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この世でもっとも美しい

死んだように眠る君に、この世で最も美しいものを用意しよう。見渡す限りの花畑の寝台に横たえ、満点の星空の天蓋を被せる。星が流れだし、昼の世界にある遠くの頂に降る雨が、虹のかけ橋を伸ばす。そして、完全な世界に一点の汚点を添えるために、僕は君の隣で眠りにつく。永遠に。

悪夢

ベッドに身を投げた瞬間、柔らかなマットレスが身体を包み込んで沈み込んだ。底なしベッドだ! と思った時には、暗い穴を落ちている。寝間着の裾が風受けて丸く膨らみ、悪夢の底に軟着陸。あれほど気をつけていたのに、と歯噛みしながら、朝までにクリアすべき罠の数を数えている。

空と大地の間を這う群青色の蛇を、ある男が地の果てに赴いて殺したという。境界を縛りあげていた蛇が死に、境を失った世界が果てしなく引き伸ばされていく。雲が流れ落ち、続いて青が抜けていくと、ただただ黒い虚空だけが残った。次の朝の訪れと共に、大地は焼き尽くされるだろう。

尻尾

「タツヤ! 人前で尻尾を両足の間に挟む癖やめなさい。みっともない。手でいじるのもダメよ。ちずる、歩くときは尻尾をあげて軽く左右に振るように、そう、引きずらないで! ジュンイチ、知らない人に尻尾振っちゃいけないって何度言ったらわかるの、もう!」

ラプンツェル1

ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪をさげとくれ。と呼びかけると、塔の窓からそれぞれ五本のおさげが降ってきた。金茶赤黒白の髪――顔は見えない。金髪が一般的だが、トラップかも。とりあえず、キューティクルの傷んでいないのにしよう、途中で切れたら嫌だしと男は思った

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