閉じる


<<最初から読む

13 / 21ページ

試し読みできます

はじめに

 ゼロ年代児童文学のキーワードは「ライトノベル化」と「YA化」です。
 といってもこれはゼロ年代に始まったものではありません。90年代に方向付けられた流れがゼロ年代に定着したものと理解するべきでしょう。
 YA化については、森絵都が90年代に決定づけた流れを、彼女に続く講談社児童文学新人賞出身作家が引き継ぎゼロ年代児童文学を盛り上げと捉えると、おおまかな流れが理解できます。

 本稿ではゼロ年代の児童文学のもうひとつの流れのであったライトノベル化について簡単にまとめたいと思います。

 児童文学界においてライトノベル的なものは、ポプラ社系列の作品などだいぶ前から細々と存在していました。しかし、ゼロ年代中盤から現在に至る、ソフトカバーのライトノベル児童文学レーベルが10前後も乱立するようなブームが起こったのは初めてです。

 このブームの直接の起点は、児童書文庫を代表する老舗レーベルであるフォア文庫、青い鳥文庫のライトノベル化が本格的に始まった、90年代後半あたりからであると理解するのが妥当であると思われます。
 
 では、ゼロ年代にライトノベル化が加速した外部的な要因として考えられるものを挙げてみます。

■「ハリ・ポタ」ブームの余波で、棚ぼた式にファンタジーが市民権を得たこと
■マンガ・アニメ・ゲーム・ライトノベルなどのサブカルチャーの成熟

 おそらくこのあたりの影響で、時代の波に乗ったという面はあると考えられます。しかし一番の要因は、子供に受け入れられる娯楽小説のあり方を試行錯誤してきた児童文学作家たちの努力です。それがこの時期にひとつの実りをみせたのだと思います。
 本稿では現在のライトノベルブームの起点となった老舗2レーベルのライトノベル化を振り返るとともに、それ以前のライトノベル児童文学のルーツと思われる作家を数名挙げ、ライトノベル児童文学の系譜を考えるとっかかりを提示したいと思います。


試し読みできます

ソフトカバー児童書の物語構造

 この章で論じるのは、児童書の「ライトノベル化」とりわけソフトカバー児童書におけるトレンド変化の考察です。

 前章のお二方が指摘したとおり、ゼロ年代の中盤ごろからソフトカバー児童書の分野で、マンガ・アニメ系のイラストを起用した「ライトノベル風」の作品が数多く刊行され出したといった動きが「ライトノベル化」言説が起こったきっかけです。
 前二章では、イラスト及びキャラクター設定のアニメ・マンガ系へのシフトを、出版社、作家の動向を追うなかで紹介がされました。そこで、最後に私が指摘したいのは、作品の内容面、特に物語構造のレベルでの読者の嗜好の変化になります。
 
 ひと口に「ライトノベル化」と言っても、単にアニメ・マンガ系へのイラスト・キャラクター設定の変化は、すでに90年代から徐々に起こっていたと前章で述べられました。
 そのなかにあって、現在のソフトカバー児童書の分野でトップの人気を誇り、ライトノベル化した作品の代表とされるのが『妖界ナビ・ルナ』『若おかみは小学生!』『黒魔女さんが通る!!』の三作です。
 上記の作品は、イラストとキャラクター設定がマンガ・アニメ的な「キャラクター小説=ライトノベル」と形容できる作風であることはもちろんのこと、そのほかにもう一つ、それまでの児童文学とは趣の違う「ライトノベル的」と言える特徴があります。
 

試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

この本は有料です。閲覧するには購入する必要があります。
購入するにはしてください。
有料本の購入に関しては、こちらのマニュアルをご確認ください。
販売価格100円(税込)

読者登録

teensbooksさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について