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人助け

人集りの向こうが見渡せないので、隣の人に聞いた。少年が不良に絡まれて殴られたのだと。助けなければと人を掻き分けて前に出ると、少年たちがよってたかってふくろにされていたので、周りの人間を残らずのしたら、新手が後ろから次々やってきて、慌てて逃げた。人助けは大変だ。

ゆうちゃん

「ゆうちゃん、今日は学校でどんなことがあったの?」「別に」「何もないわけないでしょ」「普通だよ」「特別なことじゃなくてもいいから教えて」「今日は一人でいたよ。理科の実験でペア組むときも一人だった。でもそれは『特別なこと』じゃないからな!」「ゆうちゃん……ううっ」

訛り

「おめえ、どこのもんだぁ? 聞かない訛りだべ」「遠いとこから来たっちゃ!」「おらこの訛り知ってる。ちなみに恋人のことは何て呼ぶけ?」「ダーリンだっちゃv」「ほら間違いねーべ!」「ちげぇ、おめーの想像はちげ! 二次元は実体化しねえ!」「下着はトラ柄だべ!」ビリビリッ「スタンガン…ガク」

生前葬

黒服の群れの前で喪主が台に上る。「皆様、わたくしの葬儀にご参列頂き、有難うございます」「なんだ、今流行の生前葬か」「生前葬ではございません」梁に通した縄がスルスルと降りてくる。「ではさようなら」手際のいい介添人が故人を棺桶に収める。「皆様、ご焼香をお願いします」

幻肢痛

切り落としたはずの頭の幻視痛が収まらない。そもそも幻視痛を感じているはずの頭はもうないのだから、幻視痛自体が幻覚に違いない。切り落としたはずの頭の幻視痛という幻覚に悩まされている自分は頭を持っている道理だ。そう、痛みから逃れる方法は一つ。頭を切り落とすしかない。

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