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「いえ、部活見学に来ただけです」

 

 押しが強いからって負ける訳じゃない。押されたら押し返す。

 

「そう。じゃあ、中に入って」

 

 特に傷ついたわけでもなさそうだ。期待していた訳ではないらしい。

 

「はじめまして、文学・芸術部の8人目です。以後お見知りおきを」

 

 茶髪が椅子から立ち上がり、右手を差し出してきた。台詞も仕草も演技がかっている。こっちが保健医の知り合いとやらか。顔の雰囲気が似ている。

 

「はじめまして」

 

 私も右手を出し、握手をした。チャラそうな見た目とは裏腹に、力作業をしているような固い手だった。それがこちらの第一印象である。

 

「お二人共3年生なんですね」

 

 二人とも青いネクタイをしている。茶髪の方は結ばずに首に引っ掛けているだけだが。

 

「まあな、1年生女子」

 

 何故かドヤ顔で返答してくる茶髪。芝居がかってるとかの問題ではなく、なんか変な人。

 

「こいつは先生のお情けで3年になったような奴だがな、一応3年だ」

 

 辛辣な皮肉を混ぜ返す眼鏡。酷いよー冷たいよーと言いながらも、茶髪は大してダメージを受けていないらしい。この二人はいつもこんな会話をしているのだろう。

 

「まあ、とりあえず入んなよ。見学だけでもいいから」

 

 茶髪に招かれて入った教室は、旧校舎とは呼ばれるがそこまで古いものではないらしく、本校舎の教室より少し狭いだけであまり変わらない。窓際に彼らの荷物が置かれ、机が2つ向かい合わせに置かれている。

 

「お茶、つっても理科室からかっぱらってきたビーカーで入れるやつだけど、いる?」

 

 教室の隅には、机が3つ並べられ、ビーカーやアルコールランプが置かれ、その傍らには紅茶のティーバックやらなんやらも置かれている。男二人の部活にしてはまめである。

 

「はーい! 俺いるー!」

 

「じゃあ、私もお願いします」

 

 ひと眠りした後だったので、その前に飲んだコーヒーは既に喉を潤していない。

 

 はいはい、と面倒そうな口ぶりだが、湯をビーカーとアルコールランプで沸かす手つきは慣れている。

 


この本の内容は以上です。


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