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 今日は三学期の始業式だから、午前中には全部終わっちゃう。

もうしばらく、半日授業が続かないかなぁなんて思いながら、

階段を上がっていった。

 

とんでもない騒ぎが持ち上がっていることを知らずに。

 

「上叢さん。“おめー”。」

「おめでとう、堀内さん。」

 

堀内さん、なんか目が光ってる。何だろう。

 

「ねぇ聞いた?中森と二組の丘野さん、お正月に神社でデートだったん

だって。」

あらあら、

「わたし見たよ二人で歩いているところ。同じ頃初詣に行ってたもの。」

「なーんだ。知ってたのかツマンナイの。じゃあ、心穏やかじゃないでしょ。

 ・・・あれ、ちょっと待って。

 上叢さん、髪の毛切ったの!ひょっとして敗北宣言!

 かわいそう、上叢さん。」

 

むかっ!

 

「違う!堀内さん。それ以上根も葉もないこといったら、上履きにゴキブリ

 突っ込むわよ。」

「ひいーーー。それだけはご勘弁をーーー、って。なーんだ違うのか。

 まあいいや。それでね、二組の男子が中森君のこと狙ってるらしいよ。」

「狙う?」

「なんてったって、“二組のアイドル丘野”を略奪しちゃったんだよ。」 

 

なんだか、美容院においてある週刊誌みたい。

 

「そんな略奪だなんて、彼にそんな度胸無いわよ。」
「それだけじゃないの。去年の三組VS二組のサッカー最終戦。」
「アー、せっかく誘ってくれたのにごめんねー、わたし、本当は行きたかっ

 たんだけどなー。」

ほんと腹立ちますって、うちの親には。

 

「負けた腹いせに、中森君を“ぼこす”っていってるらしいの。」
「どうして、中森クンが狙われてるの。彼、サッカー下手だって言ってたのに。」
「それは、わたしもわからない。」

 

 景クン大丈夫かなぁ。喧嘩とかも弱そうだし。

 うーん、あの横顔を見る限り、彼なーんにも知らないって感じ。教えてあげた

方がいいよね。

 

「心配そうね、上叢さん。」
「だって、クラスメートが誰かに狙われてるって聞いたら、

 心配になるでしょう。普通。」

「わたし、ならないもーん。」

この、女狐めー。

あ、先生きちゃったじゃない。あーん、言えなかったよー。

 

「それじゃあ、今日のホームルームはこれで終わり。

 みんな気をつけて帰れよ。」
「せんせいさーならー。」

 

“あー終わった終わった。休みあけはきついわ。”
“おーい、日和佐。塾の前にコンビニよって、昼飯買っていこうぜー。”
“えー、塾やすみてーなあ。”

 

 みんな好き勝手なこと言い合ってる。このがやがやしたところが、

久しぶりの教室って感じ。子供っぽくて笑えるわ。


 

「おい、ナカモリっているか?」

え、誰?

 

うわっ、入り口に立ってるの、二組の子じゃないかしら。

ということはひょっとして。

「あちゃー、黒部だ。さいあく。」
「堀内さん知ってるの?」
イヤそうな顔で、頷くなあ。たち悪そう。

 

「おーいナカモリー。」 

返事しちゃダメ。

 

「なにー。」
「おまえかー、ちょっと顔かせや。」

景クンぼーっとしてないで、逃げなさい・・・。あらら、中に入ってきちゃった。

 

「ちょっと学校の裏手につきあえや。」

 

「ことわる。」
「何だよ、びびってんのかよ。この根性無し。」
下卑た、イヤな笑い方。

 

「何の用か言ってもらわないと。ボクはこれから家に帰って、

 洗濯とか晩ご飯の買い物をしないと行けないんだ。結構忙しいんだよ。」

「洗濯?なんでおまえが。」
「母さんが仕事で忙しいの。」

「お前んとこのオバサンが忙しいとか、そんな事知ったこっちゃねー。

 来いっていってるんだよ。」
「だから用事は何? ここでも言えるだろう。」
「イヤ、ここではちょっと。」
「もう、わけわかんないよ。誰か他にいないの話の通じるヤツ!」

 

うわー、景くん無茶苦茶言ってる。

 

あ、一人、もう一人入ってきた。やだもう、いかにもって感じ。

二組って一体どういうクラスなのよ。

 

