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◆まえおき。
ある日のお昼時、自分で作ったお弁当を食べていると、女の子にこんなことを言われました。
「大久保さんって、オトメンですよね。」
私が何ですかそれと訊くと、〈乙女系男子〉との答え。さらになぜと訊くと、「すごく怖い顔でものすごい量の仕事するのに、普段は穏やかっていうかむしろ天然だし、意外と女の子みたいにファッションに気をつけてるし、いつも自炊だし、可愛いモノとか甘いモノ好きだし、時々お菓子作ってくるし。」という解説。
近ごろ世間では、見た目や仕事はずいぶん男っぽいのに、趣味嗜好が女の子っぽい男の子を〈オトメン〉と言うらしい――ということがわかって、私はとても納得したのです。
確かに私のストレス解消はバーゲンに行くことだし日々甘いものを食べないと生きてゆけません! 女性の先輩に「あなたとだったら『かわいいもの』談義で何時間でもしゃべれると思う」と言われたほどの男の子です! そうか、私はオトメンだったんですね!
言葉を与えられて、心のもやもやが晴れたような気分でした。
と、そんな感じで2008年7月、「水牛」(http://www.suigyu.com/)というサイトで月刊更新されているWebマガジンで始まった私の連載エッセイ。オトメンと指を差された私が調子に乗ってそれっぽいことをあれやこれや毎回自由に書かせていただいているうちに、はや3年が経ち、原稿がたくさんたまってまいりました。おかげさまで一部の人にご好評いただき、「まとめてみたら?」との声もうかがいましたので、これまでの連載から色々とみつくろってみたものが、この小さな電子本になります。
はじめましての方も、そうでない方も、気を抜いて、いらない時間を投げ捨てる感じで、あまり期待せずに読んでいただけると幸いですっ。
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◇すいいつ。

(※各章扉にはこのような筆者の手による
誰得絵が添えられております。
これはお菓子のことをお腹で考える筆者の図。)
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◆スイーツうめえ
甘いもの = 必須要素
――QED、宇宙の真理、もののことわり。
以上、今回のお話終わり。
……
……というわけにもいきませんね。
かくして今回はスイーツの話なのですが、その前に私にとってなぜ甘いものが大切なのか前もって説明せねばなりません。
甘いものが必要なのです。甘いものがなければ生きてはゆけないのです。これは私にとって重要であるとともに頭脳を酷使する翻訳家にとっては不可欠な要素なのです。ずっと(8~10時間くらい)頭を使って作業をしていると、頭が痛くなります。重くなります。しんどくなります。しかしそれでも仕事やら何やらをしなければならないときがあります。そんなときには甘いものを食べたくなるのです。食べると頭の痛みも取れるのです。少し元気になるのです。昔はその回復剤が餃子でした。食べると頭が楽になるのです。しかし仕事をするようになった今、餃子をそうやすやすとは作れません。換気扇を回してコンロをつけてフライパンに油を引いて冷蔵庫から餃子を出してフライパンに載せて表面に焼き色をつけて水を少量入れて蒸し焼きにして水気を飛ばして皿に盛らなければならないのです。そうすると時間がかかって頭まで切り替わってしまって仕事どころではありません。だから私は翻訳をしながら甘いものを食べますチョコを口に入れますバームクーヘンにかぶりつきますケーキをほおばりますゼリーをすくいますお饅頭をかじりますシュークリームを味わいますクッキーをかみ砕きますパイをもぐもぐしますそうするとなぜか出てこなかった訳語がぱっと出てきてすごいふしぎまあなんてすばらしいんでしょうあははいひひうふふえへへおほほ。そうしているうちに以前より好きだったお菓子がもっと好きになり部屋の中で食すだけには飽きたらず、仕事なんてそっちのけでスケジュールを計画的に調整して仕事を早めに切り上げて外のお菓子屋さんに買いに出かけたり食べに行ったりすることになります。なるんです。正直甘いものでも食べないとやってられませんよ。
というわけで言い訳完了(読み飛ばし推奨)さて本題です。
以上の通り私が甘いものを必要とするのは証明されているので、仕事がせっぱ詰まってて外出たくないよとぐずっててもスイーツ食べられるところに行こうなどと言われたら二つ返事でOKします(安い)。
