閉じる


<<最初から読む

4 / 5ページ

(16)~(20)

(16)『卵焼きとゆで卵な二人』

「お菓子を食べながらTVを観ましょうか?」
「やだ!TVを観ながらお菓子を食べるの」
「でも卵を割らないと卵焼きは作れないよ」
「うそ!ゆで卵は割らなくても作れるもん」
「じゃあ、お菓子を食べてからTVを観ましょうか?」
「やだ!TVを観てからお菓子を食べるの」



(17)『眠れぬ夜』

犬のような声で深夜に男が吠えた。
なんだ?酔っぱらいか?
もう一度吠えた声で例の犬だとわかった。
犬だって悲しい気分の夜はあるよな。
犬とも人間とも分からない叫び声。
「ウォイ!」
「どした?おまえの話を今夜は聞いてやろうじゃないか」
「ウォイ!」
「そうか、おまえも眠れないのか」



(18)『日に干されたい』

好天なので洗濯物と一緒に日に干されたい気分になって、日が一番当る二階の窓辺にフックを二つ掛けた。
一つは僕の靴下たち。
もう一つは僕の背中。
昨夜から背中が疼くから日に当てると痛みが和らぐような気がするんだ。
僕は背中だけを取り外しフックに掛けた、なんて想像をしてみた。



(19)『壺売り』

午後2時。
空気が冷たくなって来ると腰の痛みが増してきた。
「今日はここらで切り上げるとするか……」
売れ残っている壺を背負い家路についていると、男が突然呼び止め人さし指と中指の先を揉みほぐし始めた。
すると腰の痛みが消えて来た。
「ここがツボですよ」
男がニッコリとほほ笑んだ。



(20)『大袈裟に生きるコツ』

鏡を見て石川五右衛門が甦った朝。
釜茹でにでもされた夢を見たんじゃない。
ただ俺の髪の毛が異常に盛り上がっていただけのこと。
何かしらの圧力が髪の毛の一本一本に掛かっていたに違いない。
決して寝ぐせだと思わないところが俺流。
誰か俺を見て石川五右衛門の名を叫んでくれ!


(21)~(25)

(21)『究極』

あるダンサーのアンさんのファイナルアンサーはダンナさんとのパートナー解消だった。
「これで私たちは究極のダンスパートナーになれるわね」
「アン、もう君の寝ごとも聞かなくて済む」
「そしてあなたの歯ぎしりも聞かなくて済む」
「ダンスを踊る君を愛すよ」
「ダンスを踊るあなたを愛すわ」



(22)『昼夜逆転劇』

日が昇り月が昇り僕の興奮は一気に急上昇。
細胞の隅々まで喜々として血液の早急な流れを歓迎する時。
僕の肉体はどの空間に存在しようとも魂は自由自在に駆け巡る。
何処までも転がる球を追いかけ、天には無数の星が昼夜を分かたず輝き続ける。
日も月も沈まぬ世界で僕の逆転劇は続く。



(23)『パンの行進』

「プ・プ・パ~ン!プ・プ・パ~ン!」
ママにブドウパンを買って来てと頼まれた坊やがオリジナルの行進曲に合わせパン屋に向かった。
「パンくださ~い」
「何のパンが欲しいのかな?」
「う~んと、ぜんぶください!」
「全部は無理だよ」
坊やは回れ右をすると行進して帰ってしまったとさ。



(24)『ダイエット』

昨夜徹夜で作った食パンの着ぐるみを試着してみた。
「うん、美味しそうだわ。耳がこんがりと焼き色に仕上がってる」
鏡に自分の姿を映し、ビンの底にこびり付いていたインスタントコーヒーに熱湯を注ぐよ、香を鼻から存分に吸い込んだ。
ジワジワと滲み出て来る汗。
「きっと痩せるわ」



(25)『雨音に狂う』

夜明け前に聞いた雨音。
時計の針が正午を回って同じシーンが甦る。
同じ音じゃないのに同じ音を聞いている感覚。
薄暗さも合わせて同じだと錯覚を起こす。
どんどんと時間軸がぶれて行く。
慌てて握りしめた軸がバキッと音を立てて折れた。
「もう夜なんだか朝なんだか分からないじゃないの!」


この本の内容は以上です。


読者登録

mikatuki98さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について