目次
誰か嘘だと言ってくれ!
誰か嘘だと言ってくれ!  seiji 01
seiji 02
seiji 03
これは嘘だと言ってほしい!
これは嘘だと言ってほしい!  sakiko 01
sakiko 02
sakiko 03
嘘で固めた現実を君に!
嘘で固めた現実を君に!  akira 01
akira 02
akira 03
嘘から始まる寮生活!
嘘から始まる寮生活!  sakiko 01
sakiko 02
sakiko 03
1%嘘+99%真実=嘘からでた実(まこと)!?
1%嘘+99%真実=嘘からでた実(まこと)!?  seiji 01  
seiji 02
seiji 03
嘘では隠しきれない、その思いに!
嘘では隠しきれない、その思いに!  akira 01
akira 02
akira 03
akira 04
akira 05
akira 06
嘘をつくなら完璧に!
嘘をつくなら完璧に!  seiji 01
seiji 02
seiji 03
seiji 04
嘘にまつわるエトセトラ
嘘にまつわるエトセトラ  sakiko 01
sakiko 02
sakiko 03
sakiko 04
sakiko 05
sakiko 06
sakiko 07
sakiko 08
sakiko 09
sakiko 10
sakiko 11
sakiko 12
sakiko 13
嘘をついた代償は、抜けられない無限ル-プ
嘘をついた代償は、抜けられない無限ル-プ  sakiko 01
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sakiko 03
sakiko 04
sakiko 05
sakiko 06
sakiko 07
sakiko 08
嘘のない世界で、あなたといたい
嘘のない世界で、あなたといたい  sakiko 01
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sakiko 06
sakiko 07
君の嘘を壊して真実を!
君の嘘を壊して真実を!  seiji 01 
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誰か嘘だと言ってくれ!  seiji 01

誰か・・・これは幻だと、気のせいだと、

たちの悪い冗談だと言ってくれ。

目の前に、彼女がいる。

そして俺の部屋とはいえ、ここは男子寮。

全寮制の男子校に、どうして彼女がいるんだ?

俺は、ついさっき入学式を終えて、寮の部屋割を聞いて此処にいる。

二人部屋の相手が、幼馴染で親友の彰と同室と知って、内心ほっとした。

 人見知りをする俺にとって、寮生活は冒険そのものだ。

けれど、それも社会勉強と思って覚悟を決めて入学した。

どうしても、この高校を卒業したかったからだ。

ここは、全国でも有名な進学校。

完全寮制でハ-ドなカリキュラム内容なので、三年間は遊ぶ暇などない。

だが、この学校を卒業しておけば、夢をかなえる足掛かりになる。

だから、24時間四六時中、他人と接して息つく暇がなくてもいいと決心した。

けれど寮の部屋も、彰と同じと知って、一息つける場所を確保できた気がしてひと安心した。

ここで良好なスタ-トを切れそうだと考えながら、重い荷物をかかえて部屋に入ったら、

彰の双子の妹である沙紀子が、ここの制服を着てそこにいた。


seiji 02

これは一体何の冗談だ?

そっくりだからと言って、入れ代わって遊ぶのは卒業したはずだろ?

よく知らない他人が見れば、

小柄で華奢な体格をしている彰との見分けはつけにくい。

男としては、軟弱すぎる体格と気にしていた彰だったが、

それを利用して、この双子は昔から、

よく入れ代わっては周りを困らせていた。

けれど、彰が妹の身長を越えた頃、

さすがにもう入れ代わりは無理だと気付いたのか、やめるようになった。

しかしそれは、同じ屋根の下にいて、

毎日この双子を見比べている身内だからこそ気づく変化だ。

同じ中学へ進んだ彰と、おれはよくつるんでいたが、

女子高に通いだした沙紀子とは疎遠になっていた。

だからたまに会うと、昔は間違える事もあった。

それを知って彰は、いたずら心をおこしたのか、

俺に黙って内緒で入れ代わっていた事が時々あった。

ま、多分そんな事をしているのは、俺にだけだと思うけれど。

傍目にはそうとは見えないが、彰は双子の妹が大好きで、溺愛していた。

だから、沙紀子に対して無茶な事はしないという信頼がある俺だからこその人選だと思う。

沙紀子の性格は抜きにしても、

危険な他の男共を、可愛い妹に近寄らせたりはしない。

伯父さん曰く、沙紀子を嫁にくださいと、

ある日みしらぬ男がやてきたら、

問答無用で相手を殴り飛ばして、

俺よりも大反対するだろうと、笑って言っていた。

だから俺は、ある日を境に、

入れ代わっている事に気が付いていても、

黙って騙されてやっていた。

なぜ、わざと騙されているか、その本心を知られたら、

二度と沙紀子に彰は合わせてくれないだろう。

それは、幼いころのように、『沙紀ちゃん』と呼びたくなくなったころの事。

沙紀子もきっと、俺から離れていくだろう・・・それが一番、困る。

だから、どんなに服装としぐさで、いつものように誤魔化していても、俺にはわかる。

この学校の制服を着て、あきらかに男装をしている沙紀子に気付く。

性別の問題ではなく、俺が、彰と沙紀子を間違える事は、絶対にない。 

しかし、どう言えばいいんだろうか? 

