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三年と六ヶ月前

 年明けの初雪以来何度か雪の日があって、最初の頃は校庭で雪合戦

なんかをしたりもしたし、もちろん“雪だるま”も作ったけど、

もう雪も見飽きた。

飽きっぽいのは子供の得意技。

 

髪を短くした上叢は、以前よりも雰囲気が明るくなった。

見た目だけじゃなくてね。

 

「あー、むかつく。」
朝からなんだよそれ。

「また、母さんと喧嘩しちゃった。」
「何が原因?」

どうせ、どうでもいい、つまんないことだろう。

 

「これ。」 

ん、指がどうした?

ぼくは不審な表情(のつもり)で上叢を見た。

 

「えー、わかんない?母さんたら一瞬で目がつり上がったのに。」

 

ボクはさらに近付いてみた。

 

指・・・じゃなくて、爪。

マニキュア?

ウソだろ、あの上叢千冬が。

ミズエやカンナならやってそうだけど。

 

「マジ・・・ですか?」
「試しにやってみたの、そしたら誰かさんに見せるまでは、落とすのが惜しく

 なっちゃって、そのまま寝て、朝にはすっかり忘れてたの。

 で、お母さんに見つかって、朝から大げんか。」

 

あ、おばあさんおはようございマース。雪なのに犬のお散歩大変ですねー。

 

「マニキュアなんてどうしたの。」
「雑誌の付録についてくるのよ。“ぴあにっしも”って知ってるかなあ、

 女の子向けのマンガ雑誌なんだけどね。」
「千冬、マンガなんか読んだっけ。活字専門だと思ってたよ。」

 

千冬の眉間に皺なんて記憶にないぞ。

 

「実は初めて買ったんだー。それが原因でも、お母さんと大げんか。

 こんな破廉恥なもの読んじゃいけませんだって。小説の方がよっぽどひどい

 こと書いてると思うけどな。面白いね、マンガって。」

 

「貸そうか?」
「景クン、マンガ持ってるの。」


「ボクのは男の子向けだけど、実は母さんが隠し持ってる古い文庫本が、

 すごい面白いんだよ。

 “ポーの一族”とか“トーマの心臓”とか。こんど持ってくるよ。」

 

「で、また母さんと戦争なんだな、これが。今朝のはちょっと、

 まずかったなあ。

 ね、見た?ちゃんと目に焼き付けた?わたしのマニキュア爪。」 

 

ハイ、見ましたけど。

 

「よし、学校ではみんなには見つからないようにして、今日中におとし

 ちゃおーっと。」
「ボクに見せるために?」
「他に誰がいるの?こんなのみんなにばれたら、わたしのイメージが変わっ

 ちゃうじゃない。

 白百合のように清楚な上叢千冬が、実はお水系のおネエでしたなんて、

 洒落にならないでしょ。」 

 

千冬って、こんなキャラだったっけ。なんか調子狂うな、年明け以来。

 

「あれ、校長先生マスクしてる。」
「ホントだ風邪かなあ。先生おはようございます。」

 

“おはよう”と言った先生の声がマスクでくぐもって“ぼはよう”って聞こえた。

くっくっ。

 

 ボクと千冬が教室につくのはいつも早いほうだけど、にしても今日は集まり

が悪いなあ。それがもうすぐチャイムが鳴ろうっていう、今になっても来て

ないのが多い。

 

みんな、休みか?

