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表扉



えほんのアリス

ルイス・キャロル さく
ジョン・テニエル え

おおくぼ ゆう やく



1
最終更新日 : 2011-09-17 18:50:07

巻頭詩



こどもべやの いとしご

      ママの むねは
こどもが かけこむところ
こわい あぶない かなしい
まわりが まっくらなときに
ほらほら ねむっている
あのこから こえの ない
いのりの うたが きこえる
   やすらかな こころの

     こどもの キスは
くちびるから ながれでる
あいの しるし なんどでも
つたわる すてきな おもい
おんなのこの よろこびが
あふれそうなほど いっぱい
ゆめの ぶたいは いつも
    しあわせな おうち


2
最終更新日 : 2011-09-26 11:00:46

まえがき

(お母さまがたへ)

 確かな話では、『ふしぎの国のアリス』は、5歳から15歳までのおおぜいの子どもたちに読まれたとか。同じように、15歳から25歳の子どもたちにも。それだけでなく、25歳から35歳の子どもたちにも。さらに、まさかまさか、まだ元気いっぱいで、すれてもいない、あかぬけてもいない、あきらめきってもいない、生き生きした子どもたち、子どもの頃から湧き上がる喜びの泉をそのままに欲しがる子どもたち、その長年のお話が語られぬままうやうやしく葬られるような、「それなりの」お歳の子どもたちがいらっしゃって、その方たちににまで読まれるとは。
 そこで今回目指すのは(むちゃかな?)、0歳から5歳の子どもたちに読んでもらうことです。読む? いや、違う! むしろ、めくって、きゃっきゃ喜んで、端を折り曲げて、しわくちゃにして、キスしてほしいのです。読み書きのできない、えくぼのある幼い子どもたちに。子ども部屋をゆかいなさわぎ声で、その心の奥の奥を、安らかな幸せでいっぱいにしてほしいんです!
 たとえば、昔知り合った子どもにこんな子がいまして――女の子には、どんなものでもひとつでじゅうぶん、パンふたつ、オレンジふたつ、何かふたつってほしがってると、きっと「がめつい」わるい子になっちゃうぞって、しつこく言いつけられてて――そんな子がある朝、ベッドで体を起こして、2本ある自分の小さなあんよをまじまじと見つめて、こうつぶやいたんです。ふと、ばつわるそうに、「まめちい!」

1890 イースターの時節に

3
最終更新日 : 2011-09-26 10:45:32

1 しろウサギ

 むかしむかし アリスという おんなのこが いてね、 とっても へんてこな ゆめを みたんだ。
 いったい どんな ゆめだったか、 ききたい?
 さあて、 これが はじめの ばめん。 しろウサギが すぐそばを おおあわてで はしっていくところ、 アリスと すれちがいざま あしを とめて ポケットの とけいを とりだしてね。
 そんなの おもしろくないって? よく みてごらんよ、 ウサギが とけいを ポケットに いれて もちあるいてるんだよ? そりゃあ ウサギだって とけいを もつなら ポケットに いれるってもんさ。 くちに いれたって もちはこべないしね ―― それに はしりまわるんなら、 てが たりなくなるし。
 あと おめめが あかくない?(しろウサギって みんな おめめが あかいと おもうんだけど。) みみも あかい、 きている うわぎは すてきな ちゃいろ、 それにほら ポケットから あかい ハンカチが のぞいてる。 ほかにも あおの ネクタイやら きいろの チョッキとか、 ほんとに とっても おしゃれで。
「やんぬるかな!」と ウサギさん。「ちこくで おじゃる!」 いったい どこへ ちこくしそうなのかな?
 うん、 それはね ごぜんさまの ところなんだ。(もうちょっとしたら だいどころにいる そのひとの えが でてくるからね。) ごぜんさまはね いつも いらいらしてる おばさまのこと。 ウサギさんは またせたりしたら ひどく しかられるって おもってね。 かわいそうに これでもかってくらい びくびく。(どんなに ぶるぶるしてたか わかる? ちょっと ほんを ゆすってごらん、 みぎひだりに。 ほら、 ぶるぶるしてる。) だってね ウサギさん ばつとして くびを ちょんぎられるかもしれないんだよ。 ハートの クイーンが いつも やることなんだけど、 はらを たてたら ちょきん(さしえは また あとでね)。 といっても そのひと いつも ちょんぎれって いいつけるだけで、 そうなると おもいこんでるんだけど じつは だあれも そんなこと しない。
 はてさて、 しろウサギが はしりぬけていったんだけど、 アリスは そのさきが きになってね。 だから ついてったんだ。 で、 はしって はしっていると いきなり ウサギあなに おっこちちゃって。
 ずっと ずーっと おちつづけてね。 ぴゅ――うう――うう、 このまま せかいを まっすぐ つきぬけて、 うらがわに でちゃうんじゃないかって アリスは そんな きがしてきて!
 ふかい ふかい いどみたいなのに おみずは ぜんぜん なくって。 こんなところへ ほんとに おちちゃったら どんなひとだって きっと しんじゃう。 でもほら ゆめのなかだから おちたって けがひとつ ない。 だって おちてると おもってるあいだも ほんとは よこになって なんのこともなく ぐっすり ねむってるだけなんだから!
 それでも いつかは あなのそこに たどりつくわけで、 アリスは うずたかく つまれた おちばと えだのうえへ どすん。 けがひとつ なく ぴょんと おきあがると また ウサギのあとを おいかけたんだ。
 こうして アリスの へんてこな ゆめが はじまったってわけ。 こんど しろウサギを みかけたらね、 アリスちゃんみたく へんてこな ゆめを みてみたら いいんじゃないかな。

