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鉄道2

お尻に変な感触。ヤダ、これが噂の埼京線の痴漢ね。私は勇気を出してお尻を這い回るそれを捕まえた。「やめるにゃー」何これ人じゃないの?「ボクは埼京線妖怪だにゃ」妖怪? よく見るとちょっと可愛いかも。吃驚したけど、ちょっと安心して私は電車を降りた。「駅員さん痴漢です」

鉄道3

「さよなら、手紙書くよ」「うん…」涙を溜めた君の前で無情に電車のドアが締まる。動き出す電車に並走する君。ホームの端で君が宙を飛ぶ! ドアの隙間に爪を食い込ませ、硝子に頬を押し付けてしがみつく! 風圧に歪む顔! 涙の粒が飛び散り…電車がホームに滑り込む…笑顔の君…僕は…

鉄道4

地面に縫いとめられた赤錆た鉄の棒が、地平の果てまで続いていた。何処かに続くそれを辿る。数えきれない廃墟の街を超え、崩れかけたトンネルをくぐって、枕木の数だけ歩みを重ねて、どこまでもどこまでも歩き続ける。必ず、何処かにあるはずだ。かつて、この上を走っていたものが。

傑作

山奥の作家のインクを奥さんが溢しちまった。冬の間は買いに行けない。怒った作家は妻の血を抜いて小説を書いた。奥さんは失血死しちまったが作品は完成した。春に編集に渡そうとすると、強い風が吹き乾いた血文字が残らず剥がれ落ちたそうだ。作家は今でも言うよ。あれは傑作だったと。

機械時計

お祖父様の形見の機械時計は、0時に赤いドレスの娘が現れてくるくる劇を踊るのです。弟はそれを観るときだけ昔を思い出すようです。ほら、もうすぐですよ。ポーン、ポーン、ポーン。さあ踊りましょう、一緒に。何故、秒針が動かないのかって? どうでもいいでしょう、そんなこと。

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