「お前か、ナカモリって。」
「なんか、今日午前中だけで、すっごい有名人になって行くみたい。

で、何の用?」

 

「お前さ、二組のオンナに手ぇ出したろう。そういうのむかつくんだよな。

 サッカーも、好きかってしてくれたじゃねーか、へたくそは外で大人しく

 してりゃいいのに。

 お前がいると、面白くねぇんだよ。二三発なぐらねーと気がすまねー。

 冬休みが終わるのが待ち遠しかったぜ。さあ、ここで殴られるか、

 外で殴られるかどっちがいい。」

 

誰か男子、止めなさいよ。

 

「あいつらやばいよー、いっつも三人掛かりだから。」 
堀内さん詳しいねーそういうの。

「わかった。わかったから帰る。そんなつまらない事に

 付き合う気はない。」
「何だとてめーごらー!わざわざ三組まで出張ってやったのによー。」

あーもう、男子のばかー! もう我慢できない!

いけー、上叢千冬。

 

「景くーん、お待たせー、一緒に帰ろう!」
そんなびっくりした顔しなくても良いじゃない。

どさくさに紛れて腕組んじゃえ。 

「上叢・・・。」
「買い物行くんでしょ、スーパー・マキノに。つきあったげよか。

 わたしのお薦め教えてあげる。」

 

早く立ってよ、こわいよ景クン。
「何だーこのオン・・」、 

 

「なにやってんのよー!」

 

あれ、丘野さん。
うわー怒ってる。こっちに向かってくる。丘野さんが一番こわい。

 

「ケイくん、この人誰。ちょっと、誰に断って、わたしのケイくんと腕

 なんか組んでるの。」
「わたし、上叢。」 


「え・・うそ!マジ?」
「髪切ったの。」
「ホントだ、もったいない。綺麗な髪だったのに。」

「色々訳ありで。誰かさんに神社で見せつけられちゃったりとかしたし。」

「で、どうして腕なんか組んでるわけ。しかも教室の真ん中で。

 わたしでもした事無いのに。」

「一緒に帰るの。丘野さんこそどうして三組に?」

「ケイくんと、一緒に帰ろうかなーって思って。」
「あー残念、私の方がちょーっと早かったかなあ。

 それに丘野さん、全然方向違うじゃない。」

というか、私たちクラスの注目浴びて、いったい何やってるのかしら。

 

「上叢さんだって、いつも遠回りさせて。」
「え、遠回りだったの?」
「知らないの?」
「だって、わたしあの道以外知らないから、通り道だと思ってた。」
「あきれた・・・、で何で腕なんか組んでるの、わたしに断りもなく。」
「だって、この人たちが、・・・」 

丘野さんが二人を睨んでる。

 

「クロベ、シンジ・・・。あんたたち何してるの。」
「なにって・・・。」

「わたし、つまんない噂聞いたんだぁ。うちの男子がケイくん狙ってるって。

 冗談かと思ってたのにマジだったの・・。最低ね、全く。

 タケダもタケダよ。いるんでしょその辺りに。」
「よんだかー、ミズエ。」

 

「あんたね、あんたが蹴り入れたらこいつらなんか一発でしょう。なに高見

 きめこんでんの。」

 

そうだ竹田くん。私なんかが出しゃばらなくても、彼がいるじゃない。

 

「いやー、ケイがどうするか見ものだと思って。」
「あんた、それでも友達?」


「それをいうならケイに言ってくれよ。

 中学でも一緒にサッカーやろうって誘ったのに、断るんだもんな。

 友達甲斐無いヤツなんだよ。」
「ボク下手だし。」
「確かにいまは下手だけど、この間の試合、あの試合はお前の試合だった。」
「ゴールしたのはタケダじゃないか。」

「決めたのはオレだけど、試合を作ってたのはケイだ。

 あの二点目のパスなんてさ、ケイがへったくそなドリブルで左を上がって

 きたとき、あの時間帯で二点目が入ったらもう終わりだって誰でもわかるんだよ。

 だから二組の連中がみんなでケイを押さえにいったから、オレがパスを受けに

 行こうとしたら、ケイが目で右にあがれって言うのよ。

 で、ケイがへなちょこラストパスをポーンとあげて、あとはもうオレ、

 フリーで押し込むだけだった。  

 やったぞーってケイの方見たら、ぶっ倒れたまんま拳を突き上げてやがんの。

 それみてオレ鳥肌立っちゃったよ。あの状況でオレにパス出したら、絶対

 決めるって信じてぶっ倒されたんだって。

 オレ、もっとケイとサッカーやりたいのに、ケイのヤツやらないって言うん

 だぜ、ありえねーよ。まったく。」

 

