閉じる


8月23日のおはなし「Hey Brother!!」

 よう兄弟。逃げるこたあないだろう。まあちょっと話くらいいいじゃないか。えっ、兄弟? あんたどこから来たか覚えてるか? 「わからない」って? 何が。「なんでここにいるのかがわからない」って? そうか。そうかそうか。そこから説明してやらなきゃいかんわけだな。いいか兄弟、驚くなよ。あんたはね、車にはねられたんだ。悪いのは100%相手の方だ。あんたは悪くない。青信号になったから横断歩道を渡り始めた。一点の非もない。100%正しい。でも100%悪い奴は車の中でのうのうと生き延びて、100%正しいあんたはこうして、まあ、気の毒なことになっちゃったわけだ。

 待て。待て待て。おれの前から逃げたって生き返れる訳じゃない。それに何て言うか、逃げることはできないんだよ、ここではな。なあ兄弟、悪いことは言わないから、その辺の諦めは早くつけた方がいいぜ。そこんところでぐずぐずすると、結構厄介なんだ。えっ? おれが厄介なだけだろうって? 違う違う。おれなんかどうでもいいんだ。おれ的には時間は無限にあるし、あんたがぐずぐずしようとてきぱきしようと何にも変わらない。問題はあんたなんだよ。ぐずぐずしてるとね、流れが滞っちまうんだな。そうすると次に進んだときに弱まっちまうんだ。

 え? ああそうだ。生まれ変わったときのことだ。弱まっちまうんだよ、いろいろと。え? 病人がどうしたって? 病気を持って生まれるのかって? ああそうか。いやね、人間になるとはかぎらんさ。何にだってなる。これから生まれる命あるものなら何にだってな。え? 違う違うそうじゃない。いいかな兄弟。すぐに次に行けば人間になるとか、ぐずぐずしてるとゾウリムシになるとか、そういう話じゃないんだ。何になるにせよ弱まっちまうってことだ。うん。

 え? 「じゃあこの時間は何だ」って? ああさすがだな。よく気がついた。うん。不思議だろう。どうせ次に行った方がいいなら、さっさと次に送りゃあいいのにな。わざわざおれみたいなのが出てきて相手する必要ないもんな。うんさすがだ兄弟。じゃあ説明するがな、あんた生き返ることもできるんだ。まあまあ落ち着いて。「最初からそれを言え」って? いやいや。そうしたらあんたはすぐそれに飛びついちまうだろう。でもこいつぁあ、あんまり勧められないんだ。あんたぐちゃぐちゃになってるからな。生き返ったらそれはそれで大変なことになる。だから次に進むって選択肢をちゃんと理解して……。

 はああああ。そうかいそうかい。おれがここまで説明しても生き返ろうってのかい。わかったよ。ただしそのためにはひとつだけ、おれのなぞなぞに答えなきゃだめだ。もしこれをはずしたら即行で次に送る。当てたら、その時は兄弟、仕方がない、生き返らせてやるよ。でもちゃんとわかってるよな? あんた、腕も脚も内臓もぐちゃぐちゃだし、生き返ったってこの先大変な余生を送ることになるのは目に見えてる。それだけは覚悟するんだぜ兄弟。

 え? なぞなぞを早く出せって? わかったよ。じゃあいくぜ。あんたがおれの話をちゃんと聞いていたかどうかを確認するなぞなぞだ。いくぜ兄弟。

「おれの口癖はな〜んだ」

(「兄弟」ordered by Dr.T-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

奥付



Hey Brother!!


http://p.booklog.jp/book/32244


著者 : hirotakashina
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/hirotakashina/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/32244

ブクログのパブー本棚へ入れる
http://booklog.jp/puboo/book/32244



公開中のSudden Fiction Project作品一覧

http://p.booklog.jp/users/hirotakashina




電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.



この本の内容は以上です。


読者登録

hirotakashinaさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について