 

「きりつ、れい。」
「えー、今日は、斉藤、小田、小島、川角、根岸、町田がインフルエンザで

 休みだ。」

 

えーー、って騒ぐなよいちいち。うるさい。

 

「なので、今日から三日間学級閉鎖とする。みんな直ぐに下校の用意、

 掃除もしなくていい。

 家に帰れないものがいたら、学校で自習してていいぞ。

 ただし先生に申し出ること、いいな。

 学級閉鎖は休みじゃないから、出歩くんじゃないぞ。わかったか。」

 

「先生、塾は行ってもいいんですか?」

それ普通塾に聞くことだろう。

 

「熱がなければ構わんが、潜伏期間かも知れないから、

 用心して休めるんなら休んだ方がいいな。

 他に何か質問は?」

 

“ありませーん・・・”てホントに素直な返事で、・・・帰りたそうだな。

みんな。

 

「他のクラスは授業をしているから、大人しく帰るんだぞ。

 窓から手を振ったり絶対しないように。わかったな。」

 

ということは、毎年しているヤツがいると言うことだ。

バカは、毎年再生産される。

 

 家には帰れるけど・・・と、昼メシ調達しないと。

学校で自習してたら給食、食べれるのかな?

でもそのために残って自習かあ。

問題集とか教科書ガイドなんか持ってきてないぞ。

どうすればいいんだ。

 

寝るか!いっそのこと。

 

「一緒に帰ろ、景クン。」

 千冬ぅ、何で指ぱたぱたしてんの身体の陰で・・ピアノ?

・・・ああ、あれか。

そっか、早く帰らないとやばいんだ。授業もなくなったし。

 

「オッケー。でも、先に行って下で待ってて。二組の前通るのやばいから。」
「ああーん、そうね、この根性無し。」

 

いや、根性無しでいいですからお嬢さん。先に行ってて下さい。

 

 で、ボクの予想はもろに当たって、二組の前を通るとき中でミズエが

ボクに向かって手を振った。

 ああ確かに、二組の連中には手を振るなって先生は仰いませんでしたでしょうよ。

普通やるかな、授業中に。しかも嬉しそう。

 

今夜、絶対ケイタイかかってくる。

 

 こんな時間帯に、しかも平日に商店街を歩くのって変な気分。

 通りすがりのおばさんが、この子達なにやってるのって目で・・・、

にらむのやめてください。

怖いですから。

 

「そうだ、マンガもってく、それとも読んでく?」

千冬が、意外そうな顔でボクを見ている。

 

「それって、景クンのうちに来ないかって誘ってるの。」

うーん。 

 

「そっか。間接的にはそうなるね。紅茶ぐらいなら出せるけど。

 お菓子がいるんだったら、買って帰ろうか。

 先生は出歩くなっていってたけど、帰り道が商店街だったら、

 別にいいだろう。」

「ドキドキしたわたしがバカだった。」 

 

何いってんだか。

 

「じゃあ、午前中だけお邪魔しようかな、わたしも母さんをこれ以上刺激する

 のはどうかと思うし、学級閉鎖になったのが知れた時、あんまり遅いと

 何言われるか大体予想がつくから。」

 

こういうところ、ミズエとは違うな、千冬は。


 エレベーターが降りてくるまでの時間、ちょっと手持ち無沙汰で、

二人とも無言で、顔を見合わせたら、千冬が見たことのない大人びた

表情でくすっと笑った。

 

 そのとき初めてボクは大変なことをしようとしているんじゃないかと

思い当たり、ひょっとして顔見知りのオバサンがエレベーターを下りて

きたらどうしようかと冷や冷やした。

 

 でも、がーっと開いた箱の中は、あっけないぐらい空っぽだった。

 

 扉が全開になって、隅まで見通せるようになってやっと安心した。

中の仕掛けを忘れたびっくり箱のような空虚な箱。

隅っこに砂とゴミが少したまっている。いつもは気にならないのに。

 

 12階のボタンを押して、閉めるのボタンを押して、マンションの

エレベーターの開閉ってやたら間が空くんだよね。

 鍵は修学旅行で買ったご当地もののキャラクターのキーホルダーが

ついていて、いつもカバンのポケットの底に入れている。

ぜんぜんかっこよくない。今度なんかと代えようっと。

 

 今日はかっこわるいから“ただいま”って言わない。

誰もいない家に、ただいまなんて言ってると知れたら・・・。

 