「へー、すごいなケイ。」
「わたし見てたけど、そこまでわかんなかった。」
「でもタケダのゴールもすごかったよなー、二本だぜ二本。」
「なんか、ドッカヘ飛んでったのもあったけどな。」

 

 いいなー行きたかったなー。楽しそう。一緒に騒ぎたい。

 ん、ケイくんどこ行くの。シンジくんの腕なんか掴んじゃって、

外に出ちゃった。

なんだろ。

 

廊下で話してる。

 


「・・・オマエさあ、殴り合いしたいんだったら付き合ってやるけど、

ボク弱いから相手にならないぞ。そんなの殴って面白いか。」

「オレは。お前みたいなのが嫌いなんだ。」

 

「ボクを殴ってぼこぼこにしても、丘野はオマエのこと軽蔑するだけだぞ。

 それは相手がボクだからじゃなくて、弱い相手を殴って憂さ晴らし

 するってことに軽蔑するんだ。

 丘野は可愛いだけのお嬢さんじゃないんだ。それぐらいわかるだろう。」

 

「じゃあどうすればいいんだよ。お前むかつくんだよ!何でも分ってますって

 顔して、おいしいとこもっていきやがる。それをどうすればいいんだよ。」

「オマエがむかついてるのは、ボクじゃなくて、自分だろ。」

「くっ・・・。」

 

「そういうのは、もがいて苦しんで、逃げンのやめるしかないんだよ。」

「うるせー!オマエになんかわかるか!くそったれ。」 

 

・・・行っちゃった。

「もう、ばかなんだから。」 

丘野さん、いつの間に・・・。

 

「ほっとけばいいのに、あんなヤツ。」
「ほっとけないんだよね、あいつ。」
「そうそう・・・。で、自分が傷ついて。」
「私たちって、大変だ。」
「私たちじゃなくて、わーたーし。」

 

やなオンナ。

 

「まあいいわ、今日はゆずっとく。助けてもらったし。」
「ゆずっとくって、あなたねえ・・・上叢さんて、ああいう性格だったの?

 もっとおしとやかで、和風の人かと思ってた。」
「親はそうしたいみたい。」
「あーなるほどね。で、髪切ったの。ご両親よくゆるしたよねー。」

 

「最初自分できったら、失敗して、その頭で美容室行くからお金頂戴って

 言ったら、母さん青ざめてた。だから、予定より短くなっちゃった。」
「ご愁傷様。」

「でもいいんだー。だって景クンの、あんなにびっくりした顔見られたから。」

なんてね。どお、丘野さん。・・・あれ?

 

「三組の皆さーん。うちの“ばか”がお騒がせしちゃってごめんなさいねー。

 あとで、ちゃんと説教しておきますから、ゆるしてねー。」

 

「おかのさーん、また遊びに来てねー。」
「うん!くるくる。じゃあね―。」 

恐るべし、オカノミズエ。


あー、半日だったのにいつもの倍は疲れた。

しかも今日はさらに遠回りだし。

 

朝晴れてたのに、曇ってきたよ。

洗濯しても乾かないだろうなあ。

乾燥機ってさあ、まさに地球温暖化マシーンだよね。 

 

 ボクとミズエはミックスサンドイッチとチョコマーブルとアップル・デニッシュと

暖かい缶コーヒーとミルクティを買って、公園に行った。

 

「なんか寒くなってきたね。」
「朝より低くなってないかなぁ。」

 

 まあ、公園も誰も歩いてませんわ。

 犬の散歩の人をよく見かけたりするんだけど、これだけ寒いとね、犬も家で

じっとしてたいでしょ。

 

「あの、トンネルの中に入ろう。ちょっとはましだよ。」
「だねー。」

 

コンクリート製の大きな滑り台。

 

 台っていうよりは丘?の下に小さい子供なら、立って歩けるぐらいのトンネルが

通っていて、遊んでて突然雨が降ったときなんかに、ここでよく雨宿りをする。

 

