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七時四十分の電車が、こんなに混雑しているものとは知らなかった。

だいたい、電車通学なんてのが初めてだから。

 

五月でも蒸し暑くて、時々エアコンの音がして、これから梅雨とか、

夏になったらどうなるんだろうと思うと、結構気が重い。

 

 鴨田で快速に乗り換えて、葦原駅で降りる。改札を北に出たら、

歩いて約十分。

日当たり良好、夕方には西日ががんがん差し込む、私立有鄰館高校。

 

 この学校に入ったことが原因で、ボクはミズエに離縁された。もっとも、

ミズエに“離縁”されるのは大して珍しいことでもなくて・・・

いや、今その話はよそう。

今回も復縁するかどうかは分らないんだから。

 

 この年になって、こんなことを言うのは恥ずかしいのだけど、ボクの

独り言癖と人見知りは直らない。

 まあ、この学校はこの辺りでも指折りの進学校なので、友達づきあい

とかは余り気にする必要が無いといえば無い。

大体において、勉強が優先されるからだ。

 

“帰りにカラオケ行こう”とか誘うやつもいない。だからボクにとっては

気楽な部類に入る。

 

「はやいね、中森くん。」

 

 こら、その進学校にそぐわない超ミニスカートで俺の前に立つなよ、

相沢。

 

「習慣だから、小学校のときからの。」

「今日は、結構早く来たつもりなんだけどなあ。何時に起きてるの?」

「7時。」

「小学校のときから?」

「YES」

 

「夜更かしとかしないの?」

「するよ、寝るのは大抵1時か2時。」

 

“よっこらしょ”っていいながら座るのやめろよな。

 

「ふーん。それも習慣?小学校のときからの。」

「そう。FM聞いてるんだ。聞かないと、“きのうのFM聞いた?

 聞いてない。信じられないバカだね”とかいって、録音したMD

 置いていくやつがいたんでね。

 聞かないとバカ扱いされるんだよ。」

 

「なにそれ、へーんなの。あーん、彼女でしょ。」

「どうしてそうなる。」

 

 全く女って種族は、ふたこと目には恋愛なんだよな。

「あのね、普通分るわよ。他にありえないでしょ。へー彼女いるんだ。

 どおりで、私の脚線美に興味ないわけだ。」

 

へこみそうな話題。

 

「いないよ。この学校に入ったせいで、ふられたの。」

「普通、逆でしょ。えー有鄰館、すごいねーとか。」

「それは、もっとイケメンとかアスリートとか、もてる要素を

 持った男に言えることだろ。」

 

「謙虚ね。」 

「謙虚です。」

 

悪いか。

 

「中学どこだったの?」

「なーんで。」

「いいじゃん。」

「鴨中。」

 

“へぇー中森って鴨中だったの、オレ鴨三中。”

こいつ誰だっけ、印象薄いな。口突っ込むな。

 

「鴨中だったらさー、橘花女学院の“丘野”って知ってる?

 たしか鴨中出身だったと・・。」

ぶっ・・・なんでこいつの口から丘野の名前が。

 

「知ってたら?」

「紹介してくれよー。橘花(キッカ)の丘野姉妹って、この辺りの

 男子校生徒なら知らないものがいないってくらい超有名なのに、

 滅多にあえないって噂でさー。」

 

「無理、無駄、不可能。」

「どうしてー。」

「オレ、いまあいつと絶縁中だから。」

「なんだそりゃ、電気製品か?しけてんの。」

 

 そういや、こいつシマダとか言ったっけ。どうでもいいキャラだ

こいつは。

 

「そうなの、絶縁中ねー。アタシが相談のってあげようかぁ?」

何で、オレの机に肘ついて顎のせてんだよ、相沢。しかもアップで。

 

「お代は5セント?それとも林檎あめ?」

「アタシはルーシーか。じゃあ中森はチャーリー・ブラウンね。

 え、ちょっと待って、何か引っかかった、思い出しそう。」

 

