
INDEX ver table 20150127

プロローグ

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【およそ1ヶ月ほど後 地球 日本国 宮内省 近衛軍 会談】
青機大佐 「まったくもって不可解ですな。今回の火星の爆破事件があったからこそ、我らがIUSにかけあって、税金をつかって最新鋭戦艦アラバマ調達の交渉を成功させたというのに!現在、もう2週間も前から火星に待機させているのですよ? そうでなくても火星にいかせるにも『戦船(いくさぶね)には乗らぬ』の一点張りでフランスの長距離病院船まで持ち出して・・・」
執業 「それは、我らも同じ気持ちです。護衛を一人もつけずに、しかも一介の旧式練習艦に搭乗させるなんてありえないことです。殿下の気まぐれにも困ったものです。」
青機大佐 「陛下はなんとおっしゃられたのですか?」
執業 「わたしは、直接聴いたわけではありませんが、『あの子が言うことならまちがいなかろう』とひとこと」
青機大佐 「・・ぁぁ・・・・陛下ぁ・・・・」
寿坂 「青機大佐、しかし今回の病院船 発掘事故でかなり役に立ったらしいではありませんか。不幸中の幸いと申しますか・・・・偶然にしてはできすぎと申しますか・・・・」
青機大佐 「ぁ~DAFドローンが暴走し、かなりの事故でしたからな・・・IUS軍の宇宙戦艦アラバマが鎮圧しなければ大変な大惨事になっていたかもしれません。未だに原因は、IUSとASEANの共同で調査中とのことです。 しかしあれもそもそもいきなり火星に行くと殿下がおっしゃられるから、こちらは大変でしたがな・・・。(おかげで俺はこれからあの大嫌いな財務省の高官どもとこのあと接待なんだ。ちくしょう!)」
榊原少佐 「では、せめて私が参りましょう。わたしは、殿下との直接面識がまだありませんから、宮内の手のものと思われて殿下の気を煩わせることはないでしょう。 そもそも不思議なのは、軍艦嫌いの殿下が、何故あんな廃艦してもおかしくない練習艦などに興味をもたれたのでしょう・・・・?」
榊原少佐は、女性ながら、他の権威主義の軍属とはちょっと違っていた。 軍人というよりも純粋に陛下の生い立ちに興味をもっているようにも見えた
青山大佐 「知らん!しかし、とにかく向かってくれ、こっちは我らが防衛軍が管轄するおんぼろ艦に乗艦する殿下に何かあったら、首がとぶだけでは済まされんぞ。お国の2800年の歴史を終わらせるだけではない、世界中からにらまれる。我が防衛軍を無意味と称して縮小したがっている連中がうるさくなる。 とにかく隠密にやってくれ」
榊原 「・・・・・承知しました。」
あの火星での爆破事件後、さまざまな警察や軍の取調べを受け、ようやく乗艦した弓月艦長と白鳥伍長は、かげろう改の狭い第一ブリッジ内に弓月と伍長の2人は船内作業といういわゆる掃除をおこないながら、会話をしていた。
弓月は、ヘルメットを脱ぎ、仲間に見られてからかわれるのは、なかば諦めていたが、なるべく髪の毛をコンパクトに結い収め、帽子を少し不自然に斜めにかぶってハンディタイプの掃除機を片手に座席を掃除していた。
とにかく未だに後ろ半分は、金と赤が混ざったような色になっていたが、見ようによっては美しい仕上がりに
なっていた。
お蝶 「まったく、あの時私が5分でも遅かったら、二人とも死んでたかもしれないんですよっ!」
柚空 「わかった、わかった、だからあのときのヘアスプレーの件は帳消しにしてあげたでしょ?w」
お蝶 「・・・・・なんか調子よくごまかされた気がするんですけどねっ!」
柚空 「ところで、他の4人はどうしたの?見かけないけど」
お蝶 「最近、よくチョッカイかけられてるんですよ。寄港したアラバマの男どもから・・・・。あれもなんとかしてくださいよ。(ホントは、わたしも行きたかったんだからっ)」
スペースバトルシップ”アラバマ”は、昨年地球北米ブロックIUS宇宙軍で竣工した新大型戦艦で、通常三次元空間内では、最速といわれ、戦力も一艦でかげろう型ミサイル護衛艦の100倍ともいわれている。しかし、乗組員は、100名程度で運用され、ほぼドローンや巨大なシステムで自動化されている。しかもその100名のための福利厚生設備も完璧に整っており、クルー食も絶品で、長距離航行でも負荷を感じさせない設備が十二分に整っているため、アラバマホテルと揶揄されるほどであった。
柚空 「あそこの艦内のレストランが、今日 一般人でも公開してるんだったわね。うわさだと、”アラバマホテル”って 巷では言ってるようだけど(笑)」
お蝶 「ですね~。なんでウチの艦隊司令部は、せこいヤツばっかなんでしょうねぇ~。 このままだと、ウチのクルーもみんな引き抜かれちゃいますよっ あははw」
