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それからお正月までの一週間、ミズエは夏休みと同じ塾で冬期講習に。

ボクはときどき、タケダやケンイチ君達と公園でサッカーボールを

蹴ったりした。

 

 タケダは中学に入ったら、サッカー部に入るって言ってた。タケダだったら

すぐレギュラーだろうな。

それ以外の時間は、やっぱり本を読んでいて、いまは歴史物にはまっている。

 

そうそう、家に料理の本があったのは大発見だった。

多分かあさんが新婚時代に使ってたんだろう。

奥の方に追いやられていたけど、掃除の途中で見つけたんだ。

ボクってどんどん家庭的になっていくのな。

 

ところどころ角を折ったあとや、汚れた指で触ったような跡が付いている。

へぇー煮っ転がしって、砂糖入れるんだ。だからちょっと甘いのか。

知ってるか知らないかだけのささいな事なんだけど、ボクにとっては大発見。

 

 ふうん、結構いろいろと揃えないといけないんだよね、ボクの知らない

調味料とかの名前がたくさん載っている。

 これはこれで面白いけど、作るって大変そうだな。だから奥の方にあったのか

・・・母さん、やっぱり料理嫌いだったのかな。

 

 そんな毎日が続いて、大晦日がやってきて、父さんが三百六十四日ぶりに帰ってきた。


「おおっ、景、でかくなったな。」

「152あるんだよ。もうすぐ母さん追い越しちゃうよ。」

久しぶりに合うと、なんだか恥ずかしいな。

 

「これお土産だ。っていっても、大したもんじゃないがな。

 もう新幹線が満員で、父さんは殆ど荷物がないから良かったけど、

 家族づれなんか見てられなかったぞ。ああまでして帰りたいかなあ。」

 

 父さんは、ソファーに腰を下ろして、その父さんの言う少ない手荷物から、

いかにもキオスクで慌てて買いましたって包装の、

「なにこれ、“辛子明太子”?」

 

「博多名物と言えば、“明太子”。」

「誰が食べるの。」

「みんなでだ。」

 

「今日大晦日だよ。年越しそばに明太子食べてどうすんの。ボクいらない。」

「母さんも遠慮しとくわ。」

「なんて家族なんだ・・・。」

「なんて親父だ・・。」

 

「まあまあ、お父さん疲れてるんでしょ、飲む?ビールでもお酒でも、

 何でもあるわよ。」

「へぇー気が利いてるじゃないか。酒、と明太子。」

やっぱり酒の“あて”だったんだ。

 

「景ちゃんが買っといてくれたのよ。成績も上がったし、身長が伸びただけ

じゃないの。成長してるわよ。じゃ、ちょっと用意してくるわね。」

 

 父さんがいると賑やかだな。いつも誰かが話してて、ボクの耳が全部

それに反応しようとする。

「景、サッカーやってるのか。」 

ほらまただ。

 

「うん。でもサッカーって言うか、ボール蹴ってるだけだよ公園で。」

「どんなプロでも最初はそんなもんだろう。」

「ボクはサッカー選手になりたいわけじゃないよ。そうやってみんなと

 ボールを追っかけるのが楽しいだけ。あんまり上手くないし。」

 

 母さんが父さんの前に、厚手のとっくりと明太子の載った皿と

お箸をおいてった。

うちにとっくりなんてあったんだ。全然気づかなかったよ。

 

 ふーって息を吐いて、

「ずっと転勤ばっかりだったからな、友達とそんなふうに遊ぶ事も

 出来なかったろう。こっちに残ったのは正解だったな。」

 

「父さん寂しい?」

「えー、あー、寂しくはないな。父さんは学生の時に家を出てから、

 ずっと一人暮らしだったから、一人暮らしには慣れてるんだ。

 母さんや景の顔を見たり、話をしたいと思う事もあるけれど、寂しいと

 思った事はないよ。アラブに日本の電気製品を売りに行ってる

 わけじゃないから。

 帰ろうと思えば、新幹線で直ぐ帰れるんだし。」

 

 ふーん、大人ってそんなもんなんだ。

 

そうだよな、そうかもしれない。

いまも沢山の日本のお父さん達が、世界中に単身赴任してるんだもの。

 

「あのさ、“大江山の鬼”とか“徐福”って父さんの本でしょ。

 ああいうの好きなの?」

父さんのぐい飲みが、口の前で止まった。

 

「若い頃に、ちょっとああいう伝説にはまった時期があってね・・・。」

やっぱり父さんか。それで、それで、何が面白いの?

