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05/13/16 ガラパゴスなおもてなし

日本人が自慢する「おもてなし」は、実は海外からの観光客にはさほど受け入れられていない。

 

今はもう運行を終えたが、かつて大阪と北海道を結ぶブルートレイン「トワイライトエクスプレス」があった。この列車は従業員がそろって出発をお見送りするというセレモニーがあり、従業員らもそれを誇りにしている風であったのだがが、それを見ていたアメリカ人が「この人たちは、なんでこんな非生産的なことをしているんだろう。そんなヒマがあったら、働けばいいのに」と呟いたという。

 

もちろん、このアメリカ人の言い分が正しいとは限らないが、彼(女)の発言は世界には日本式の「おもてなし」よりも、もっと別なサービスを求めるニーズがあることを示唆している。

 

ブルートレインの霊で言えば、見送りの手間を、より質の高い客室サービスや、より美味な食事の調理、あるいは斬新な車内サービスの開発(温泉やカラオケなど)に役立てたほうが、良いように思われる。

 

結局は、「おもてなし」はガラパゴスとよく似ている。

 

顧客ニーズを無視し、ひたすらサプライサイドが自己満足の追及に走った結果が日本式携帯であり、日本式家電であった。その間違いを、また「おもてなし」は繰り返そうとしている。


05/12/16 三菱自動車の闇

現代自動車の燃費水増しが発覚したとき、日本社会は「やっぱり韓国。日本ではありえない」とせせら笑った。

VWの排気ガス不正がバレたときも、日本企業は「日本のメーカーとは違うから」と当然のように否定した。

そして、三菱自動車の燃費水増し。

 

考えてみれば、国際化が大きく進んだ自動車業界では、ある国で起きることは、別の国で起きて不思議ではない。むしろ当然と考えたほうがいいだろう。劣等生がカンニングに手を出すように、追い詰められれば犯罪に手を染めてしまう。それは民族や国籍を問わない。

 

近頃日本では、「日本正義論」「日本文化優位論」といった類の、自慰的な主張が目立つ。他国人は犯罪者か犯罪者予備軍であり、平和を愛する日本人の安寧を脅かす存在であるという論調。日本食や日本のポップカルチャーは、世界から羨ましがられる優れた文化という思い込み。

 

その延長線上に、日本企業無謬論が漂っている。

 

日本人や日本文化は絶対的な存在ではなく、世界のありふれた現象の中の一つであり、世界の人々と同じく過ちや不完全性を孕むもの、という認識が必要だろう。(またこう言うと、「日本文化は不完全だからこそ完全なのだ」という屁理屈君が出てくるんだろうけど)


05/07/16 徴兵制の足音

田母神氏が起訴された。

中国を敵視する氏が今頃になって逮捕されたのは、色々憶測あるところだが、自民党が進め始めた「対中親和路線」の邪魔になった、というのが妥当なところだろう。

 

氏は徴兵制の採用については否定的であり、アベ政権も同様の主張をしているが、言葉通りに受け取るのは尚早だろう。保守派の最終目的である「富国強兵」「明治憲法」には、もれなく徴兵制がついてくるからである(明治憲法20条には徴兵義務が謳われている)。

 

それに対し、徴兵など不要、という説がある。AI技術などの進歩により、現在戦においては多数の素人兵を動員するより、高機能な兵器を運用した方が効率的。つまり量より質で対抗せよ、というわけだ。

 

一見もっともな意見だが、落とし穴がある。それは「圧倒的に多数な相手に対しては、質だけでは対抗しきれない」、という陥穽である。実際、周辺をアラブ諸国に囲まれているイスラエル、軍事大国ロシアと対峙しているウクライナなどは徴兵制を採用している。優秀な武器を多数そろえているイスラエルであっても、武器だけで抗しきれるとは思っていないのである。

 

翻って日本においては、保守派が「仮想敵」とする人民解放軍の兵力は200万を超え、日本のほぼ10倍に達する。これにまともに対抗しようとするなら、むしろ徴兵制は不可避とすら言える。従ってこのまま中国敵視政策をエスカレートさせ続けるなら、最終的には徴兵制が復活する可能性はかなり高いだろう。現在、しきりに中国脅威論を煽っている若者は、その行為やがて自分に返ってくる可能性のあることを、危惧したほうがいいだろう。

