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霧雨の中のハイビーム。泣きぬれた夜の街燈。天窓から差し込む月光。遠くの丘のサーチライト。空っぽのスポットライト。ここに届かない光はない。こちらに向かって、この胸を貫いていく、必ず。

部屋の床の湿ったところから苔むしていく。やがて芽吹いた緑は夏の間成長し続けた。天井を突き破り雨が降り注いで、ぶよぶよした床が抜けたあとは、一階の娘と一緒に水没したベッドで眠った。秋は落ち葉の上掛けを得た。そして、冬にぼくは崩壊した部屋を出た。だから夏は嫌いだ。

このまま眠り続けて死ぬ

眠くて身体が重い鉛になり、倒れたら地面にめり込んでしまって、そのまま脳みそが溶け出して地下水に染み込み、湧き出して蒸発して上の空でふわふわ漂い、雨になって落ちて地面に叩きつけられ、泥になって横たわり、そしてこのまま眠り続けて死ぬ。

孤独

「こうして毎日ツイッターでやり取りしているけど、きみたちが本当は存在しないことは知ってる。僕はこの惑星に機械たちとひとりきり。同じような人間が何億光年もの間に散らばってるなんておかしいだろ」「いや今まで黙ってたけど、存在してるの俺だけだから」「いや俺が」「私が」

出会い

駅のホームで人波に押されて荷物をぶちまける。「きゃっ」「大丈夫ですか?」よろける私を支えてくれる筋肉質な腕。涼しげな目元が私を見下ろし、白い歯を見せてニコッとする。ななんてイケメン! 私が男だったら惚れてたなと思いながら、私は彼が拾ってくれた薄い本を受け取った。

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