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ロボットの心

心の代わりにロボットの胸に楽器を組み込んだ。単調なリズムがたどたどしいメロディを刻み始め、徐々に深みを増す旋律に人々は耳を澄ました。決して美しい音楽ではない。それがなんだというのか? だが、プロのヴァイオリン奏者の演奏を聞いて以来、ロボットは奏でるのをやめた。

クラッシュ

人がクラッシュする瞬間は衝撃的だ。脳がショートして、煙が出てぶっ倒れる。昔の人間(本当のという意味の)は壊れたまま動いて災いを起こしたから、派手に壊れる回路をわざわざ付け足したらしい。とはいえ、そんなレトロな死に方は嫌だから、解除コードをダウンロードするけどね。

光のヴェール

金色の光のヴェールに包まれて、気づいたらベッドにいたわ。外からわかるような傷は何もなかった。でも、わかるの。あの瞬間、輪切りにされたわたしが、光になって遠くの星に運ばれたのを。わたしは銀色の船の中を無重力で漂いながら、銀河の中心に引き寄せられるのを感じているの。

どこでもドア

世界中の「どこでもドア」が故障した。目的地以外に飛ばされ、会社に辿り着けない人が続出、電話が殺到してケータイもストップ。仕方がないから僕は、海岸線沿いの駅のホームで、二時間後の列車を待ってる。カモメが空を漂い、白い砂浜に波が打ち寄せる。とても清々しい朝だ。

帰り道

友達と話し込んだり、図書室に寄ったり、気まぐれな彼のために下校時間を調整している。偶然を装って話しかけるわけでも、帰宅道を外れて後をつけるわけでもなく、唯一同じ道のりを歩く100mで彼を追い抜くために。そのときだけは、彼は私を見てくれる。たとえ、後ろ姿だけでも。

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