閉じる


<<最初から読む

82 / 101ページ

出会い

駅のホームで人波に押されて荷物をぶちまける。「きゃっ」「大丈夫ですか?」よろける私を支えてくれる筋肉質な腕。涼しげな目元が私を見下ろし、白い歯を見せてニコッとする。ななんてイケメン! 私が男だったら惚れてたなと思いながら、私は彼が拾ってくれた薄い本を受け取った。

赤い実

悪気はなかったわ。ただお婆さんの庭のルビーの木の実があまりに美味しそうだから、ひとつ取って食べただけなの。なのに毒を塗るなんて酷いわ、ねえお母さん? お婆さんはわたしが悪いというの。お前が若くて美しいから。お前の頬があまりに赤く瑞々しいから。毒を塗ったというの。

この部屋に窓は一つしかない。それも目がやっと見える程度の細長い覗き穴だ。外では家を持たない者たちが、暑さと寒さに曝されながら助け合う様子が見える。向かいには大きな窓越しに涙を流す者がおり、かと思えば小さな窓から手だけを出して石を投げる者もいる。扉は見当たらない。

叔母さん

叔母さんはいつも麦藁帽にTシャツショーパンで帰ってくる。僕は小学生みたいだとバカにしていたけど、或る年真っ白なワンピースでお見合いをした。結果は散々。お膳立てした両親とも喧嘩別れ。綺麗な足を隠したからだと教えるために、今年の夏は貯めたお金で僕が訪ねるつもりだ。

ツイッター崩壊

ツイッターが崩壊して一年、彼は未だネットの海で砕け散ったログの破片を拾い集めている。最早誰のものともしれない呟きを繋ぎあわせ、気の遠くなるような作業の果てに、彼女のTLを再構成できると。再構成しツイートする彼のTLにはいつしかファンが付き、彼は彼女になった。

読者登録

遍織さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について