 相沢ぁ、幾ら“林檎あめ”って口で唱えても、机の上に突然出現

したりしないぞ。スタートレックじゃないんだから。

どうでもいいけど、こいつの耳から顎のラインってシャープだな。

 

「丘野、“M・O”・・・中森ってケイだよね“K”。林檎あめ・・・。

 思い出してきた。アタシさー、小学六年ぐらいの時からFMで深夜放送

 聞くようになったんだわー。まあみんなそれぐらいだと思うんだけど。

 その時、FM―JuneでM・Oって女の子がKっていう男の子との

 ことをメールしてて、ちょうど同年代だったから、

 すっっごく感動したんだよねー。

 あれって、中森のこと?」

 

もうあれから三年たつのに、何でそんなこと覚えてるんだよ。

 

「アタシなんで中森のこと気になってたかやっとわかったよ。

 あの時の“K”と“ケイ”が重なってたんだ。」

「相沢。済まんが内緒にしてくれるか。」

 

「やっぱり。そうかー、へぇ。あのKくんとこんな所であえる

 なんてねぇ・・・。

 Kくんてすっごいかっこいい男の子だろうなぁとか、

 想像してたんだけど・・・。

 ま、現実はこんなものなんだ。ハハ、もちろん誰にも言わないよ。

 アタシさあ、たまーにオンエアされるあのメール、

 すっごい楽しみだったんだよ。

 いいなあ、羨ましいなーって。だから、大事にしたいんだあ。

 “一緒に大人になろうね”っていうの。」

 

「サンキュー、おまえいいヤツだな。」

 

“こんなものなんだ、ハハ”、は余計だけど。

 

「男子に、いいヤツって言われてもあんまり嬉しくないけどね。

 で、なんでふられたんだっけ。」

「オレにもわからないけど、相沢の知らない、ちょっとしたエピソードが

 あるんだよ。」


中学は三年間陸上部に入ってて、ひたすら長距離を走り続けた。

 

 たいして目立った記録を上げたわけでもなく。高校に入って

どうするかは随分迷ったんだけど、通学距離が長いし、

やたら授業の多いこの学校のしきたりのせいで、部活は一応断念した。

だから、授業が終わったら、カバンに教科書を詰め直して家に帰る。

 

 中学の時、どうして陸上で長距離だったのかは、今のところ

どうでもいいことだ。大した問題じゃない。多分。

 

 帰り道は今のところいろいろと試行中で、葦原の町は結構

大きくて裏通りもたくさんあるから、まだちょっと決めかねている。

当分は楽しい探検が続くだろう。

 

 そうそう、この町に来たメリットがもう一つあった。

店がいっぱいあって、ちょっと贅沢すればデパ地下でも総菜が

買えるところ。

 

スーパー・マキノ、ごめん。いままで世話になりました。

 

 ちなみに、ミズエが通っている橘花女学院は葦原駅の反対側

にあって、結構偏差値が高くてそのまま大学まで上がれる。

 

 ミチルさんはともかく、ミズエが受かったのにはちょっと驚いた。

まあ、いまは関係無いんだけどね。

 

暑いなあ。五月なのに。

 

 ちょっと喉も渇いてきたし休むか。はは、この店ちょっと面白い。

自動販売機の隣にベンチ置いてる。やっぱ、裏道は最高だわ。

 

喫茶店とまでは行かないけど、座って飲めるっていいサービスだ。

コーヒーは、あーCOLDしかない。

 

ま、しゃー無いか。

 

“無糖”百二十円。Pi!

