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毎日とうさん1

 父一匹、赤子を抱いて、平日昼過ぎのバスに乗る。

 

 かならずおばちゃん、おばあちゃんの類が「あら、パパに抱っこされていいわねえ」と赤子の息子に時候の挨拶をした後、「ママはどうしたのかな?」との決め台詞を放ちながら、キョロキョロといるはずもないママの姿を俺の背に探す。

 男一人で赤ん坊を連れているなんて、誘拐犯か超ロリコン男しか思いつかないらしい。

 

 毎度毎度、おばさんデカの尋問に答えるのが面倒臭いので、「ママはこの子を産んだ時に…」、「ママは男を作って逃げました」、「いいえ、私がママですけど。クリちゃん見せましょうか?」とTPOに応じて、正解を使い分けている。

 

 豆クリ知識。ベビーカーを押しながら、突然猛ダッシュするとみんなが振り返る。気分は即席スターだが、きっと誘拐したての赤ちゃんを連れて逃げ出したとでも思うのだろう。

 その際、赤ん坊が泣いていたら、間違いなく通報ものだ。


 この前、真夜中になかなか息子が寝ないので、ゆらゆら揺れるベビーカーなら寝つくかと夜散歩にしけこんだら、新手の変質者と誤解されたよ。


毎日とうさん2

 ズラリと並んだ、赤ちゃん休憩室のベビーベット。

 

 隣のベビーベットあたりに、ちょうど同時にオムツに手をかけたライバルがいたならば、オムツ早替え大会、よ~い、ドン!

 

 なにごともスタートダッシュが肝要である。

 ライバルは大抵かあさんで、競争相手が男と見て、みくびっている。

 その証拠に、お手並み拝見とばかりに、とりあえず横目で俺の手際を見ながら、のんびりと自分の子供のオムツをずりさげている。

 

 余裕シャクシャクのはずの視界の端に、信じられない光景が飛び込んでくる。

 オムツの中身、大小も確かめず、ズボン、オムツを合わせて一気に脱がし終えた男の姿が。

 

 別に、大小を確かめていないわけではない。

 俺レベルのとうさんになると自慢じゃないが、オムツを脱がせる前に、今回は大か小か一瞬にして見分けられるのだ。

 

 抱っこしてベビーベットにゆっくり寝かす際、ほんのりウンコの香りがしたら、おおむね大だ。この場合、イッキ脱がしは自粛する。

 もちろんノーウンコと判断し、イッキイッキで、大惨事になることもあるがな。

 

 オナラだけのとき、一番判断が難しいが、男には負けると分かっていてもやらなきゃいけないときがあるんだ。

 お先にイカせて貰います。

 このオムツ勝負のイッキ脱がしの結果は幸い小だった。

 横目でライバルかあさんを見やる。慌てて俺の真似をして、ズボンとオムツを同時に脱がそうとし、こんがらがっている。

 素人さんがマネするとヤケドするぜ。

 

 勝利を確信し、余裕を見せつけるため、あえて新しいオムツはまだはかせず、ウエットティッシュを取り出して、息子のムスコちゃんと金玉ちゃんをキレイキレイにふきふき。

 

 元ライバルかあさんはというと、出遅れた分を取り返そうと更に焦って、おでかけセットのカバンからオムツをいまだに探している始末。

 フッ、俺にオムツ勝負を挑むなんて100年早いわ、出直してこいや!

 

 そんじょそこらの一山いくらのかあさん連中と、俺は背負っているもんが違うんだ。

 俺は常に未来のとうさんたちを背負いながらも、男の子育ての代表者として、日々子育てを楽しんでいる。

 息子がとうさんになる未来まで、「男だからオムツ替えすらノロノロ」なんて舐められ続けちゃいけない。

 

 圧倒的女性優位社会のクソぬるま湯で、のほほんとオムツ替えをしているかあさん連中には分かるまい。

 男がオムツ一枚を替えるのに、どれほどの苦労に苦労を重ねているのか。

 

 例えば、昨今のファミレスにもオムツ替えシートくらいはある。しかし、まだまだ大半は女子トイレの中のみである。

 たまに男女共用のトイレもあり、そこについている場合もあるが、男子トイレのみにオムツ替えシートがついていることはない。

 

 ちょっと気が効く店員がいると、女子トイレを一旦封鎖し、お情けでオムツ替えシートを使わせてくれる。

 でも大抵は、そんな情けは無用とばかりゆえ、仕方なくコッソリと席でオムツを替えていると「ココでオムツを替えないでください」と女店員が嬉々としてやってくる。

 

「あからさまな男女差別で、この店には女子トイレにしかオムツ替えシートがないので、ココで替えざるを得ない」と口答えしようものなら、待ってましたとばかりに「じゃあ、私が替えましょうか」と俺の息子のムスコちゃんを狙ったロリコン発言連発!「お前みたいなフケた義理娘はいらん!」

 

 そんなこんなのやり取りをしている間に、てきぱきとオムツ替えは済ませて、「今度から気をつけま~す」と大人の対応で腐れ店とはオサラバ。

 オムツは机の下にポイッ!

