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ツイノベの日のお題ツイノベ

あれから1

「あれから、一体何があったの?」「戦争が起こって爆弾が落ちてきてお父さんとお姉さんと友達がみんな焼け死んで、あなたはショックのあまり記憶喪失に」「えっ」「でも安心して。タイムリープで戦争が起こる前の世界に戻ったから」「なんだ、よかった」「そう、全部思い出せる」

あれから2

「あれから」のことをよく考えている。四六時中、脳が擦りきれるほど考え続けている。繰り返される2月29日の中で、すべては「あれから」の出来事であり続ける。過去も未来も現在も閉じ込められた「あれから」の中で、永遠に来ることのない「これから」のことを考えている。

あれから3

あれからあなたは、私を優しく抱いてトランクに乗せました。山奥まで一緒にドライブし、穴を掘って私を埋葬すると、暗い部屋に閉じ籠って一週間私の事を考え続けました。怖い顔の人たちに連れられて私を迎えに来た後、今度はもっと集中できる場所で私の事を想い続けるといいます。

あれから4

「あれから、いくつもの季節が廻った…春夏秋冬春夏秋冬」「要するに二年な」「春夏秋冬鯰」「鯰って何!? 鯰って季節じゃないよね!?」「春夏秋……」「あ、戻った」「……氷河期」「!?」「さて、何年が経過したでしょうか?」「知るかー!」

たくあん1

スポーツちゃんばらが流行ったとき、家が貧乏で剣の玩具を買って貰えなかった。落ち込む俺に母は手作りの剣を手渡した。柄の部分は段ボールだが、刃はソフトな手触りと黄金の輝きを備えていた。いざ戦場に現れた俺に級友は言った。「漬け物臭ぇ」以来、俺のあだ名はたくあん剣士だ。

たくあん2

横たわる絞殺死体、相互監視のもと隔離される容疑者達。「捨てる暇などなかったはずなのに、凶器がないとは」「こんな時ですが、皆さん朝食にしましょう」「ご飯と味噌汁か。このたくあん美味いなポリポリポリしかしやけに量多いし長いしでも美味いポリポリポリ――しまったぁぁ!」

流れ星2

「きゃー、助けてー!」今日も地球で助けを求める声がする。「よし、今助けに行くぞ!」正義の使者は彼方の星より飛び立ち、地球に向けて降下する。大気圏突入の熱で光り輝くヒーローは今日も人知れず燃え尽き、誰の願いも叶わない。

流れ星3

流れ星は誰の上にも平等に降り注ぐ。確率的には、喫煙や交通事故のよりも死亡率が低いから気にしないという人もいれば、財産をつぎ込んでシェルターを作る人や、政府にレーザー防衛兵器の開発を求める人もいる。ただし、願いで相殺も可能だ。僕のところに落ちないでください。僕の…

流れ星4

塔の最上階で姫が額に石をめり込ませて死に、「空から石が降ってきたんだ!」と証言した農民の倅は粛々と処刑され、新型投石機説に押される形で開戦したのちの『隕石戦争』は、隣国の勝利で幕を閉じた。千年後暴かれた姫の墓に眠る石は鑑定の結果、地球上のものであると証明された。

ロゼッタストーン

「お客様、大切なデータのバックアップはお済みですか? 当社のサービスですと、石版90t、二千年保証で料金たったの10億円! 今ならロゼッタストーンのレプリカもついてきますよ。いかがですか?」

鉄道1

初めての山手線。初めての通勤ラッシュ。ギュウギュウに詰め込まれた人に挟まれて足が浮かび、電車の揺れに合わせて右へ左へ。ドアが開くと同時に流れ出る人の波にさらわれて、あれよあれよと運ばれた大都会のど真ん中で、ぼくはいまも漂流し続けている。SOSは誰にも届かない。

鉄道2

お尻に変な感触。ヤダ、これが噂の埼京線の痴漢ね。私は勇気を出してお尻を這い回るそれを捕まえた。「やめるにゃー」何これ人じゃないの?「ボクは埼京線妖怪だにゃ」妖怪? よく見るとちょっと可愛いかも。吃驚したけど、ちょっと安心して私は電車を降りた。「駅員さん痴漢です」

鉄道3

「さよなら、手紙書くよ」「うん…」涙を溜めた君の前で無情に電車のドアが締まる。動き出す電車に並走する君。ホームの端で君が宙を飛ぶ! ドアの隙間に爪を食い込ませ、硝子に頬を押し付けてしがみつく! 風圧に歪む顔! 涙の粒が飛び散り…電車がホームに滑り込む…笑顔の君…僕は…

鉄道4

地面に縫いとめられた赤錆た鉄の棒が、地平の果てまで続いていた。何処かに続くそれを辿る。数えきれない廃墟の街を超え、崩れかけたトンネルをくぐって、枕木の数だけ歩みを重ねて、どこまでもどこまでも歩き続ける。必ず、何処かにあるはずだ。かつて、この上を走っていたものが。