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言霊1

「ありました」隣の発掘現場に呼びかける。博士がレコーダーの準備をする間、手持ち無沙汰に問いかける。「どうして昔の人は地面に言霊を埋めたんでしょうか」「それがわかれば大発見なんだけどね」しっ、と人差し指を唇にあて、博士がスコップを動かす。\王様の耳はロバの耳/

言霊2

「博士、古代の方法で言霊の作成に成功しました!」「ほう、ここを掘ればいいんだね」\好きだー!/「やはり、好意のような純粋で強い想いでなければ、うまく言霊にならない……きみの論文を証明したわけだ。……で、誰が好きなんだい。なんなら相談にのるけど」「結構です」

駅前に根を生やして動こうとしない傘がおり、聞けば飼い主の帰りを待って、誰が「もう帰らないんだよ」と言っても耳を貸さないんだと。何年も何年も待ち続けてついに石のようになってしまった。今では駅で迎えを待つ人の雨宿として、あるいは待ち合わせ場所として重宝されている。

生け贄

石を食べる男がいた。男は皿一杯の石を頬張りながら、明日竜の生け贄にされるのだと言う。なるほど腹痛を起こさせるつもりか、と問うと男は首を振った。これは実験なのだ。どれくらい食えば死ぬのかの。生け贄は大岩に三人ばかりが縛り付けられ、石ごと丸のみにされた。死ぬ前の男曰く、実験の結果、後十年かかるということだった。

湖の女神

湖の女神が問う。あなたが落としたのはどちらの息子? 次の日居間にはキレイな息子がいた。夜には妻も湖に突き落とした。キレイな家族に囲まれ私は満足した。だが次に目が覚めると、私は水中にいた。見慣れた顔の家族が微笑んでいる。ここの生活も悪くない。少し湿気っぽいけどな。

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