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夏目友人帳(過去)

八ツ原

「ここは森・・・か、広いな」


渡り路を通った先、黒土が付いた場所は広葉樹の茂る森だった。

あたりに風が吹き抜け木の葉を揺らしている。


「微かに反応がある。近いな」


黒土が見る手の甲には円形をした蒼いガラスのような物がついた籠手がはめられていた。

そのガラスの中で微かな赤い光が光っているのがわかる。


「この森の中か、あるいはその近くと言ったところか。まずは森の周囲から調査するか」


歩き出した黒土の耳に微かな声が聞こえてきた。


「あやつ人か?何もないところから突然現れたぞ、面妖な」

「怖い、近づくな。喰われるやもしれんぞ」

「怖い怖い、近づくな逃げろ」


(話し声か・・・。気配はするが雑多だな。小さすぎて掴みきれない)

(この世界には小人や妖精のたぐいでもいるのか)


「この世界でのキーはこの気配に関係するのかもしれんな」


森の出口へ向かって歩く黒土の周りでは絶えず小さな気配や話し声のようなものが聞こえる。


「やっと出口か、意外に広い森だったな」

「反応が近くなっている。森の中ではなく外で正解だったか」


黒土が森を出て土で出来た道を踏みしめた時――。



「あなた、そこで何をしているの」


声がした方を振り向いた黒土が見たものは学生服に身を包んだ一人の美しい女だった。