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墓守

「穴を掘るのに飽きた」というと、供え物を拝借しにきた浮浪者が種をくれた。その晩、夢を見た。墓に埋めた種が芽吹き、棺桶を突き破って、腐った肉の養分を吸ってすくすく育つのを。緑に包まれた墓を見て所有者が俺を訴えた。管理を怠ったと。俺はゲラゲラ笑いながら砂漠に逃げた。

ナツ

「兄ちゃん、ナツが来るよ。さよなら言わなきゃ」海神の嫁に行く娘が小さな筏に正座して川を流されていく。着飾ったナツに僕は見とれた。だが兄は目を閉じて震えるばかり。青白い女達が仰向けに泳ぎ、筏を運ぶ。来年はその中に見覚えのある顔が混じる年齢になることに僕は気づいた。

化け物

網の隙間から藻の様に髪を揺らめかせた裸の背中に、波が打ち寄せる。無意識なのかその度に魚の尾が飛沫を跳ねる。「逃がそうよ」「バカな。こいつは人を海に引きずりこんで喰う化け物なんだぞ」「でもどうするの。殺すの」「喰うのさ」「だとしたら変わらないよ。僕らも、化け物さ」 

お菓子の世界

蜂蜜が流れる黄金色の小川に沿って、キャンディの実る細工飴の草原を歩く。半壊したチョコレートの城を目指して、ホイップクリームの街路樹に挟まれたスポンジケーキの階段を上がる。灼熱の太陽をパラソルで遮り、どろどろに溶けていく世界を赤い靴でスキップする、砂糖菓子の人形。

案山子

案山子よ、おまえの仕事はふらふらすることだよ。ふらふらと一本足で懸命バランスを取ること。鴉を追い返すのは、そうしないと困るからで、それは本質じゃない。鴉が腕に止まったら、左右のバランスが崩れる。おまえが地面ごとひっくり返って天と地があべこべになったら困るだろう?

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