 

ぷはー、たまらねー。なーんて、独り言ひどくなってるオレ。

これで、ハンカチ出して首筋拭いたらサラリーマンみたい。

 

 

 

“でさー、あの人たち、ちょっとうざくない。”

 

 中坊か。言葉遣いには気をつけようね、きみたち。

 

“そうそう、しつこかったよね。そんなに飢えてるのか、って感じ。”

“ちょっと、芹沢、その言い方やばいよ”

“やばい、やばい。”

“千冬、気をつけた方がいいよ。ねらわれてるかもよー。”

 

ちふゆ?じゃあキミもきっと冬生まれなんだ。

北海道は、まだ涼しいんだろうな。 ・・・いや決してきみたち

の会話に聞き耳立ててる訳じゃ無いよ。

 

“でもさー、かわいいのにカレシいないなんて、ホントなのー。

 向こうにはちゃんといたんじゃないの、上叢。” 

 

ぶっ・・、カミムラ チフユだとー!

 

“ちょっとちょっと、あのひとなんか吹いてたよ。だいじょうぶかなー。”

 

ボクは立ち上がって、女の子の一団を見た。

いやそんなに怯えなくてもいいんですけど。

その中に、明らかに見覚えのある顔がある。

 

ケイタイで何度も見返したあの、ちょと怒った顔。

 

千冬!何でこんなトコに、修学旅行か?

こんな無名な町に。

 

しかも三つ編み!

 

 千冬の大きな目がさらに大きく見開かれて、ボクを見て、

口が小さく“あっ”というと、突然後ろを向いて走り出した。

 

「キミ。ちょっとこれ持ってて。」

「え、はい。あ、やだ、何で。」

「これからダッシュするから。あ、飲んでもいいよ。」

 

「えー!」

「はやっ!」

 

 ボクはカバンを脇に抱えて走り出した。千冬はかなり先を走って

いるけれど、人通りが邪魔してそれほど速くはない。

どうやってつかまえようかな、大声出されても困るし・・・。

 

よし!


ドン!

 

「あ、済みません。急いでいたので、ごめんなさい。」

ハアハア。人にあたっちゃった。

 

「大丈夫?息きれてるよ。」

「はい、なんとか・・・・て、・・・景クン。」

 

何で前にいるの?

 

「千冬。今度ボクの前からいなくなるときは、

 完全にふってからにしてくれ。」

 

はあ、はあ、はあ、景クン。

やっと・・・つ、か、ま、え、た。

 

「歩ける? だいたい、ボクから走って逃げようって

 言うのが無謀なんだけど。」

 

 

 

「千冬、大丈夫かなあ。」

「さっきの人、コーヒーおいてっちゃったよ。」

 

「あの制服、有鄰館だよね。」

「頭いいんだ。」

 

「走るの速かったよねー。」

「ちょっと、いけてたよね。童顔ぽかったけど。一年かなー。」

「だよねー。」

 

「訳ありっぽいけど。」

 

 

「私、あの人知ってる、って言うかぁ、思い出した。」

「えー、セリーなんでー。」

 

「陸上の記録会で見たの。あの人長距離専門で、目茶苦茶速いのよ。

 ぶっちぎりで一着になったんだけど、それがさー、止まらないで

 最終ランナーがゴールするまで付き合ってさあ、

 失格になったんだよねー。」

 

「なにそれ、危ない人なわけ?」

「何で、止まらないんだって聞かれて、走りたいだけ走る主義

 だからって応えたらしいよ。

 記録会出るのイヤだっていったのに、先生に無理矢理だされて、

 じゃあ好きにするしって。」

 

「えー、私、そんなの想像できない、役員とかもいるんでしょ。」

「オマエどこまで走るつもりだ!って怒られて、彼しれっと“北海道まで”

 って言ったんだって。

 ま、これは私が聞いたんじゃなくって、そこの中学の人からの

 又聞きなんだけど。」

 

「千冬ってたしか、北海道から転校してきたんだよね。」

「そーかー、あんな知り合いがいたら、千冬も誰も相手にしないわけだ。」

 

「んだんだ。」

 

あー、ちょっと息が納まってきた。

 

「景クン聞かないの?」

「何。」

「なんで中学校の制服着てるんだって。」

 