4
最終更新日 : 2011-09-19 22:31:25

2 アリス おっきくなりすぎ

 というわけで アリスは ウサギあなを おっこちたあと じめんのなかを えんえん はしってたんだけど、 きがついたら いきなり おおきな ひろまに いてね、 まわりに ぐるりと ドアが いっぱい。
 ところが どのドアも かぎが かかってて。 てことは かわいそうに アリスは ひろまから でられない。 だから なんだか かなしくなってきてね。
 それでも しばらくしてから テーブルのそばに いって。 ぜんぶ ガラスで できていて さんぼんあし(さしえでは 2ほんが はっきり、 のこりの 1ぽんが ちらっと みえてるよね、 わかる?)、 で そのテーブルのうえに ちっちゃな かぎが あった! ひろまを ぐるりと まわって、 これで ドアが どれか あかないか ためしてみたんだけど。
 かわいそうな アリス! そのかぎ どのドアも ひらけなくって。 でも さいごに やってきた ちっちゃな ドア、 するともう うれしいのなんの、 かぎが ぴったり あったんだ!
 そのちーっちゃな ドアを あけて、 しゃがみこんで なかを のぞきこんだんだけど、 なにが みえたと おもう? もう とーっても すてきな おにわで! そこに いきたくって いきたくって! なのに ドアが ちっちゃすぎるんだ。 からだを おしこんでも とてもむりで。 きみが ねずみの すあなに はいれないのと おんなじこと!
 かわいそうに アリスちゃんは しっかり とじまりして、 かぎを テーブルに もどしてね。 すると さっきまで なかったものが あるってことに きがついて(もういちど さしえを みてね)、 これ いったい なんだと おもう? こびんだよね、 ラベルが ついていて そこには 「ノンデ」の もじ。
 そんなわけで くちを つけてみる。 すると とっても おいしくて、 あらためて いっきのみ。 そのあと もう へんてこなことに なってさ! おもっても みないことだよ。 ふふ、 じつはね。 アリスが ちいさく ちいさくなっていって、 さいごには ちっちゃな おにんぎょうさんくらいの おおきさに なったんだ!
 そこで ひとりごと。「あら このおおきさなら ちいさな あのドアも うまく とおりぬけられてよ!」ってことで はしりだす。 でもね たどりついた ドアは あかないわけで、 かぎは テーブルのうえ、 しかも これじゃあ とどかない! どうして しっかり とじまりなんか しちゃったんだろうね!
 はてさて、 そこで また みつけたのが ちっちゃな パンケーキ。 こんどは こげあとが 「タベテ」って ことばに なってて。 なので さっそく たべて ぜんぶ のみこんだ。 そのあと どうなったと おもう? うん、 おもいも よらないこと! ふふふ、 じつはね。
 アリスは おっきく おっきーくなっていってね。 せなんか もとよりも たかくって! こどもよりも おっきく! おとなよりも おっきく! ぐんぐん にょきにょきと! えを みてごらん、 こんなに のびちゃってさ!
 いったい どっちがいいと おもう? ネコちゃんくらいの おおきさの ちっちゃな アリスと、 てんじょうに あたまを ぶつけっぱなしの おっきな アリス。


5
最終更新日 : 2011-09-17 18:50:07


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