沙紀子のこの状態の真意がわからない。

こちらの想像で迂闊な事を言って、今まで隠してきた事がばれる墓穴はほれない。

言葉を選んでいる俺に、沙紀子が話しかけてきた。


seiji 03

 「誠司・・・が同室で、よかったよ」

何がいいんだ? 

しかも誠司?

『誠ちゃん』じゃなくて俺の名前を呼び捨て?

まるで、彰が呼ぶような口調だ。 

遊びの入れ代りといえど、こんなところで、こんなふざけたマネは、許されないぞ?

しかし、ここで入れ代わりを注意したら、本当は昔から気が付いていた事を知られてしまう。

・・・が、今はそれどころではない。

こんな男だらけのところで、女であることがばれたら、

彼女の身が危うい。 身分査証どころでは済まない。

はやく、ここから連れ出さないと!

彰のヤツ、いったい何を考えてこんなまねを!?

 「誠司・・・これから三年間、よろしく・・・な」

よろしくじゃないだろう? 

 だいたい三年間もここにいるつもり・・・え?

 彼女の今の言葉を反芻しながら、差し出されたその手を見つめる。

 「・・・・・・・・・彰?」

ココにいるのは彰のはずだから、真正面から凝視しながら、そう呼んでみた。

小首をかしげながら、こちらを見やる彼女を相手に、とんちんかんな返事をした。

 「三年間てことは、俺と同じように、万年上位成績をキ-プするってことだぞ?」

部屋割は今のところ、成績順に割り振られている。 

だから、同じ部屋という事は、同じレベルの成績が必須だ。

それに、ここに彼女がいるってことは、沙紀子の代わりは彰が・・・?

いくら何でも、女子高に男子が入り込むなんてマネは、ありえないとは思うが・・・。

それに、入れ代って遊ぶのは、今日だけだろう? 

気軽に行き来できる距離じゃないと思うぞ?

「沙紀ちゃんがいるお前の自宅からは、かなり遠いぞ?この学校」

ため息をひとつついて、やわらかな声で、彼女は答える。

「沙紀は進路を変更して、今は、翡翠叔母さんの家から通うことになったんだ」

今なんか驚愕の事実を聞いた様な気がするが、頭が冷静に働かない。

「それに、沙紀に聞かなくても、俺はそれなりに勉強できますから」

ああ、そうだった。 俺と違って、彰は要領よく何でもこなす頭脳の持ち主。

いや、そうではなくて・・・。 

目の前にいる沙紀子では、彰ほどの成績を維持できないだろう?

いや、この状況では、今は彰を相手にしているつもりで、話を進めないといけない・・・よな?

「それでも、俺には勝てないだろ? 次席どの」

やわらかい声で、可愛い笑い声を立てながら、彼女は決意を告げる。

「言ったな! 絶対に追い越してやるから、覚悟してて・・・な!」

いつものように、彼女の笑顔を見ると鈍る思考の片隅で、 何度も先ほどの会話を反芻する。

確か、沙紀子は翡翠叔母さんの所? 

彰たちの自宅よりも遠い、飛行機を使っても半日以上はかかる、叔母さんのところ?

しかも、三年間、ここでよろしく?

上位成績保持者で、三年も同じ部屋でいよう?

いきなり頭の中で、否定し続けていた可能性を自覚した。

ちょっと待て!!

ちょっとした遊びじゃないのか?

本気で、入れ代わってるのか?!

そんな、マンガみたいな展開、ないだろう・・・?

誰か嘘だと言ってくれ・・・。

こんなこと絶対に・・・!

ありえないだろ、そんなこと!!