「千冬が話したければ聞くし、そうじゃないなら聞かない。」

変わって無いなー、そういうとこ。

 

「私、一年間病気してダブっちゃったの。」

「そうかぁ、いまはもう大丈夫なの?さっき走ったりしたの、

 良くなかったんじゃないのか。」

「大丈夫、主に心の病気だったから。」

「そっか。・・・でも、なんか得した気分だ。」

「どうして?」

「千冬の中学生姿がみられたから。」

「それ、危ないおじさんみたいだよ。」

 

 でも、そういうふうに言われるとうれしい。つらいことも、

言葉一つで魔法のように楽しく変えてくれる。

変わってないよ全然、景クン。

 

「景クンに連絡とろうか随分迷ってて、さっきの子たちにもダブって

るって話はしてないの。」

 

「よしわかった。

 千冬とボクは昔近所に住んでいたけど、ボクがいじめっ子だったから

 それがトラウマになってて、逃げてしまったと。

 でもそれは子供にヨクアル、好きな女の子につい逆の行動をとって

 しまうという迷惑千万な愛情表現の一種で、今この再会の瞬間、

 過去は水に流して二人は和解した。」

「すばらしくご都合主義で、超うそ臭いね。」

 

「いいじゃん、嘘なんだから、どうせ。」

「誰も信じないよ、きっと。」

 

 

 

「へーそうだったんだ。すごーい。」

おいおい君達。

それで世の荒波を乗り切っていけるのか。

 

「千冬も良かったねー、満更でもなかったんでしょ。

 顔見たら分るよー。」

そんなあっさりと信じられてもなあ。

 

「コーヒー持っててくれてありがとう。」

「あ、どうぞ、どうぞ。ちょっとぬるくなってますよ。」

「大丈夫、大丈夫。走って、のどかわいちゃった。」

 

ごくっとな。

 

「ちょっともらっていい?」

はいよ。

 

「千冬、砂糖入りの紅茶じゃなかったっけ。」

「今は何でもいいの。のど、からからだから。」

 

“ひえー、目の前でかんせつキスだよー”

そっか、こいつら中坊だったんだ。ちょっと刺激がきついか。

 

「ありがと。」

すましてやがんの。ごくっとな。

 

「君らも飲む?」

「いえ、いいです。いいです。」

 

いてー!蹴られた。

 

「ちょっと、私の友達にそういうこと言わないでくれるかなー。

 私が恥かくでしょう。」

“上叢さん性格まで変わってない?”

「あ、ヤクシ。今のみなかったことにして。わたし、その、

 ちょっとって言うか、かなり舞い上がっちゃってるんだ。」

 

「千冬はどっち方面に帰るんだ。」

「景クンとは反対の方。だから一緒なのは駅までなの。

 でも、一度蒲生の方にも行って見たいな。

 短かったけど、すっごい想い出一杯だから。

 あの桜の木とか。今年も綺麗に咲いたかな?」

 

 ボクは頷いた。

 

 あれから毎年、桜の季節になると、ボクは一人であの桜を

見に行った。

そして一年一年の桜を、ケイタイに記録し続けた。

いつか千冬と再会することがあったら、それを見せてあげたいと

想っていた。

 

  彼女の友人達は、気を使って先に帰ってしまった。中には無理やり

引きずられるように帰っていった子もいる。

 ボクもついこの間まで中学生だったんだけど、随分違う世界に

来てしまった気がした。

 

「その制服は?」 

「有鄰館高校。」

「あ、進学校なんだ。」

「東京の大学に行こうと思って。」

「わたしも来年、そこ受けようなあ。飛び級とか無いかな。」

 

千冬頭良かったもんなあ、楽勝とか思ってるんだろうな。

 

「・・・ミズエちゃんは?」

早いな、もうちょっと近況の話とかしてからでどうですか。

 

「橘花女学院。」

「そうじゃなくて、どうなのって聞いてるんだけどなあ。」

やれやれ、。

「三月にふられました。」

「よしっ!」

 

