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朝露に沈む街

朝靄に沈む街の景色を、僕はどこかでみたことがあると思う。例えば、山頂の雲間から覗く空中庭園。例えば、住んだ湖面の水底に沈む朽ちた神殿。そこでは亡霊たちが彷徨い歩き、寒々とした目で僕を見つめる。そこでは視線が欠けているという点で、この場所に似ている。

石畳

幾何学模様の石畳が、歩く端から分離していく。半ば駆け足で結束を弱めた足場を飛び移り、やっと階段に辿り着く。下落していく階段を延々と駆け上がっていく。眼下には黒い淵が広がり、落ちていく石畳がまるで天の川のようにきらきらと瞬いている。

脱皮

会社の女の子が一週間程休んだ後、別人のように綺麗になった。「その顔どうした?」「脱皮したんです」「いや、整形だろ」「本当は、羽化したんですけど。だから今日は辞表を」窓の外で沢山の天使たちが空を登っていく。別の種族だと気づくのに時間がかった。同性愛者は正しかった。

水のヴェール

流れ落ちる透明な水のヴェール。高圧の滝に手を差し入れる。指先から輪切りにされていくわたし。一筋の赤が滝壺に流れ込み、わたしは腕、胴体と滝の向こうに身体を滑り込ませる。青い空洞に透き通る身体でさ迷い出たわたし。細切れにされて下流へ向かうわたしは魚たちの腹を満たす。

この世でもっとも美しい

死んだように眠る君に、この世で最も美しいものを用意しよう。見渡す限りの花畑の寝台に横たえ、満点の星空の天蓋を被せる。星が流れだし、昼の世界にある遠くの頂に降る雨が、虹のかけ橋を伸ばす。そして、完全な世界に一点の汚点を添えるために、僕は君の隣で眠りにつく。永遠に。

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