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正体

 私は痛みである

 痛みが私の中に横たわり

 私は痛みとなって道端に転がっている

 

 私は死である

 死が私を包み込み

 私は死となって海に漂っている

 

 私は闇である

 闇が私を黒く染め

 私は闇となって無に帰する


神への冒涜詩

 神は何故  崇拝される?

 神は全知全能か?

 

 イヴを創り  アダムを生み出した  神よ

 蛇に欺かれ  知恵を付けた二人を  凍る大地へ貶めた  神よ

 

 寂しさ 怒りは 我らと同じ

 蛇の唆しを防げなかった  貴方に  どんな力があると?

 

 人間は何故  神を崇拝する?

 人間は無力なのか?

 

 全ての幸福が神によって与えられるなら  

 この世の災禍もまた神によるもの

 

 神など人間が作り出したまやかしに過ぎぬ

 

 神を信ずるというのなら

 まずは  己を信じよ

 

 そうでなければ始まらぬ

 


終焉

 選ばれし者よ  哀れなる仔羊よ

 あの濁流の中に  その身を投じよう  

 

 そしてその躯朽ち果てる刻

 あの煩雑な世界の代わりに  断末魔の叫びをあげよう  

 

 我らの喉が潰れるまで  声の限り

 

 あの盲目の世界の代わりに  

 そこに巣食うものの成れの果て  見続けよう

 

 我らの眼  腐り落ちるまで

 

 この世界で

 捧げられる生贄として  犠牲の役を全うすることにしよう


魔術師の夜

 乙女の柔肌のように煌めき吸い付く  月光が照らす場所

 そこで私は  術を詠う 粉を振るう

 

 蒼の光と  濃藍の闇に彩られた  静寂

 騒がしき太陽が司る時間は過ぎ  在るのはただ  静寂

 

 月光石も仄かに輝けば

 もう  完成する

 

 我が手より  生まれし精霊が

 今  薄青の鱗粉を花弁のごとく舞わせ

 

 月へ向かう

 

 伝えてくれ

 

 私はまだそちらへ赴くことは  叶わぬと

 


奴隷讃美歌

 さあ  働け  奴隷よ

 鞭の風切り音  肉打つものに変わる前に

 

 主の罵声と怒声  入り混じる仲間の悲鳴に急かされて

 夜も明けぬうちから  重労働

 

 夜が更けるまで働かねば  役立たず

 働け  働け  奴隷よ

 

 疲労が病魔を伴い  その身を蝕むまで

 そのか細い腕を精一杯  振るい

 

 空腹に耐え 寒く冷たい寝床で

 その瞳から  苦境に涙しても

 

 それに慣れるな

 いつまでも  その瞳  輝かせてゆけ



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