柚空 「なんか・・・・冗談に聞こえないわ^^;」
艦長と伍長が乗艦している陽炎型は、日本の主力ミサイル艦で小型であるが、機動力と航続距離が、冥王星までいけるように設計されてるため、その優秀な価格性能比から、もっとも量産された代表艦である。その古くなった陽炎型の第一番艦を改造し、格納庫を小型艇を2機収納できるようにして、航続距離を短くして練習艦として改造されたものが、航空ミサイル練習艦の「かげろう改」であった。クルー養成を主任務にしていたため、戦場に借り出されることはなく、クルー教育のための多様な機能が用意されていた。
柚空 「・・・・・いけない。そろそろ定刻だわ。」
お蝶 「?何がです?」
柚空 「新人が編入してくるのよ。訓練でね。」
お蝶 「へ~そうなんですか?ま 練習艦ですからね。またいつものように教育していいんですよね?」
柚空 「そうね。操艦以外は、いろいろとやらせてみて、適正を見ていいわ」
お蝶 「YES!, Ma'am!」
少しリラックスして、敬礼をしながらニヤつく伍長であった。
榊原 真琴は、世主阿皇太子よりも背が高く、横に並ぶと、どちらかといえば、榊原の方が女性上官に見える。なぜならば、皇太子は一等宙曹階級扱いで伍長よりも格下の服装で偽装してたためである。 既成概念で、そのような階級の方が怪しまれたいためでもあった。つまり榊原は少佐でありその補佐官として太秦(皇太子殿下のこと)を起用していることに建前上はなっているが、実態の位は、その逆で殿下を護衛する立場にあるのは榊原少佐ということになる。
榊原は、乗艦した後まず、艦長の許諾を得るためにブリッジに向かった。狭い艦であるから搭乗してすぐに艦長に出会った。しかしなんと艦長の柚空の格好は、艦長のイメージから程遠いといわざるえなかった。
榊原 「艦長! 榊原及び太秦(うずまさ)一等宙曹の乗艦許可をお願いします。」
柚空 「乗艦を許可します。伍長艦内を案内してあげて」
榊原 「それはそうと、エプロン姿で何をやられてるのですか?艦長?」
柚空 「何って お掃除だけど?」
榊原 「艦長自らですか?」
柚空 「当然です。我艦は、全員が掃除にはじまり掃除に終わりますからね」
榊原 「・・・そうでしたか・・・・し・失礼しました。(しかし殿下には、とてもそんなことはさせられないっ!」
そうやって危機感を抱いた途端に、最高のタイミングで伍長の横槍が入った。
お蝶 「さぁ太秦くん!雑巾絞って!」
榊原 「!?」
油断をした隙に、既にお蝶は、殿下と知らずにこき使おうとしていた。
太秦(ハタ)「はっ 伍長殿!」とはりきって敬礼をするハタであったが、榊原はすかさず間に入ってきた。
榊原 「ご、伍長!太秦は私の補佐官です!ま、まずは私が太秦に直接指導をしますので、ここは任せていただきたい。」
お蝶 「ぇ~そうなんですか?でも規則ですしぃ~」
太秦 「大佐殿、艦内規則のようですからここはお任せください!」なんだかウキウキしている様子である。
榊原 「し、しかし・・・(殿下は、好奇心が旺盛すぎる^^;)」
二人の会話を注視する艦長と伍長に変に思われてもまずい。殿下の乗艦は極秘中の極秘なのであるから。
仕方なく折れた榊原を尻目に伍長についてさっさとその場を立ち去ってしまった。
心配そうに太秦を見つめる大佐をみていた弓月は、
柚空 「ふふ、あなたは心配性のようね。」
榊原 「そんなことはないですよ。弓月艦長」
柚空 「柚空でいいわ。姓でよばれるより下の名前で呼ばれた方が気に入ってるの。」
榊原 「わかりました。柚空艦長」
柚空 「ここには、他に5人のブリッジオペレータと4人のエンジニアが同乗しています。おいおい紹介していきますから」
・・・と少しあわてた感じで掃除機にスイッチを入れた艦長であった。なぜならば、まさか、自分の部下が近所の宇宙戦艦にランチを食べに行っているとはいえない苦しい艦長であるのに対し・・・。
榊原 「(思ったより ぜ・・前途多難かもしれない)」冷や汗が絶えない榊原であった。
太秦「それでは伍長殿に従って掃除してまいります! 」「
伍長についてその場から立ち去ろうとしたところ、途中で振り向き様に
「ぁ・・艦長殿・・・その髪の毛・・・お似合いだと思いますよw」
と一言言って立ち去った。
柚空 「・・・髪? 何のことかしら?」
と髪の毛に手をやろうとした瞬間に帽子と髪の毛が吸い込まれていた。
榊原 「ぁ・・・・」
榊原が気づいたときにはすでに遅かった。 艦長の帽子と髪の毛を思いっきり吸い込んでしまったのである。
その後の弓月が髪を切ることを決心したことは言うまでもない。
つづく