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通り雨2

授業中に手紙が回ってきた。『三浦があんたのこと好きなんだって』「ねぇねぇ、どうする?」「どうもしないし、用事あるし帰る」校舎を出た瞬間、地面が濡れてるのに気づいた。「雨降ったんだ」「ホントだ、気付かなかった」三浦だ。彼は水溜りの道を走って行った。振り返らずに。

香水

雨の振り続く窓辺で、君の残していった香水を捨てたよ。懐かしい香りは夏の気配にのまれ、雨音に耳は塞がれた。その日ぼくは君と別れて初めて、セーターを脱いだ。凍えていたはずの身体はいつの間にか汗ばんで、裸の胸は空気と同化し、香水の空き瓶にはただ一粒の水滴だけが残った。

星空

「春はピンク、秋は赤、冬は白」「夏は?」「夏は嫌い。だって梅雨だもの。普通の雨しか降らないもの」彼女は口を尖らせて苦情を言った。「そうかな、もっといいものも降るよ。晴れの日なら」「晴れの日?」首を傾げる彼女の手を引いて外に連れ出す。そこには降るような満点の星空。

カレログ

私の彼氏は背が高くてイケメンで、気づけば女の子に囲まれてる。俺は浮気しないよっていうけど、心配だからカレログを入れた。………昨日から彼がある位置から動かない。「何よこのマンション! 誰の部屋なの⁉」現場に押しかけて彼を詰問する。「君の部屋だよ」え?「結婚しよう」

幻想の引き出しにかかった鍵は、初恋の人の名前だった。恋が終わるとともに、引き出しには埃がたまり、次第に開かれることはなくなっていった。大人になり、初恋の人と偶然再会したとき、心の奥で密やかにカチリと何かが開く音がした。恋が再び開くことはなくとも、想いは蘇るのだ。

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