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お菓子の世界

蜂蜜が流れる黄金色の小川に沿って、キャンディの実る細工飴の草原を歩く。半壊したチョコレートの城を目指して、ホイップクリームの街路樹に挟まれたスポンジケーキの階段を上がる。灼熱の太陽をパラソルで遮り、どろどろに溶けていく世界を赤い靴でスキップする、砂糖菓子の人形。

案山子

案山子よ、おまえの仕事はふらふらすることだよ。ふらふらと一本足で懸命バランスを取ること。鴉を追い返すのは、そうしないと困るからで、それは本質じゃない。鴉が腕に止まったら、左右のバランスが崩れる。おまえが地面ごとひっくり返って天と地があべこべになったら困るだろう?

言霊1

「ありました」隣の発掘現場に呼びかける。博士がレコーダーの準備をする間、手持ち無沙汰に問いかける。「どうして昔の人は地面に言霊を埋めたんでしょうか」「それがわかれば大発見なんだけどね」しっ、と人差し指を唇にあて、博士がスコップを動かす。\王様の耳はロバの耳/

言霊2

「博士、古代の方法で言霊の作成に成功しました!」「ほう、ここを掘ればいいんだね」\好きだー!/「やはり、好意のような純粋で強い想いでなければ、うまく言霊にならない……きみの論文を証明したわけだ。……で、誰が好きなんだい。なんなら相談にのるけど」「結構です」

駅前に根を生やして動こうとしない傘がおり、聞けば飼い主の帰りを待って、誰が「もう帰らないんだよ」と言っても耳を貸さないんだと。何年も何年も待ち続けてついに石のようになってしまった。今では駅で迎えを待つ人の雨宿として、あるいは待ち合わせ場所として重宝されている。

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