これは嘘だと言ってほしい!  sakiko 01

目が覚めたら、部屋が明るかった。

記憶では、部屋は暗かったはず。

たしか、いつものドラマを見ようと思って、テレビをつけた所までは憶えている。

けれど、今は外の光が窓から部屋に差し込むだけだ。

反対側に首を向けてベランダの窓を見ると、少しまだ薄暗い。

いつの間にか眠ってしまったらしいが、そんなにも寝過したわけではないらしい。

昨日は翡翠叔母さんとケ-キを焼いたが、少しはしゃぎ過ぎたらしい。

疲れていつの間にか眠ってしまったようだ。

続きを楽しみにしていたドラマだったが、今日ここへくる彰兄を、

出迎えられなくなる程の寝坊はしなかったから、まぁ、よしとしましょうか。

あと数日で新学期が始まる。

エスカレ-タ-式の同じ学校の高等学校に入学するから、

クラスメイトになれるかどうかは、わからないが、 中学時代に出来た友達とは、同じ学校に通うことになる。

だからきっと、同じように楽しみにしていた晴ちゃんなら、ドラマの録画をしているはず。

それを借りれるはずだから、お楽しみはその時までとっておこう。

それよりも、はやく起きて準備しなくちゃ。

午前中にはここへ着くと彰兄は言っていた。

だから、彰兄が大好きな紅茶のシオンケ-キを、翡翠叔母さんに手伝ってもらって焼いた。

でも、コ-ヒ-の用意はしていない。 

豆からひかないと美味しくないと、まるで通ぶって言う。

でもここへ来たら、翡翠叔母さんが淹れてくれるお茶が味わえる。

私も、ここへきたら、いつも開口一番に特製のロイヤルミルクティ-をオ-ダ-する。

だから彰兄が、豆からひいてほしいというのも、仕方のないことだけど・・・。

紅茶と一緒で、本格的なお茶は、準備に手間暇がかかる。

だから早起きして、準備・準備!  用意万端で!!

でも、残念なんだよね。 今回くるのは彰兄だけなんだよね。

誠司さんは来ないんだよね~。 

せっかく体調がいいのに、つまらないな・・・。  


sakiko 02

そういえば、初めて倒れたのは、入学したばかりの中学校で、体育の授業中だった。

梅雨時にしては暑い日だったから、

頑丈な私でも日射病で倒れる事もあるんだと、軽く考えていた。

医者の勧めるまま、念の為にと受けた検査で、

結構深刻な病気にかかってしまっている事が判明。

これを完治するには、適合するドナ-が必要なうえに、

本人の治療に対する覚悟も必要だった。

だから両親は、ハッキリと病状を私に教えてくれた。

彰兄を含めて、家族みんなで主治医の話を聞いた。

病気なんかに負けたくなかった私は、絶対に治してみせると家族に宣告した。

そして、その年の夏休みは治療に専念した。

おかげで私のバカンスの計画は見事に潰れた。

けれど大好きな誠司さんは、その夏休み中、学園推薦の留学に行っていた。

だから、どっちにしても誠司さんと過ごすことはできないから、まぁよしとしようと、

ちょくちょく見舞いに来てくれた友達たちと、笑い話にしていた。

ドナ-のことで、両親はできるところから、必死の努力をしてくれた。

事情を知った、お隣に住む誠司さんの叔母さんや伯父さんも、

お願いする事を躊躇していた両親に、喜んで協力すると言って検査を受けてくれた。

けれど、留学が決まって忙しい誠司さんに、余計な心配や迷惑をかけたくなくて、

 病気のことは黙っていてほしいとお願いした。

 検査の結果、ご両親で適合しなかったから、

確率的にも低いだろう誠司さんに、 検査を受けてほしいとも言いづらかった。

けれど、ドナ-は見つからなかった。

似た人が誰もいないなんて、まるで異星人になった気分でそれを聞いていた。

けれど、適合したドナ-からの移植を受けなくては、この病気は完治できない。

移植といっても、ドナ-から体の一部を頂くわけだが、

それがなくてもドナ-は生きていけるので、 適合者がこの先に現れる確率は高いですから、

あきらめずに治療を続けましょうと、医者に言われた。

移植が受けられなくても、初期段階の病状だから、進行させなければ普通の生活が出来る。

このまま頑張れば、二学期からの登校も可能だと医者に言われて、

そりゃあもう、がむしゃらに涙ぐましい努力を続けた。

 その私の熱意と気迫に気圧されたのか、神様は奇跡といえるほどの回復を私にくれた。

たった二ヶ月ほどで、かなり痩せてしまったが、私は秋には復学した。

けれど、たえず自分が病人だという事を、忘れる事は出来なかった。

そして、病気になって、この先の自分の人生を考え始めた。

悲観的になりそうな時、決まっていつも誠司さんとの楽しい夢を思い描く。

自分勝手な、利己的な妄想の夢を。

そしていつの間にか、心の中で、『誠ちゃん』と呼ばなくなっていた。

その頃からだったと思う。

病気に負けそうな時、きまって彰兄は、昔のように入れ代りをしようと言い出した。

退屈だから、彰兄の遊びに付き合えと、半ば強引に、誠司さん相手に入れ代りをした。

その遊びの相手は、いつも誠司さんだった。

誠司さん、だけだった。

きっと彰兄は、気づいていたのだと思う。

だから、もしもの時の事を考え出す私に、この上ない特効薬をくれたのだ。

中学校に入ってから、夢をかなえるために忙しい毎日を送る誠司さんとは、疎遠になっていた。

彰兄に用事があって、たまに訪ねてくる誠司さんと会えるのは、この上なく幸せな時間だった。

そうして、学校では友達に支えられて、病状も悪化せずに、私は中学を卒業した。

そしてなんとか受験戦争をのりきり、 この春からは、中学と同じ女子学園の高等科に通うことになっている。



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