振り返ればその子の着替えている所がすぐそこにあった訳だ。当時はまだ僕は女の子の裸なんか見た事なかったから、凄く、凄く興奮した。

そしてあの「スルスル」という音以外聞こえなかった春先の教室のあの空気だけは、未だに忘れる事が出来ない。

あの子は今どこで何をやっているのだろう。高校卒業後に友達の葬式で泣いている所を見て以来、さっぱり見なくなってしまった。

あるいは僕があの時振り向いていたら、あの子はどんな顔をしたのだろうか。

全ては勿論分からない。

夏に出すと思い出す事

夏に出すと思い出す事って、あると思う。

けだるくて、暑い夏。社会人になってからは夏休みという概念がなくなってしまったので、とりたてて思い出す事はないのだが、学生時代の夏といえば、恋愛だった。

僕が小学校の頃、好きだった女の子と手をつないで下校したのも夏だったし、中学校の頃にデートというものを初めてしたのも夏だった。大学一回生になって女の子と初めて付き合ったのも夏だったし、大学三回生の時には世紀の片思いも経験した。今の奥さんと付き合い始めたのも夏だ。

暑くてけだるくて、全てがあって何もない夏。そんな夏が、いよいよ始まる。

花火大会に行きました。

今日、横浜の花火大会に行きました。いやー、凄い人だった。花火は、ええ、綺麗でしたよ。

思えば、僕は今まで花火大会ってものに行った事がなかったのです。何でだかは分かりません。多分、ただ機会がなかったから。

花火大会には、そりゃあ多くのカップルがおりました。皆、思い思いに浴衣を着たりなんかしています。みんな、楽しそうにしてました。

僕は今日は奥さんがいるからそうではなかったのだけど、今までの僕であれば、こういう場所って一歩引いたところから見てしまうのが常でした。
多分、花火大会に行かなかった理由の一つでもあるのだと思う。

大学の学園祭の時、花火を見たのを覚えています。あれは確か二回生の時だったな。周りはみんな楽しそうで充実してそうで、きっとカップルの一つや二つできたのでしょう。僕は花火を、一人で真下で見ておりました。結構綺麗だったのを覚えています。でも、僕はそこでは当事者ではありませんでした。素直に、楽しむ事が出来なかったのです。みんなと一緒に声を上げる事もしませんでした。何故なら、僕は一人だからです。

社会人二年目の時だったかと思いますが、合コンの後にみんなでドンキホーテで買った花火をした事があります。渋谷の、代々木公園で。本当は駄目なんだろうけどね。みんな結構楽しそうで、思い思いに花火を手にとってキャーキャー騒いでました。

僕はそれを、一歩離れた所からタバコを吸いながら眺めていました。つまらなかったわけではありません。中に入る必要を、感じなかったのです。と、いうより、外で見ていたかったのでしょう。

僕はいつだって、当事者意識を持つ事が出来ないまま人生を生きてきました。人から見たら、ノリが悪い男です。クールぶってると思ってる人もいるでしょう。それは、そうなのかもしれません。しかし、僕には、中に入ろうと思わないのです。

何が言いたいわけではないのですが、そんな僕が無意識のうちに花火がより見える場所まで歩いていって、「おー」とか言いながら見ているのだから、きっと僕も変わったのでしょうね。ええ。もう僕は、過敏な男の子ではないのでしょう。

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