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花屋の子猫

『やっぱりお兄ちゃんだ』

 話しかけてきたのは、花屋さんで飼われている子猫の男の子でした。子猫はいたずらっ子のような笑顔を浮かべて、走ってきたのです。

『お兄ちゃんのしっぽが見えたんだ!だから急いで走って来たんだ。あたったよ!すごい?』
『すごいすごい』

 猫がそういうと、子猫は得意そうに笑いました。そして、団長の眼にうつるぼくもこんな風なのかな、と猫は思いました。

『ぼくお兄ちゃん大好きなんだ。しっぽ見ただけで、会えるってうれしくなるよ!』

『好きなのは、ぼくがネズミとりが上手いからかい?』

 団長には聞けないことを、猫は子猫の男の子に聞きました。

『ネズミとり?ぼく小さいから、ネズミのことはわかんないよ。たぶん、お母さんに教わるだろうけど。理由なんかないよ。お兄ちゃんと一緒にいたいんだ』

幸せのありか

 それを聞いて、猫は思いました。
 ぼくも、本当は女王さまのとこになんかいきたくないんだ。
 ずっと団長のそばにいたい。一緒にいるだけで、すごく幸せなんだ。大きくて優しい手になでてもらうだけで、うれしいんだ。
 団長もぼくにそばにいてくれるだけでいいんだよ、って言ってくれたのに。
同じ気持ちだったのに。
 どうして、わからなかったんだろう。
 どうして、愛されてるって信じられなかったんだろう。

『ぼくも団長も子猫ちゃんも大好きだよ。ずっと一緒にいたいよ』

 子猫はとてもうれしそうに頷きました。

 猫が戻ると、団長は変わらず笑顔で迎えてくれました。

『おかえり』
『ただいま…ぼく、もうネズミとりやめるんだ』
『やめるのかい?あんなに楽しそうにしてたのに』
『ぼくがネズミつかまえなくなったら……嫌いになる?』

 猫の言葉に団長はびっくりしましたが、ゆっくり首を振りました。
 そして、不安そうに団長を見上げている猫を抱き上げました。

『嫌いになるもんか。ネズミとりが上手い猫がいいなら、もっと腕利きの猫を雇ってるところだ』

『うん』
 それから、猫がネズミをとることはなくなりました。
 捨てられた猫は、ようやく幸せを見つけたのです。

この本の内容は以上です。


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