 

「あ、母さんもう一本つけてくれるかな。」

「おそば先に食べましょうよ。」

「そうだな。よし、どうせなら“紅白”見ながら食べよう。ぷちっとな、っと。

 なんだこりゃ、なんだか鳥みたいなのがでてるぞ。

 ほら景、これ誰だかわかるか。」

 

ぇえー・・それで終わりなの、つまんないの。

 

「ああ、アマダ・リホだよ。今年あんなに流行ったのに、父さん知らないの。」

「父さんはもう、おじさんだからな。若い歌手はさっぱりわからん。」

「出来たわよ。おそば、食べましょう。」

 

 テーブルの上にお椀が三つ。お箸が三膳。

三つ揃ったのは、この年の暮れが最後になった。

おそばを食べちゃったら、もう早々にお風呂に入って部屋に退散した。

 紅白なんて見たくも何ともないし、(特に後半。見た事もないオジイサンや

オバサンがぞろぞろと出てきて歌うところ。はっきり言ってキモイ。)

父さんと母さん、二人にしてあげた方がいいんじゃないかと思ったんだ。

 

それに、僕にも用が無いこともない。


大晦日の夜って、特別静かだよね。

 

 日本中が、息を潜めて静まりかえっているような中で、遠くの方でゴーンて

お寺の鐘が聞こえてくるんだ。

ボクはカーテンを開けて、部屋の電気を消した。

 

 外をみるとぽつりぽつりと街灯がついていて、家々のオレンジの灯りも

まだ残っている。電車も“二年参り”のために朝まで動いてるって駅に

書いてたけど、いまは見えないな。

 

 ミズエの家は、スーパー・マキノの看板があそこだから、

その向こうの暗いところのどっかだ。ちゃんと起きてるかなあ・・・。

 

もうすぐ十二時だ。

 

ぴ、ぴ、ぴ・・と。あとはこれを押すだけでオッケー。

オッケーなんだけど、・・・ドキドキしてきた。

 

なんか柄にもなく、すっごい約束しちゃったよー。

 

たんなる思いつきなのに、あんなに喜ぶと思わなかったなあ。

ああ、だめだプレッシャーで死にそう。声裏返ったらどうしよう。

話し中だったら、もう留守電だけ残して切っちゃおうかなあ。

 

あ、57、58、59、0時。

ナカモリ・ケイ。いきまーす!

 

・・・・・・・・どきどきどきどきどきどきどき、ど。

 

“ケイ君。”

「あけましておめでとう。ミズエ。」

 

“おめでとう。だいすき。”

「・・・・・・。」

 

“こら、ケイタイで沈黙するな。失礼だぞ。”

「あ、ごめん。いま嬉しすぎて、気ぃ失ってた。」

 

“本当!”

「だって、女の子からそんな事言われたの初めてだもん。

 しかもミズエからだよ。二組の男子に知れたら絶対殺されるってボク。」

 

“それって・・・、複雑。

 なんかはぐらかされたような気がする。”

 

「へへ、実はね。こんなに電話するのにどきどきしたのはじめてなんだ。

 そんなときにいきなりあれだから。ちょと薬がきつすぎるよ。

 脈、120までいってるよ。」

 

“わたしも待ってる間、すっごくどきどきしてた。さっきまで電源切ってたんだよ。”

「どうして。」

 

“誰か友達からかかってきて、ケイくんの電話とれなかったら悔しいから。

 誰からも掛かってこないように、直前までオフっといたの。”

 

やっばー、いま“きゅーん”て音がした。絶対やばいって、これ。

次なんか言われたら、確実に彼女の前にひざまずいてしまう。

耐えろオレ。

 

“うちからケイくんのマンション見えるよ。たしか12階だったよね。”

「いま、電気消して外見てる。」

 

“ちょっとつけてみて。”

「はいはーい、よっと。」

 

“もう一回。”

「どう。」 

 

“もう一回。” 

「・・・」 

 

“もう一回。” 

「おい。遊んでるだろ。」

 

“ばれちゃった。へえあそこか。あーん、望遠鏡あったら見えるのにぃ。

 何で電気消してるの。”

「消さないと、ミズエのうちが見えないから。」

 

“きゃーーー、ダーリン。ここよここ、いま手ふってるの見える?”

