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永遠の夏休み

現実の時間では一瞬、精神世界でほぼ永遠の時間を過ごすという「永遠の夏休み」。飽きるまでそこで過ごせる代わりに、飽いたらまた現実に戻らなければならない。だが不思議と、現実を生きるうちにまた夏休みに戻りたくなるらしい。夏休みは人生でただ一度きりなのに。

世界一周

生身で世界一周に挑戦した少年がついにゴールするというので、富士山麓には沢山の人とカメラが集まった。今か今かと待つ人々の間を秒速7.9kmの風が駆け抜け、斜面を登り、ゴールの山頂から遥か彼方に飛び出していった。人々はにこにこしながら少年を待ち続けた。

灰色の空の下、車窓から白い物質で覆われた凸凹の建造物が見える。「あれは?」「しばらく使われないから、封をされているのさ。街は放って置くとすぐ風化するから」どんな街だろう。「あそこに人はいるの」「ああ」連れは事もなげに答えた。「私が生きている間に封が解かれるかな」

節電

「地上の光が消えてくよ。こんな暗い夜は久しぶり」「光るためのエネルギーが足りないんだって。節電というらしいよ」「ぼくたちも節電した方がいいかな?」「私はソーラー発電だからいいんだよ」「ぼくは核融合発電でいずれ超新星爆発するけど安全対策すべきかな?」「無理だろ」

ロボットの心

心の代わりにロボットの胸に楽器を組み込んだ。単調なリズムがたどたどしいメロディを刻み始め、徐々に深みを増す旋律に人々は耳を澄ました。決して美しい音楽ではない。それがなんだというのか? だが、プロのヴァイオリン奏者の演奏を聞いて以来、ロボットは奏でるのをやめた。

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