つまるところ、世の女性がスイーツを三大栄養素の上に置くように、オトメンにとってもスイーツはそのような位置づけになるのです。よって、そのために日々働き、日々行動します。
しかしながら、女性とは違って、オトメンが洋菓子店なりカフェなりのスイーツを置いているお店に行くときには、さまざまな困難がいまだつきまとっているのです。
たとえば、私の例を紹介すると、ひとりで行くときはだいたいテイクアウト、複数で行くときはイートイン。そんな感じです。ですからお店のなかで食べるときは、誰かと一緒に行かなければならないわけですね。
同行する人には男性も女性もいるのですが、たとえ異性とケーキを食べに行くときでもそれはデートではありませんっていうかイートインは神聖なものなのでそんな不純なものではないのですとオトメンは声を大にして言いたい! 世の中の女性でオトメンな彼氏が自分以外の女の子とケーキを食べに行ってそれを浮気だとか何とか言って怒っている人がいたらその人は即刻考えを改めるべきです!
オトメンにとっては「ケーキを食べに行く」ことが大事なのであって「女の子と一緒に行く」ことは別に大きなことではないのですよ! その女性はお友だちのひとりです、もしかすると男性のお友だちよりも(趣味や嗜好の点で近く)気安いお友だちかもしれません。なのに、浮気? あ な た は ス イ ー ツ の 大 切 さ を わ か っ て い な い。なのでそこを規制するとオトメンはその不寛容を嫌がって逃げてしまうので注意してくださいねオトメンを彼氏にしているorしたいと思っている方々。
ってゆうかそもそも一緒に食べに行く人は、すでに彼氏持ちの女の子が多いんですけどね。だからその逆も多い。世の中の男性は、彼女がオトメンと一緒にケーキ食べに行ったからといって怒ってはいけないわけですよ。ケーキ目当てでしかないんですから。そこのところをよく理解すべきであります。
だってなかなか男の友だちで一緒にケーキ食べに行ってくれる人なんていないわけじゃないですかだからオトメンにとってケーキ行脚につきあってくれる女の子の友だちはありがたいわけなのですが、そこにもまだまだ無理解と不寛容による障害が多くて、オトメンとスイーツとの関係はまだまだ良好とはいいがたいところがあるのです。(悲しいな。)
それにイートインにひとりで行けという意見には与しがたいです。だって、イートインはそこでスイーツやら恋の話やらのおしゃべりができて、なおかつお互いに食べてるスイーツを交換とかできるのですよ! ちょっと食べてみる? うんみるみる、みたいなやりとりをするためにあるわけじゃないですか。それなのにひとりで座ってても楽しくないです。
そもそもその女の子が彼氏の方が好きなのは、食べに行った先での話でよおく知ってますから。それくらい惚気を聞いてますから。ね。心配ご無用ですよほんと。あと、オトメンが「モテてる」と誤解していらっしゃる男子の皆様、もう本当に全然そんなことないですよ。確かに女の子の友だちは多いですけどね、でもみんな友だちですよ。友だちが多いってことを「モテる」とは言いませんよね。あくまでもオトメンは、女の子にとって「物わかりのいい男友だち」であることが多いのです。
それはそれで少し悩ましいところもありますが、それとこれとは別の話。
(#3 2008/9)
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◆ふっじっやっ
常日頃唱えている「カントリーマアムは和菓子である」説に賛同してくれる人はいません。みんなあれを洋菓子だと言ってはばからないのです。しかしながらわたしはここでふたつの疑問を提示したいと思います。
1.古き良き時代のアメリカの手作りクッキーという定義がよくわからないこと。 2.このもっさりとした食感とほのかなあんこの後味はどう考えても和菓子のそれだということ。
ソフトクッキーにしてももっと何かこう違うものですよね。作ったり食べたりしたことがある人はわかると思いますが。やっぱりカントリーマアムは「カントリーマアム」という食べ物であって他の何ものでもなく、そうするとこれは日本で作られた和菓子だと考えていいのではないかと。
最近はきなこ味とか宇治金時味とかみそ味とかもはや和風であることを隠しもしておらず、そういった事情からも不二家が作っているから洋菓子なのですという思考停止に陥った派閥に易々と与することはできません。
そもそもショートケーキやミルキーだって和菓子ですよ! どう考えても!(Japanese Strawberry Shortcake and Japanese Hard Milk Candy!)