「ちょっと待って。一回電気消して。あ、わかった。あー、でも手までは

 ちょっとなあ。」

 

“わたしも疲れちゃった。”

ははは・・・ってケイタイ同士で笑うと、なんかケイタイが笑ってるようで変だ。

 

“ねぇこれって、完全に恋人同士の会話だよー。”

「うん。」

 

“あしたは2:2のデートだよー。”

「うん。」

 

“どうして付き合っちゃいけないわけ?”

 

「・・・重い、のかな。」

“なに?”

 

「うーん・・・。今日さ、・・・父さんが帰ってきたんだ。」

“あ、久しぶりだよね。まさか明日行けないとかって?”

 

「そうじゃない。」

“よかったー、心臓に悪いよ。”

 

「よくないんだ・・・。ボクね、三人でいるのが重くって、

 部屋に逃げてきたんだよ。

 父さんと母さん、普段通りに仲良さそうにしてるんだけど、

 ちょっと違和感があって、いま思えばふたりとも顔見ないんだお互いの。

 いま気付いた。

 その時は、ボクがいるから話しにくいのかなと思ったんだけど、

 そうじゃないんだ。多分。

 ・・・やばいんじゃないかな。もう。」

 

夏休みの時もそう思った。母さんが自立するって言ったときだ。

 

「結婚するほど好きあったのに・・・なんでなんだろう。」

 

“ケイ、大丈夫?“

 

「・・・これでも、一度は立ち直ったつもりだから・・・多分大丈夫、

 と思う。」

 

 
 

“ケイ。もしもよ、もしもそんな事になって、ケイが苦しかったら、

 今度はわたしに頼ってね。あの子じゃなくて。”

「別に頼ったわけじゃないよ。」

 

“ケイの事、一番よく知ってるの、わたしだよ。

 ケイはね、周りに気を遣いすぎるの。

 ケイに触れる人がみんな幸せになれるようにって、

 そんなに気をつかわなくっていいのに。

 怒ればいいときに怒らない、羽目はずしていいのに、ブレーキかけて、

 気配りして、誰もイヤな思いをしないように気を遣ってばっかりで。

 だから、あの子いつまでもケイの側にいるのよ、気持ちいいから。“

 

「ミズエ・・・。」

“そんなコトしてたら、ケイつぶれちゃうよ。でも、やめろって言っても

 辞められないでしょ。

 だから苦しいときは、わたしに泣きついてくれればいいの。

 わたしはケイの事だけ気にしてるから大丈夫。

 だからケイもわたしだけ・・・、あ、ばかだ。

 それが出来ないから苦しんでるのか。ケイ。”

 

「どうやら、そうみたい。」

“わたしたち、だめなのかな・・・。”

 

 ボクは、なんて応えたらいいのかわからない。そうじゃないって言っても、

言葉では伝わらないような気がした。

 

部屋の灯りをつけて、消して、またつけて、消した。

 

“どうしてわかったの。・・・いまケイの部屋を見てるって、

 どうしてわかった?”

「この間、電話で話したときから、何となくミズエがそう思ってるんじゃない

 かなって気がするようになった。」

 

“そうか。それってすごい事だよね。”

「うん。多分。」

 

“多分ばっかし。”

「自信ないんだもん、自分に。自慢するとこ何にもないし。」

 

“頭いいじゃない。“

「ちょっと成績がいいだけ。頭は良くない。だから、一番大事なミズエを

 悲しませてばっかり。」

 

また泣いてる。

「おーい。」

 

“哀しくて泣いてんじゃないからね。

 ケイくんが一番大事って言ってくれた。”

「うん。全部をミズエにはあげられないけど。それは本当の気持ち。」

 