 

さらに言えば、人口が激減する日本では、徴兵制を敷いたところで、中国には軍事的に対抗しきれない。軍事対抗路線は、日本には無理筋な選択肢なのである。


05/03/16 改憲賛成、明治憲法反対

今年も憲法記念日が巡ってきた。

世論調査(毎日新聞)で9条改憲派が少数派になってきたのを気にしてか、今年の自民党の改憲論議には焦りが見える。

何が何でも夏の参院選には2/3を獲得して、改憲発議に持っていきたい思惑が見え隠れする。

 

実は、先の世論調査では改憲派そのものは少なくはない。ただ9条改憲には反対の人が多いのである。その背後には、自民党が強引に進めてきた安保改革、いわゆる「戦争法案」が影を落としているようだ。その強引に国民に負担を押し付ける姿勢は、徴兵制の前振れと受け取った若者も多かったようで、実際、昨年の反戦争法案デモには多くの若者が加わった。

 

先日、改憲派の桜井よしこと護憲派の大江健三郎が討論していたが、少しもかみ合わない点が面白かった。大江は知識人特有の高尚な理想論を振りかざし、桜井ウヨ特有の詭弁を弄しており、理性と現実主義と理想が高いレベルでバランスをとれることはなかった。

 

では自分はといえば、自分は改憲そのものには反対ではない。気に入らなければ、憲法を変える自由を国民は有するからだ。

 

ただし、自民党改憲案には反対だ。それは彼らが持っていこうとしているのは、「明治憲法」だからである。明治憲法が、あの時代に果たした役割を否定するつもりはないが、さすがに19世紀の遺物を21世紀に持ち出すのはアナクロニズムの極みでしかない。

 

具体的には、明治憲法には立憲主義、民主主義、人権思想が欠落しているか、かなり制限されている。その結果、日本では天皇(実際には軍部)に権限が集中し、あの無謀な戦争に至ったわけだが、その反省が十分になされなかったことが、このアナクロニズムを生んでいる。


04/28/16 舛添サン、間違っちゃいないけど

舛添都知事が批判に晒されている。

曰く、公用車を使って別荘に通いつめた。

曰く、海外出張でスィートルームに泊まった。

曰く、海外出張でファーストクラス、随行員はビジネスクラスを使った。

 

これに対して、知事側は

別荘は仕事で行っているのであり、公務に当たるので公用車の使用は差し支えない。公用車はセキュリティや作業効率の面で私用車よりも優れている。

スィートルームでないと会ってくれない人がいる。

随行員は知事の近くに居るべきなので、ビジネスクラスのほうが良い。

 

などの返答を行っている。必ずしも間違っているわけではない。欧米ではホテルのクラスによってその人の身分を量る傾向があるので、要人と会うには高級なホテルの高級な部屋で、という面があるだろう。

 

ただし、必ずしも知事が正しいわけではない。ロンドン市長はスィートルームなど使ってないそうだし、そもそもなぜ一介の地方自治体の首長が外交に勤しむ必要があるのか。航空機では知事自身がファーストクラスを使う必要もないし、随行員を何十人も連れていく必要も薄い。また「別荘で仕事をする」が公務として認められるなら、「リフレッシュして作業効率を高めるために愛人宅に行く」ことまでも公務になりかねない。

 

つまり、知事の言い分は一方的なものでしかない。それをあたかも絶対的真理かのように言い張るのは、どうかと思われる。

 

さらに問題なのは、知事が支配者サイドの上から目線しか持たず、納税者サイドの目線を持たない点にある。なるほど、作業効率のためには別荘に公用車で赴く方が良い。リフレッシュするためには、ファーストクラスに乗った方がいいかもしれない。相手より有利な立場に立って交渉するには、スィートルームもやむを得ないかもしれない。

 

だが、その費用を負担している庶民の立場に立つなら、とてもそのようなことは言えないであろう。庶民感覚を持たない為政者は危ういと言わざるをえない。



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