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記憶

今度の世界は何だ。


俺は俺であり俺以外の何者でもない。


はは、弱いな。まだまだだ。次に期待しているよ。


所詮はそう、まやかしだ。


私に干渉するな、私は所詮観察者だからな。


私の邪魔をすると言うのなら、たとえ物語が変わろうとも相手をさせてもらう。


世界はとても広い、私にすら把握できないことのほうが多いんだよ。


まさかここまでとは。予想以上に成長が早いな。


次元を渡る者など沢山いる、渡る理由など様々だ。


私は私の意志で選択したまでだ。


マスターの意志に反して動いているのはお前だ。


現実に目を向けろ。


選択をさせてやる。

俺と共に来るならこの世界での死を帳消しにしてやろう。


お前あいつを知っているのか。

不思議な縁だ。


たまに異世界同士が繋がっているところがある。

理由は様々だが、その世界に異世界をつなぐ何かがあるのは確かだ。


結界・・・。何かあるのか?


はは、イレギュラーだな。楽しめそうだ。


不自然だな、この町。作り物か?


腕試しならやめておきな、お前じゃ私に勝てないよ。


あんた何者だ?見かけねぇ顔だが。


この世界には宇宙に行く手段があるのだな。


世界とは1つじゃない、数多の世界が重なり合い消し合っているのだ。


この世に偶然はない、そう言っていた奴がいたな。


いつもながら興味深・・・な。


じゅ・・せ・・い・・・移動・・・繋・・・・界の・・・・た。



・・・・・・・・・・・・・・・。



解析


「解析できた内容はこれだけか?」

「はい、損傷が激しく解析可能な内容は以上です。」


ディスプレイの光が照らす暗い部屋の中、2人の男が話し合っていた。


「記憶の断片か・・・。あまり当てにはならんな。」

「しかし、我々が記録を残すにはこの方法しかありません。」


・・・わかっている。

心の中で呟く男の見る画面には”記憶の断片”と呼ばれる情報の解析結果が表示されている。


組織を離反した男の記憶。


「生死は確認できていない。と言うことだったな。」

「はい。確認に向かった者の報告によるとその世界の者と思われる人間の死体と一緒に記憶の断片が落ちていたとのことで。」

「罠の可能性もある・・・か。 今使える者は何人いる。」

「今任務に就いていない者は3人ほど。内2人はすぐ動けます。現地に向かわせますか?」

「あぁ、記憶の断片の情報をたどって世界を渡らせろ。」

「すぐ現地に向かわせないのですか?生きていた場合逃げられる可能性がありますが。」

「奴も追われることは承知だろう。囮にのってやろうじゃないか。」


・・・それに気になることもある。


「どうかしましたか?」

「いや、何でもない。2人を向かわせ調査を続行。フォールンの動向にも気をつけろ。後は任せる。」

「了解しました。」


面白いことになる。

部屋を出た男はそう呟きながら暗闇の中に消えていった。




追跡

”浮鄕、ヴァンツ両名は直ちに世界を渡りイグニスへ

 記憶の断片を辿り、離反者を追跡・殲滅せよ”


「追跡と殲滅とかめんどくせぇなぁ」

「任務だ、愚痴を言うな。」

「わぁってるよ。真面目だねぇ 浮鄕は。 てか離反者って誰だよ。名前ぐらい書いとけって思わねぇ?」

「・・・」

「はいはい、『詮索はするな』ですよね~。じゃ、さっさと終わらせちまいますか~」


言葉を言い終える前にヴァンツは手のひらを正面に向けてかざした。

空間の歪みと同時に二人の正面に先が何も見えないほどの真黒な空間が現れた。

二人が空間に入ると同時に黒い空間は消滅した。



進行

「誘いに乗ってきた・・・か。指令がフォルツなら妥当な判断だな」


草原の真ん中。一人の男がたたずんでいた。

名を黒土。組織を離反し追われる身となった男。


「フォルツなら本命にも人を送ってくるか。早く移動したほうが良さそうだ。」


手をかざした先に出現する黒い空間。

黒土はその先を見つめながら呟く。


「この先に何が待っていようと私は貴方の意志を継ぎます。マスター」


空間の中に消えた黒土。

思惑を知ろうとするフォルツ。

組織の命で動く浮鄕とヴァンツ。


それぞれの思惑を胸に異世界を渡る者達の物語が始まる。


八ツ原

「ここは森・・・か、広いな」


渡り路を通った先、黒土が付いた場所は広葉樹の茂る森だった。

あたりに風が吹き抜け木の葉を揺らしている。


「微かに反応がある。近いな」


黒土が見る手の甲には円形をした蒼いガラスのような物がついた籠手がはめられていた。

そのガラスの中で微かな赤い光が光っているのがわかる。


「この森の中か、あるいはその近くと言ったところか。まずは森の周囲から調査するか」


歩き出した黒土の耳に微かな声が聞こえてきた。


「あやつ人か?何もないところから突然現れたぞ、面妖な」

「怖い、近づくな。喰われるやもしれんぞ」

「怖い怖い、近づくな逃げろ」


(話し声か・・・。気配はするが雑多だな。小さすぎて掴みきれない)

(この世界には小人や妖精のたぐいでもいるのか)


「この世界でのキーはこの気配に関係するのかもしれんな」


森の出口へ向かって歩く黒土の周りでは絶えず小さな気配や話し声のようなものが聞こえる。


「やっと出口か、意外に広い森だったな」

「反応が近くなっている。森の中ではなく外で正解だったか」


黒土が森を出て土で出来た道を踏みしめた時――。



「あなた、そこで何をしているの」


声がした方を振り向いた黒土が見たものは学生服に身を包んだ一人の美しい女だった。





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