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夏の酒


*夏の酒*


盃の
ラスタに似たる
星月夜



百薬の
長の機嫌を
取り損ね


突きだしに
手を付けぬまま
三本目



梅酒瓶
風味付かばと
すぐ封を開け



梅酒瓶
梅を肴に
盗み酒



たむけ酒
友の分よと
深酒し



おもろうて
やがて侘しき
祭り酒



おもろうて
やがて悲しき
花火酒



渋滞の
尾灯も
夜景の賑わいと

秋の酒


*秋の酒*


秋明菊
山不如帰
焼秋刀魚



夕焼けに
人は火を焚き
山紅葉



秋風や
酒に涙の
一滴



鰯雲
炙り肴に
夕日見酒



秋澄みし
空より高き
ひやおろし



秋刀魚焼く
炭火に杯も
燗になり



酒米の
実る田圃に
喉が鳴り



秋の雲
集めて白き
霞酒



泥酔いに
雨垂れの音
寺の鐘




秋の酒 弐


酔いが醒め
虫の音を聴き
また呑めり



鳴く虫に
わも呑みたいかと
問いにけり



赤トンボ
追わず眺めつ
一人酒



乳飲み子を
抱きつ片手で
手酌酒



酒米の
実りに聞こゆ
仕込み唄



お銚子の
諸口空し
手酌酒



宵の口
夜更けてもまだ
酔いの口


秋深ば
風に火恋し
生酒かな



枯尾花
里に夕靄
酔い霞



一人酒
肴はスルメ
酌はダボ



猿酒に
もののけも酔う
秋の夕暮れ

冬の酒


*冬の酒*


冬桜
今日も酔いしは
あれのせいよと



般若湯
まずその前に
麦般若



酔う度に
縁を切りたる
腐れ縁



イカ徳
スルメ食べずに
注ぎ足し




女房の
小言肴に
あおり酒



燗徳利
そのなで肩に
かを思う



木枯らしに
襟を立てつつ
あおり酒



酔いが醒め
亡き妻の愚痴
思い出し



冬の酒 弐

出迎える
ものはなくとも
迎え酒



徳利の
揺れるさま見て
人恋し

枯れ紅葉
酔えば枯れ木も
春の賑わい

冬月を
浮かべて干せり
玉子酒



寒雷や
丼酒の
ひびの様かな



冬紅葉
我が身重ねて
なごり酒



空銚子
又ふりて仰ぐ
月夜かな



名残酒
宵待ち月の
切なさよ

燗は煮ず
醸すものよと
のたまいけりに



乾杯は
杯を乾せよと
のたまいけるに



講釈を
たれて空しき
一人酒

猪口に注ぎ
我は徳利に
注ぎ返し

酔客の
頬をなだめし
初時雨



初雪に
酔いを醒まして
酔いに入り

徳利を
眺めて思う
人恋しさよ

雪見酒
淡雪落ちて
雪割りに

乾杯を
待てず自ら
名乗りあげ



酔わぬなら
酔うまで待とう
忘年会



泣き顔を
酒でごまかす
泣き上戸



忘年会
酒に逃げたる
われ一人

酔い醒ます
合間にビールを
流し込み



泣き上戸
笑い上戸に
呑み上戸



叫びたし
世のやるせなさに
酒浸し



かすとりの
味が恋しき
年の暮れ



酔い果てて
酒を肴に
酒瓶をあけ



祝い事
待たず待たれず
一人酒


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