 そういうとき、トンネルの外の世界は”水煙“(で、いいんだっけ。最近

読んだ本の中に出てきたんだ。)の中で、雨以外に動くものがなく、灰色の

水浸しの中に沈んでいく。

 

 つい無口になって、だれかがスニーカーを動かして、それが底に溜まった砂を

鳴らす音だけが耳に聞こえてくる。

 なんとなく、みんな無口になるんだ、そういう時って。

 

ああ、寒いはずだよ。 

「雪だ・・・。」
「ホントだ。つもるかなあ。」

 

 しばらく、雪が落ちてくるのを黙ってみてた。

 

 ミズエが、カラになったサンドイッチのケースと、パン袋をていねいに片付け

てくれた。

 ぜんぜん、わがままな女の子なんかじゃない。

 そのあと、せまいトンネルの中で、「さぶ・・・。」って小さな声で言って。

腕を持ってボクの身体にくっついた。

 

「このまま寝ちゃってぇ、朝起きたらトンネルごと雪に埋まっててぇ、捜索に

きた誰かに発見されたときには、二人は身体を寄せ合って眠りながら凍死してるの。

 ロマンチックー。」

げー、何言ってんの。もっと、人生楽しんでから死のうよー。

 

 雪が、だんだん激しくなってきた。

 

 ミズエはまだ渋っていたけど、もう夕方に近かったし、北西の方の雲がすごく

黒くてこれから本格的にふってきそうだったから・・・っていっても言うこと

聞きやしない。

 

 最後に、帰ったらケイタイするからと言ったら、それはそれでまた嬉しそうで、

ようやく公園を出て行くことが出来た。

 

 結局その夜、たまたま母さんが帰ってて、久しぶりに話したりしてたから

ミズエにケイタイしたのは十一時を過ぎてからだった。

 

彼女、怒ってた。

 


ボクは時々夢を見る。

誰だか知らない人から引き離される夢。

 

でも状況からすると、それは母親のような気がする。

声が聞こえるのも以前と変わらない。

 

「ごめんね。」って言う声。

 

その時のボクには何の感情も無い。

なにも分からずに引き離される夢。

 

でも、母さんとは違う人のような気がする。


 年明けの初雪以来何度か雪の日があって、最初の頃は校庭で雪合戦

なんかをしたりもしたし、もちろん“雪だるま”も作ったけど、

もう雪も見飽きた。

飽きっぽいのは子供の得意技。

 

髪を短くした上叢は、以前よりも雰囲気が明るくなった。

見た目だけじゃなくてね。

 

「あー、むかつく。」
朝からなんだよそれ。

「また、母さんと喧嘩しちゃった。」
「何が原因?」

どうせ、どうでもいい、つまんないことだろう。

 

「これ。」 

ん、指がどうした?

ぼくは不審な表情(のつもり)で上叢を見た。

 

「えー、わかんない?母さんたら一瞬で目がつり上がったのに。」

 

ボクはさらに近付いてみた。

 

指・・・じゃなくて、爪。

マニキュア?

ウソだろ、あの上叢千冬が。

ミズエやカンナならやってそうだけど。

 

「マジ・・・ですか?」
「試しにやってみたの、そしたら誰かさんに見せるまでは、落とすのが惜しく

 なっちゃって、そのまま寝て、朝にはすっかり忘れてたの。

 で、お母さんに見つかって、朝から大げんか。」

 

あ、おばあさんおはようございマース。雪なのに犬のお散歩大変ですねー。

 

「マニキュアなんてどうしたの。」
「雑誌の付録についてくるのよ。“ぴあにっしも”って知ってるかなあ、

 女の子向けのマンガ雑誌なんだけどね。」
「千冬、マンガなんか読んだっけ。活字専門だと思ってたよ。」

 

千冬の眉間に皺なんて記憶にないぞ。

 

「実は初めて買ったんだー。それが原因でも、お母さんと大げんか。

 こんな破廉恥なもの読んじゃいけませんだって。小説の方がよっぽどひどい

 こと書いてると思うけどな。面白いね、マンガって。」

 

「貸そうか?」
「景クン、マンガ持ってるの。」


「ボクのは男の子向けだけど、実は母さんが隠し持ってる古い文庫本が、

 すごい面白いんだよ。

 “ポーの一族”とか“トーマの心臓”とか。こんど持ってくるよ。」

 