・・・ウソだろ! 誰かいる。

 

 母さんと、男物の靴が一つ。うちに父さんがいるはずが無いし、

父さんのはき潰し方とも違う。

 

 何となくわかる。

 

 多分、“そういう”ことなんだろう。いくらボクが子供だからって、

それぐらいは解る。

 その空気の中に、もう一歩も入り込めなくて、あとは出来るだけ

音がしないように、ドアを閉めた。

 

子供に出来るのって、それぐらいのもんだよ・・・。

 

「ごめん、マンガ、またにしてくれるかな。誰かお客さんが

いるみたいなんだ。」

 

最悪だ、千冬に見られるなんて。

 

 中は薄暗かったけど、ドアから差し込んだ明かりのせいで、

丁度靴が置いてある辺りまでがはっきりと照らされて、この家に

あるはずの無い男ものの靴が惨めに置いてあったんだ。

 

千冬は固い表情で頷いた。

 廊下を無言で戻って、さっき上がってきたばかりのエレベーターに

乗り込んで、一階のボタンを押した。

 

「ごめんな、せっかく来てもらったのに。」

“ううん”という感じで千冬が首を振った。

 

「じゃあ。」といって、ボクがその場から離れようとしたら、

千冬がボクのコートのひじの部分をつまんで「どこに行くの?」

って心配げに聞いた。

 

 ボクはいらだって「分らないけど、一人になりたいんだ。」と

捨て鉢な答え方をして、ひじを振り払って歩き出した。


小学生なんて最低だ。何処へいくって、結局、公園にでも行くしかない。

 

でもボクは、途中で道を折れて、加茂川の河川敷に行くことにした。

 冬は草も茶色になってしまい、今のボクの気持ちにぴったりだ。

人影どころか鳥すらいない。

 

そして、振り向くと千冬が後を付いてきていた。

 

“ひとりになりたいんだ”ってもう一度いおうとした。

多分今の僕って、、、相当嫌な顔してる。

 

「だめ!一人は絶対ダメ。ダメだからね。」

 

 その言い方が余りにも厳しかったから、ボクは何も言い返さずに

また歩き始めるしかなかった。

 言い争いになったら、とんでもないことをいってしまいそうな気が

したからだ。多分、今日は自分を抑制できない。

 

千冬がまたコートの肘をつまんだ。

 

「川だね。」
「加茂川っていうんだ。一人でよく歩くんだよ。“寂しい、楽しい、

悲しい”関係なく。一人になりたいとき、ここを良く歩くんだ。」

 

 こんな状態のときでも、ボクは誰かがいると、話をしなくちゃと

思ってしまう。

なんだか情けなくなってきちゃった。

 

「景くん専用散歩道か。ご招待ありがとうございます。」

まったく、とぼけちゃって。無理やりついてきたんじゃないか。

 

「ね、お天気もいいし、あそこに座ろうよ。」

 

 そこはススキ野原が途切れて、割と背の低い草がぎっしりと

茂っているあたりで、寝転んで空を見上げるにもちょうどいい感じ。

 

「寒いからくっ付いちゃいまーす。」

とわざわざ口に出して、千冬はボクにもたれかかった。

 

 川の流れる音にまざって、飛行機のエンジンの音が聞こえた。

空のとても高いところを、四本の筋を引いて銀色の機体が飛んでいく。

 

 ポケットの中でケイタイが震えた。ボクはゆっくりと取り出し、

母さんからのメールをみた。

 

「“ごめんなさい”・・・“もうしないから”・・・なんだってんだよ。」

経験したことの無いような憎しみが膨らんできた。

 

「謝るより、気付かない振りしてくれれば良かったんだ!

 悪いことしたって言うより、嘘でいいからなんでもないのよって、

言ってくれればいいのに!」

 

 ボクの心が、また真っ黒に塗りつぶされていく。真っ黒な壁から、

どろどろに融けたタールが流れ込んでくる。足をとられて動けない。

 

「子供に謝るなよ!謝られたってどうしようもないじゃないか!