“そうだね、・・・・全部あげるってわけにはいかないんだ、みんな。

 何かは自分のためにとっといて、何かは別の人のためにおいてあるのかも

 知れない。

 うちのお母さんも、お父さんとお姉ちゃんとわたしと三人も抱えて、

 それぞれにあげなくっちゃいけなくって、大変なんだろうなきっと。

 そういうの頭ではわかるんだけどなぁ。“

 

「ミズエ、ぼくらまだ十二才だぜ。」

“うん、・・・・一緒に大人になろうね。”

「自信ないなあ・・・。」

 

“もう、やだ!くっくっく・・・・そうだちょっと待っててくれる。”

「え、なに。」

「だからちょっとだけ待ってて、・・・。」

 

 ケイタイの向こう側で、“おねえちゃーん”ってよんでる声がした。

お姉ちゃんのミチルさんは、鴨中の美人姐さんだ。姉妹がいるっていいな。

 

 

窓に顔をくっつけて、ミズエが戻ってくるのを待っていた。

息のあたるところが白くなる。

ケイタイだと普段しゃべれない事まで話しちゃう。

ケイタイはちょっと怖いな。雰囲気に流されるから。

 

“よっこいしょっと・・・”ていうのが聞こえた。

オバサンかきみは。

 

“おまたせしましたー。ケイくんの部屋FMあるよね。つけてつけて、

 FM―Juneだよ。”

「らじゃー。」

 

“あー聞こえる聞こえる、時間差攻撃だ。おもしろーい。

 お姉ちゃんにリクエスト入れてもらったんだ、採用されるかなー♪。

 おねーちゃん、メールうつの、めっさ早いんだよ。マッハだよマッハ。

 わたしが普通に喋ってるのリアルで入れちゃうの。あ、曲終わった。“

 

“はーい、可愛いリクエストがきたから紹介しマース。

 何と十二才だよ十二才。きゃー可愛いい。”

 

“きっとこれだよ、これ。”

 

“わたしにも十二才のトキありました。真っ黒な野球少年に憧れてました。

 一年中野球ばっかりやってる野球ばかでねえ、甲子園に行くんやーって

 ずーっと言うてたけど、まあ世の中そう簡単にはいかへんもんねー。”

 

「この人、関西の人?」

“そうみたい。ひよこねーさん、て呼ばれてる。“

 

“え、わたしの話はもういらん。そんなディレクター、

 正月ぐらいもうちょっと喋らせてよ。ダメ、・・・ダメ出しされました。

 じゃあ、お待たせいたしました。

 えへん。なになに、・・わけあって名前を出せないM・Oより。

 そらそうやねぇ、十二才で名前晒すのって、ちょっと根性いりすぎるよねー。

 

 Kクンへ。

 

 KはアルファベットのKですね。きいてるかK。あんたの事やで。

 え・・・個人的なコメントは挟むな・・・またダメ出しされましたー。

 ・・・Kくんへ。今年一番にケイタイで“あけおめ”してくれてありがとう。

 わたしとっても幸せです。これからも仲良しでいてね。

 なにもお礼できないから、二人の大好きなブルー・フィッシュのこの曲を

 リクエストしました。一緒に聞いてね・・・。

 やって、もう、超ラブリー! がんばれM・Oちゃん。おねぇちゃんがついてるぞー。

 行け行け十二才!え、おまえがはよ行け!それどういう意味ですか、ディレクター。

 

 と、いうことで、“ブルー・フィッシュ”の“GO、GO、Girl”。

 ゴーゴー十二才ー!“

 

 ラジオから歌が流れ出して、ボクとミズエは途中から一緒に歌い出した。

 

“君を好きになった事が、思いでの中にしか残らなくても、

 ボクはそれで満足さ。

 なにもしなかったよりもずっとね。

 君はボクを追いかけて、ボクはキミをギュッと抱きしめて、

 それはずっと大切なことさ。

 なにもしなかったことより、それは一瞬だったかも知れないけど、

 それはずっと大切なことさ。”

 

 ボクの父さんや母さんも、ミズエのお父さんとお母さんも、こんなふうに

心を一つにした事があって一緒になったんだ。

 

 例え今がどんな気持でいたとしても、それだけは信じられる。それが、

ボクとミズエには早く来すぎた瞬間だったとしても。

 

「じゃね、お休みー。また明日―。」

“あー待って待って、ベッドにはいるから。” まーったく。

「おやすみ、ミズエ。」

 

“Chu!” 