 なんだ、そのガッツポーズは。むかつく。

 

「帰ってきてよかった。三年待ったかいがあったわ。」

「三年間、なにもなかったの?あっちにもいろいろと男子はいたでしょ。」

「男前のウッシーはいたけど。言葉が通じなかったの。

 しくしく・・・・。」

 

ボクは牛と同レベルか。

 

「ちなみに、あれは全部メス牛だぞ。」

 

駅が近くなってきて、ますます人が多くなってきた。

 

 この前に二人で歩いたのが、蒲生のすっごい田舎道だったから、

こうやって二人で、しかも制服なんか着て歩いてるのって、

すっごい違和感がある。

 

「えーっと、わたし映画とかみたいなー。“空とサンダルと猫” 

シネコンでやってるのです。」

 

はぁ? 突然なに?

 

「次の土曜日は、ヒマヒマなんだけどなあ。中学生は一人で

 出歩いちゃいけないって言われてるし。

 こっちに来て買ってもらったおニューのブラウス。

 1回も着ないうちに夏になりそうなんだなー。」

 

はいはい。

 

「何時?」

「え、付き合ってくれるの、悪いね景クン。

 例え独り身だといえ、景クンもいろいろ用事有るだろうし。」

独り身は余計だっつーの。

 

「じゃあ十時にマルエイ前の広場で!それでいいか?」

「やだー、景クンなんか怒りっぽい。昔はほんとに優しかったのにぃ。」

「千冬こそ、なんだか言葉に険があるんじゃないか。」

「そんなことないよ。・・・いやあるかなぁ。あるかも。

 さっき言った心の病気の話ね。

 あれ、こっちに帰りたい病だったの、ジツワ。」

 

 コッチニカエリタイビョウ?

 

「ちょっとした登校拒否なんだ。

 蒲生に帰りたい、帰れないなら学校行かない。

 そういうことやってたら、本当に身体の調子がおかしくなって、

 一年間棒に振っちゃった。

 大変だったけど、帰って来れて良かった。蒲生じゃなかったけどね。

 この辺りが微妙な確執と妥協なんだよ。おかあさんとの。」

 

大変さだけはわかった。多分。それ以上は当事者しか無理。

 

「そこまでして帰ってきたのに、景クンてば冷たいんだもの。

 “千冬逢いたかったよ”とか言うかと思えば、

 “今度消えるときは、完全にふってからにしてくれ”だって。

 それじゃあ私、帰ってきた意味無いよ。」

 

「悪かった。」

「それだけ?」

「あーそのー。千冬に逢えて嬉しい。」

「もう一声。」

 

ボクは、ケイタイを取り出して、写真を呼び出した。

 ボクが小学校の黒板の前でポーズを取って、タケダに

写してもらった写真だ。

 

「はいこれ。」

 

 千冬はその写真をじっと見て、

「このときが始まりだったんだ。多分。」と言って、

目尻をそっとぬぐった。

 

「そうだ。」

と彼女は言って、カバンに手を突っ込み、奥の方から何か取り出すと、

「じゃーん!」

といってボクの目の前につきだした。

 

「ケイタイじゃん。」

しかもオレンジ。なんでオレンジ?

 

「買ったの。」

「おー、すげっ。ねぇ彼女ー、番号教えてくれない?」

「んーとね。」

 彼女は、どっちかって言うとぎこちない手つきで、

操作を始めた。

 

うー、うー、うー、え、ボクのケイタイ?

耳につけて待ちかまえている。

 

「もう、見てないで、早く出てよ。」

「イヤ、ちょっと可愛いなと思って。」

“もう”、なんていいながら、満更でもなさそうだ。

 

「ハイ、中森です。」

「“景クン。”」

「ハイ。」

 

「”景クン、景クン、景クン、景クン。“」

「わかったって。」

 

「“ずっと、そう呼びたかったんだから・・・。”」

 


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