謝ったら、自分だけは赦されて気がすむのかよ・・・。」

 

黒い、黒い、ぬぐってもぬぐっても、ぬぐっても、黒い!

 

「くそー!」

 怒りに任せて、ケイタイを力いっぱい投げようとした右手が、

なにか柔らかいものに当たった。

みると、千冬が、胸を押さえてしゃがみこんでいた。

 

「千冬!」

千冬は顔をしかめながら、苦しそうに「ダメ!」といった。

 

「千冬、大丈夫か!まさか千冬に当たるなんて・・・。」

“違う”と、小さな声で言った。まだ苦しそうだ。

 

ボクの右手を、千冬が両手で包んだ。

 

「ケイクン、このケイタイをステテハダメダヨ。」

 

けほっ・・・

 

「コノ中ニハ、メールやシャシンやケイクンノダイジナオモイデガ、

 イッパイハイッテイルンデショウ・・・。」

 

「ソレヲステルッテイウコトハ、思イ出ヲミンナステテシマウッテ

 イウコトダヨ。」

 

「イツカ、ナニモオモイダセナクナルッテコトダヨ。」

 

けほ、けほっ・・・。

 

「ソレデモイイノ!」

 

涙がいっぱい出た。

千冬の小さな手を握り締めて、ボクはみっともなく声を出して泣いた。

 

 

 

「小さい頃、ボクは泣き虫で、みんなとさよならする度にいつも

 わんわん泣いてたんだ。

 でも、それじゃダメだと思って。泣かないようにしてたら、いつのまにか、

 なにがあっても泣くって事はなくなったんだ。だから、何年ぶりかな、

 泣いちゃったの。」

 

おまけに、千冬にハンカチで涙を拭かれちゃって、すっごくかっこ悪い。

 

「わたし、本当は格好よく手で止めようと思ったの。でもあんまり早くて、

 すかってすり抜けて、胸に当たっちゃって。」

 

「痛いだろう、本当にごめん。」

「痛くないことはないけど、大丈夫だよ。・・・ね、わたしが、

 一緒で良かったでしょ。」

 

「・・・うん。」


 川の流れを見ていて思った。

 

ボクにはいま二つの川が注ぎ込んでいる。

一つは黒い汚れた憎しみの流れ。

もう一つは、暖かく甘くて清い流れ。

その二つがボクの中で、ぐるぐると混ざり合っている。

 

千冬がボクを抱きかかえるように背中におぶさった。

 

「景くんはね、もっと人に甘えることを覚えた方がいいと思うよ。

 人に甘えないから、甘えたい人の気持ちが分らないってこと、

 あるとおもうな。」


「かあさんのこと?」
「あくまで一般的な話として、だよ。」

 

上手だな、千冬は・・・。

 

「わたしもね、甘えるの下手だから、そういうの分っちゃう。

 でも、最近はちょっと違うんだ。

 その人は、素直じゃなくて、意地っ張りで、弱みを見せるのがだいっ

 嫌いな人なの。

 でも、少しも揺るがないから、傍にいると安心していられるの。

 彼を見てると、自分の立ち位置が間違ってないかわかるから、

 色々自分を試してみたり、そんなことが出来るの。

 もし間違ってたらそこに戻ればいいから。

 そうやって、その人に甘えてるの。」

 

「すごいな・・・、千冬にそこまで言われる人って。」

 

「お、重いよ。千冬、重い。」

「こら、失礼だぞ。女の子に向かって重いなんて。

 それに、そこまで鈍感なのも失礼だぞ。」

 

「そんな。え、そういうことなの。

 でも、だって千冬が言ってるのを聞いてると、ボクとはぜんぜん

 違う人だよ。

 ・・・まあ意地っ張りなのはそうかも知れないけど。」
「わたしがそういってるんだから、それでいいの。」

 