 

このとき、ほんとうに、耳にキスされたような気がした。


 夜が明けて、お正月の空は、晴れたり曇ったりを繰り返してちっとも

落ちつかない。

 

 日枝神社はこのあたりの旧式な家の氏神様で、

ミズエの家も氏子だかなんだかで関係があるって言っていた。

 

 ボクの住んでいる光が丘は、新しく開かれた住宅地だから、そこからは少し

離れていて、冬でも緑の濃い里山を背景にして東向きに立っている。

 

 ボクは時間に遅れるのが嫌い。

遅れると捜さないといけない。早く来て捜してもらう方が気が楽なんだ。

 

「はやいねーケイ君。そんなにわたしに会いたかった?」

「調子に乗りすぎ。」

あー、昨日の夜の事、思い出しちゃった。うー顔が赤くなる。

 

ミズエが笑ってる。

 

「人多いねー。」

 

 着物姿の人も結構いるな。家族づれが多いし。

 

 蒲生市はあまり大きくなくて、ボクが引っ越してきたなかでも

小さい方だと思う。

 一体どこからこんなに人が集まってくるんだろう。そういえば

夏の夜店のときも、人が多くてびっくりしたっけ。

 

「あ、来た来た。」

 

 タケダと、遠山カンナが何か話ながら歩いてくる。二人とも背が高いから

中学生ぐらいに見えるな。

ちょっとかっこいいぞ。

 

「いよー、あけおめ。」

「あけおめー。」

「ケイ、久しぶりー。ちょっとでかくなったんじゃない。」

「成長期だからね。」

 

 カンナとは、学校ですれ違う事はあっても、クラスが別れてからは

こんなふうに学校の外で会うのは久しぶりだ。

 

 ボクたち四人は、ボクが転校してきたときの同級生で、クラスの中で

ぼーっと外ばっかり見てたボクを、世話焼きのミズエがタケダに

“アノコ何とかしなよ”って言ってくれて、兄貴肌のタケダが、

“よーし、今日からケイとオレはダチだからな、サッカーしようぜ”って

誘ってくれた。

 

 カンナはそのころからタケダに気があるみたいで、

ちょうど人数がいいからって、ボクたち四人はクラスでも、

学校の外でもよく一緒に遊んだ。

 

「ミズエ泣かしちゃだめだぞ。うちのクラスでも噂聞いたよ。

上叢さんと付き合ってるって。」

オンナはすぐそういうこというからな。

 

「付き合ってないよ。」

 

「アレー、その手袋おそろい?」

ホントだ!ミズエめざといな。

 

「へっへー、無理矢理させちゃったの。」

カンナ嬉しそう。

 

「オレはいやだっ、つったんだけど。」

それでずーっとポケットに手を入れてんだ。

 

「わー、ラブラブだー。でもいいもんねー、ケイとわたしも昨日の夜は

 ラブラブだったんだもーん。」

「昨日の夜ー!」

タケダ声でかいよ。

 

「あ、じゃやっぱり、あのJuneのリクエストのM・Oって?」

「わたしでーす。」

 

「ミズエやったねー。アタシあれ聞いてて、絶対ミズエだって思って、

 カンドウして涙出てきちゃった。ケイも偉かったね。

 さっきの取り消すよー。」

「ケイ、なに真っ赤になってんだよ。」

タケダのばか・・・笑うな。

 

「タケダなんてさ、さっきその話したら、オレしらねー、“お笑い年越しバトル”

 みてゲハゲハ笑ってたからって言うんだよ。

 あーあ、アタシもそういうロマンティックな夜を過ごしてみたいなー。」

「タケダとだったら一生無理だよ。」

 

「あーもう、とっとと賽銭投げに行こうぜ。」

「ちょっとー、まってよタケダー。」

 

なんだかんだ言って、仲いいんだあの二人。



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