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夏到来です。

畑には、まあるくてつやつやとした真っ赤なトマトが枝いっぱいになっています。

中には、まださくらんぼくらい小さいトマトや、大きくてうすだいだい色のトマトもあります。

                             

まだ、ちっぽけでみどりのトマトのともちゃん。

「わたしも早く大きくてまんまるでつやつやした真っ赤なトマトになりたいな。」

と、枝にゆらゆらゆられながらつぶやいています。

 

 

 

 

 

おひさまが少し西に傾いたころ、灰色の雲とともに、夕立がやってきました。

野菜たちの体を大きくゆさぶる強風と、打ち付けるような大粒の雨が畑を襲います。

こんな嵐はこの夏初めてです。

ともちゃんは目をぎゅっとつぶり、枝にしがみついているのがやっとでした。

 

 


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次の日の朝。

昨日の嵐はすっかりはれて、雲ひとつない青空です。

ともちゃんは、いつもの「チュン、チュン、チュチュチュン」という小鳥たちの歌声で目を覚ましました。

ところがどうでしょう。

ともちゃんはこげちゃ色の土の上にぺたっとすわっていたのです。

昨日の嵐で知らないうちに枝から落ちてしまったのです。

「どうしよう。もう大きくてまんまるでつやつやした真っ赤なトマトになれない。」

ともちゃんは、泣き出してしまいました。                                                                               

 

そこへ、テントウムシが通りかかりました。

「ねえねえ、みどりのとまとちゃん。枝から落ちて悲しいのは分かるけど、そんなに泣いていたら、しわくちゃなトマトになっちゃうわよ。」

「そっか。」

はっとしたともちゃんは、ぴたっと泣くのをやめました。

 


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しばらくして、イモムシが通りかかりました。

「ねえねえ、みどりのとまとちゃん。枝から落ちて困っているのは分かるけど、こんなところに一日中じっとすわっていたら、腐ったトマトになっちゃうよ。」

「そっか。」

ともちゃんは、すくっと立ち上がりました。

でも枝から落ちてしまったともちゃんは、いったい何をしたらいいのかわからず、なつかしいトマトの茎によりかかり、土をけっているだけでした。

 

 

 

そこへ、アリが通りかかりました。

「ねえねえ、みどりのとまとちゃん。トマトの枝が懐かしいのもわかるけど、そこにいつまでいても、大きくも赤くもなれずに、ひからびたトマトになっちゃうよ。」

「そっか。」

 

 

 

ともちゃんは、(大きくてまんまるでつやつやした真っ赤なトマトになる方法を見つけなきゃ)と思い、そろそろと歩き始めました。

初めて歩く土の上は、ちょっと冷たくて、湿っぽくて変な感じがしました。

でも、自分の足で歩き始めたともちゃんは、前より少し大きくなってみえました。

 


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ともちゃんは、とぼとぼと畑のあぜ道を歩いていきました。

いつも農家の人が通る道です。

そこへ、カメが通りかかりました。

「ねえねえ、みどりのとまとちゃん。この道はかたくて広くて歩きやすいけどね、人が通ったり、犬がかけまわったり、危険がいっぱいさ。こんなところを歩いていたら、つぶれたトマトになっちゃうよ。自分の行く道は自分で歩いて作っていくものさ。」

「そっか。」

ともちゃんは、ちょっと考えてから、あぜ道から外れたぼこぼこの土の上を歩き始めました。足元を良く確かめながら、ぬかるみにはまらないよう、穴におちないよう、石につまずかないようにしっかり歩いてきました。

ちょっと後ろをみると、カメの言ったとおり、ともちゃんが歩いてきたところに小さな足あとがてんてんとついた、小道ができています。

ともちゃんは、それを見たらふと力がわいてきて、体が少しずっしり重く、強くなっていくような気がしました。

ともちゃんは、また前を向いて歩き始めました。

 

そこへ、年をとったネコが通りかかりました。

「おや、まあ、みどりのとまとちゃん。あなたのようにころころ丸くてはじけそうなみどりのトマトははじめてみたわ。みどりのトマトもかわいいものねえ。」

それを聞いたともちゃんは、ちょっと照れて、ポッとほっぺたが赤くなりました。

そのとき、体がうっすらとオレンジ色にかわったのを、ともちゃんはちっとも気づきませんでした。

 


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しばらくいくと、ウサギがピョンピョンと跳ねながらやってきました

「ねえねえ、そこのとまとちゃん。何でそんなに難しい顔をしてるんだい。」

「私、大きくてまんまるでつやつやした真っ赤なトマトになりたいの。」

「そんなに難しい顔をしていたら、赤くなるものも赤くらないよ。いつでも楽しいことを考えてなきゃ。」

ウサギは、ともちゃんの目の前で、ほらね、というように、青い空にすいこまれそうなくらい高いジャンプを一つして、行ってしまいました。

ともちゃんはそのこっけいなジャンプにクスッと笑うと、ウサギの言ったとおり楽しいことを考え始めました。

 

太っちょで真っ赤なパパとのにらめっこ。

細長でつやつやなママとのひなたぼっこ。

まだ小さくてみどりのちびトマトたちとの、枝のブランコ。

 

そんなことを思い浮かべているうちにしだいに心がうきうきし、ともちゃんの顔に自然と笑みがこぼれてきました。

ともちゃんは、自分の体の内側からポカポカ温かくなっていくのを感じました。

 



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