人から見ると、そんなふうに見えたりするんだろうか。
どっちかって言うと、ありえないよ。

 

千冬がいうように、母さんは誰かに甘えたかったんだろうか。

ボクには、そんな母さんは想像がつかない。

いつまでたっても子供みたいで、どっちかって言うと自分中心な母さん。

父さんも、向こうで同じようなことをしているんだろうか。

 

 何にせよ、ボクの家は、家族が終わる日が近付いているという

ことらしい。

 ボクは一人で放り出されて、いろんなことを自分でやって

いかないと行けないんだろう。

 

早く大人にならなくっちゃいけない。誰も守ってはくれない。

でも、甘えるって気持ち、やっぱりボクには良く判らない。

 

「はぁーーー。」
「溜息なんかついて・・・。やっぱり、わたしじゃダメなのかなあ。」

「そういうことじゃないんだ。付いてくるなっていったけど、

 さっき振り向いたとき、千冬がいてくれて、本当はホッと

 したんだと思う。

 “意地っ張り”だからそういえなかっただけだよ、きっと。

 いま悩んでるのは、まだこれから母さんとどう付き合えばいいのか、

 良く判らないってことで。」


「難問だね。」
「うん。それに誰かが答えを持ってるわけじゃない。自分で整理しないと

 いけないんだ。」
「ほら、またそうやって一人で突っ張ってる。だめだぞ、こらこら。」

 

 千冬は何度も後ろから体重をかけ、ボクはそのたびに、なんだか、

だっこしてあやされている子供のような気がした。


 しばらくして、景クンは“もうお昼だから、帰った方がいい”

と言った。

 こんな時でも、わたしに気を遣ってしまう景クンが、そして

気を遣わせてしまう私が哀しかった。

 

 私は、景クンが家に帰るまで、どうしてもついていくと言って

譲らなかった。

放っておけば、彼は野宿でもしかねなかったからだ。

友達の家に転がり込んだりなど、しないんだろうなあ。

 

 彼のマンションに行き、同じようにエレベーターに乗り、同じように

12階で降りて、彼は少し躊躇したがドアを開け、ホッとした顔で

家に入った。

私はそこまで見届けて、ようやく安心した。

 

靴はもう無かったんだろう。

 

 夜になって、お風呂上がりに鏡を見ると、彼が胸につけた痛みは

青黒いアザになっていた。

私は一度それを手で隠し、そして手をどけてみる。

 

アザのある私と、無い私。無い私のなんて物足りないことか。

 

 繊細で、感じやすくて、手で触れたものを全て優しさに変えて

しまおうとして、傷つくことを恐れない。

みんなが好きなのに、自分はそれに値しない人間だと思っている。

 

このアザは彼の心の痛みだ。

 

私はこの印が、一生残ればいいのにと本気で思った。

 

人よりも長い人生を生きなければいけない私が、出会った純粋な心。

 

 いつか想い出の中で、彼は少しずつ姿を変えて、美しすぎる

イコンになるかも知れないけれど、私はこの蒼い影に触れることで、

時を越えて彼と巡り会うことが出来る。

 

 彼のマンションで、同じようにエレベーターに乗り、同じように

12階で降りた。

でも、その中で起きたことは、その前とは違う。

私は少し背伸びをして、彼の冷たい頬にくちびるをつけた。

 

 驚いて振り向いた彼に、「おまじない。」と言った私の顔は、

少女らしくはにかんでいただろうか。

 

これから一人になる彼の中に、もう少し暖かいものを残したかった。

これが最後の機会かも知れないと思った。

 

十二才には早くても、十四才ならそれほどでもない。

 

私はその時、本当の年齢に戻っていた。

初めての時だから、彼にウソをつきたくなかった。

 

私はいま十四才。

そして人知れず、人よりも長い人生を生きなければならない。

 

 最後に、パジャマのボタンを首元まできっちりと留めて、

鏡の照明を消した。