「で、また母さんと戦争なんだな、これが。今朝のはちょっと、

 まずかったなあ。

 ね、見た?ちゃんと目に焼き付けた?わたしのマニキュア爪。」 

 

ハイ、見ましたけど。

 

「よし、学校ではみんなには見つからないようにして、今日中におとし

 ちゃおーっと。」
「ボクに見せるために?」
「他に誰がいるの?こんなのみんなにばれたら、わたしのイメージが変わっ

 ちゃうじゃない。

 白百合のように清楚な上叢千冬が、実はお水系のおネエでしたなんて、

 洒落にならないでしょ。」 

 

千冬って、こんなキャラだったっけ。なんか調子狂うな、年明け以来。

 

「あれ、校長先生マスクしてる。」
「ホントだ風邪かなあ。先生おはようございます。」

 

“おはよう”と言った先生の声がマスクでくぐもって“ぼはよう”って聞こえた。

くっくっ。

 

 ボクと千冬が教室につくのはいつも早いほうだけど、にしても今日は集まり

が悪いなあ。それがもうすぐチャイムが鳴ろうっていう、今になっても来て

ないのが多い。

 

みんな、休みか?

 

「きりつ、れい。」
「えー、今日は、斉藤、小田、小島、川角、根岸、町田がインフルエンザで

 休みだ。」

 

えーー、って騒ぐなよいちいち。うるさい。

 

「なので、今日から三日間学級閉鎖とする。みんな直ぐに下校の用意、

 掃除もしなくていい。

 家に帰れないものがいたら、学校で自習してていいぞ。

 ただし先生に申し出ること、いいな。

 学級閉鎖は休みじゃないから、出歩くんじゃないぞ。わかったか。」

 

「先生、塾は行ってもいいんですか?」

それ普通塾に聞くことだろう。

 

「熱がなければ構わんが、潜伏期間かも知れないから、

 用心して休めるんなら休んだ方がいいな。

 他に何か質問は?」

 

“ありませーん・・・”てホントに素直な返事で、・・・帰りたそうだな。

みんな。

 

「他のクラスは授業をしているから、大人しく帰るんだぞ。

 窓から手を振ったり絶対しないように。わかったな。」

 

ということは、毎年しているヤツがいると言うことだ。

バカは、毎年再生産される。

 

 家には帰れるけど・・・と、昼メシ調達しないと。

学校で自習してたら給食、食べれるのかな?

でもそのために残って自習かあ。

問題集とか教科書ガイドなんか持ってきてないぞ。

どうすればいいんだ。

 

寝るか!いっそのこと。

 

「一緒に帰ろ、景クン。」

 千冬ぅ、何で指ぱたぱたしてんの身体の陰で・・ピアノ?

・・・ああ、あれか。

そっか、早く帰らないとやばいんだ。授業もなくなったし。

 

「オッケー。でも、先に行って下で待ってて。二組の前通るのやばいから。」
「ああーん、そうね、この根性無し。」

 

いや、根性無しでいいですからお嬢さん。先に行ってて下さい。

 

 で、ボクの予想はもろに当たって、二組の前を通るとき中でミズエが

ボクに向かって手を振った。

 ああ確かに、二組の連中には手を振るなって先生は仰いませんでしたでしょうよ。

普通やるかな、授業中に。しかも嬉しそう。

 

今夜、絶対ケイタイかかってくる。

 

 こんな時間帯に、しかも平日に商店街を歩くのって変な気分。

 通りすがりのおばさんが、この子達なにやってるのって目で・・・、

にらむのやめてください。

怖いですから。

 

「そうだ、マンガもってく、それとも読んでく?」

千冬が、意外そうな顔でボクを見ている。

 

「それって、景クンのうちに来ないかって誘ってるの。」

うーん。 

 

「そっか。間接的にはそうなるね。紅茶ぐらいなら出せるけど。

 お菓子がいるんだったら、買って帰ろうか。

 先生は出歩くなっていってたけど、帰り道が商店街だったら、

 別にいいだろう。」

「ドキドキしたわたしがバカだった。」 

 

何いってんだか。

 

「じゃあ、午前中だけお邪魔しようかな、わたしも母さんをこれ以上刺激する

 のはどうかと思うし、学級閉鎖になったのが知れた時、あんまり遅いと

 何言われるか大体予想がつくから。」

 

こういうところ、ミズエとは違うな、千冬は。



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