そんなわけでお手伝いのため今でも顔を出しているボランティアサークルでは、カントリーマアムが消費されるお菓子の第一位をぶっちぎりで占めており、新味が出ると誰ということもなくサークルに常備されているお菓子BOXに供給され、みんなして和やかに食しております。略して和食。
個包装に入れたまま電子レンジにかけてどろどろにしてしまったという猛者もいますが、ジャパニーズソフトクッキーを温めてもいいのなら、おまんじゅうだって同じことをしてもいいわけで、特に黒砂糖系のおまんじゅう(あるいは温泉まんじゅう)をちょっと温めても美味しいですよね。わたしはあれをそんなノリだと思っています。
何が言いたいかというとわたしは不二家を偉大なる洋風和菓子屋だと思っています。あと店舗販売の手作りお菓子と袋売りのお手軽なお菓子のどちらも作ってるというのはとってもえらい。どっちも好きなので。
男なのにこんなにお菓子スイーツと口走るのは、おそらく実家が日々お菓子の流通する文化にあったからで、近所の洋菓子屋さんからたびたび新商品のお裾分けなんかいただいたり、家族が何の前触れもなく普通の日に手作りのお菓子を作り出したり、どこからともなくおみやげが頻繁に届いて家族に配給されたり、なぜか季節の果物が食べきれないくらいに常備されていたり、お買い物についていったときには遊び場っぽいとこでなくお菓子屋に放置される子どもたちだったりと、そんな家庭にいたからだと思わないでもありません。とにかくスイーツと本だけは制限しない家庭でした。
スイーツ好きがこじれて、できればtwitterのタイムラインとかもお菓子や果物のアイコンの人だけで埋めてみたいのですが、そんなアイコンをどうやって探していけばいいのか、あるいはそんなリストがすでに存在しているとしてどうやって見つければいいのか、というところでもやもやしています。
放っておいたらプリンとかケーキとかチョコレートがわらわらと流れてくるようにしたいのに。そうなればわたしもたぶんtwitterが気持ちよくなると思うんです。
だってほら、twitterって基本それぞれがそれぞれのエゴむき出しで、そこかしこにどや顔で名言っぽいこととか偏ったこととか変態的なこととかつまらないジョークとかを脊髄反射みたいに言い切って悦に入ってる人なんかがいて、それがリツイートされて勝手に流れ込んでくるような気持ち悪いところじゃないですか(「(キリッ、だっておwwバンバン」を自動的につけてくれないかな)。インターネットが人間の自我を拡張してさらけ出して垂れ流させるなんていうことは、昔から割と言われていることではありますが、これは極まった、と思ったりするのです。(一応褒めてるつもりで、否定しているわけではありません。)
まあでもわたしはそんなツイートの内容とかはどうでもいいので、お菓子ばっかり流れてくればいいな、スイーツが語るのならたぶん割と何でもいいと思うので、そんな感じにタイムラインを染めたいのです。
お菓子が政治の話をしたりエロい話をしたり鬱々とした話をしたりしてもいいんじゃないかな。twitterの本懐であるところの世間話だけを繰り広げる、ゆるゆるふわふわとしたスイーツだけの世界。
ああ、みんなお菓子になればいいのに。わたしはなりませんけど。
(#29 2010/11)

Alz