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ロゼッタストーン

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鉄道1

初めての山手線。初めての通勤ラッシュ。ギュウギュウに詰め込まれた人に挟まれて足が浮かび、電車の揺れに合わせて右へ左へ。ドアが開くと同時に流れ出る人の波にさらわれて、あれよあれよと運ばれた大都会のど真ん中で、ぼくはいまも漂流し続けている。SOSは誰にも届かない。

鉄道2

お尻に変な感触。ヤダ、これが噂の埼京線の痴漢ね。私は勇気を出してお尻を這い回るそれを捕まえた。「やめるにゃー」何これ人じゃないの?「ボクは埼京線妖怪だにゃ」妖怪? よく見るとちょっと可愛いかも。吃驚したけど、ちょっと安心して私は電車を降りた。「駅員さん痴漢です」

鉄道3

「さよなら、手紙書くよ」「うん…」涙を溜めた君の前で無情に電車のドアが締まる。動き出す電車に並走する君。ホームの端で君が宙を飛ぶ! ドアの隙間に爪を食い込ませ、硝子に頬を押し付けてしがみつく! 風圧に歪む顔! 涙の粒が飛び散り…電車がホームに滑り込む…笑顔の君…僕は…

鉄道4

地面に縫いとめられた赤錆た鉄の棒が、地平の果てまで続いていた。何処かに続くそれを辿る。数えきれない廃墟の街を超え、崩れかけたトンネルをくぐって、枕木の数だけ歩みを重ねて、どこまでもどこまでも歩き続ける。必ず、何処かにあるはずだ。かつて、この上を走っていたものが。

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