 

 ファミレスですらこうなのだから、街中ではもっと困る。

 やりたがりのビンボー高校生カップルが街中の無料ハメ場所を探し求めるように、俺はお手製の赤ちゃん休憩室マップ片手に、なるべく目立たずオムツを替えられる新規の場所を延々と探すハメになる。

 

 そうそう、ハメで思い出したがこの前、某ヨドバシカメラの赤ちゃん休憩室でハメてんじゃねえよ!

 使用中の札のついた赤ちゃん休憩室の中から、明らかにオムツ替え中というよりは、オムツプレイ中っぽい怪しげな声がするので、執拗にドンドンと扉を叩き続けたら、上気した顔の高校生カップルがそそくさと!

 

 んまあ、いやらし! 結構かわいいじゃない。混ぜて!

 てか、息子のウンコオムツがすぐ替えられなくて、ちょっと固まっただろう。だから責任取って、スカトロ3P、いや息子も混ぜてのスカトロ4Pをっ!

 でも、息子の初体験がスカトロ4Pだと、なんか負けた気がする、初体験はソープ2Pだった複雑な父心。


毎日とうさん3

 とうさんのパイオツは軽く100センチ越えを誇るが、父乳は出ない。

 

 なので、おでかけリュックに、煮沸消毒済みの哺乳瓶数本と、あらかじめ小分けにしておいた粉ミルクをいくつか、水筒に入れた熱湯1リットルを大事に入れて持ち運んでいる。

 

 さて先日のこと、某デパートの赤ちゃん休憩室でカツアゲをされた。

 とうさんが颯爽とミルクを作っていると、おばあちゃんと娘と孫の3人組が現れ、おばあちゃんがにじり寄ってきた。

 

「おいおい、惚れるなよ」と念じながら、粉ミルクに注いだお湯がちょっきり240ミリになるよう慎重に水筒のお湯を注ぐ。

 おばあちゃんから第一声が飛ぶ、「終わったら、お湯を分けてください」と。

 

 一瞬なんのことか分からず、「このババアは遠回しにセックスしてください」と懇願しているのかといぶかしむ。

「だから、お湯です、お湯」

 でもどうやら、ストレートにお湯をカツアゲしているだけらしい。

 

 おいおい、セックスならまだしも、なんでこの俺様が息子のために、わざわざお家でお湯を沸かして、水筒に入れ、散々重い思いをしながら運んできた貴重なお湯を、しかもこの後すぐ俺と息子は帰宅するわけでもなく、新たなお湯を補給できるあてもない状態、つまりうちの子がまだミルクを飲むかも知れないのに、見ず知らずの欲求不満なくせにお湯一つ満足に用意してきてねえクソババアに恵んでやらなければいけないのか。

 

 そんな気持ちをグッと押さえて、

「じゃあ、100万でいいよ」

 と水商売を始めたら、「じゃあ、結構です」ってプリプリ怒って立ち去る。

 その背に「まず最初は10倍くらいふっかけるのが水商売のイロハなんだから、まずは値切れよ、このド淫乱ババアがっ!」とお別れのご挨拶。

 

 ったく、最初から男だと思って舐められているので、子供を守るためにも、その手の輩には遠慮せずにガツンとやってやらなきゃダメである。

 

 最後にホロリとする話をば。

 ある日の赤ちゃん休憩室。目の前で携帯粉ミルクをぶちまけた美人ヤンママに、いつも予備の予備の予備で持ち歩いている携帯ミルクを「もしよかったらコレを」と差し出したこともある。

 もちろん手渡しがけの駄賃で手を握った。後、美人ヤンママ、ノーブラだったよ。


毎日とうさん4

 うちの息子はイケメンだ、道行く人が思わず振り返るほどの。

 でもとうさんの顔をチラリと一瞥し、「ああ、いずれこうなっちゃうのか…」とちょっとガッカリした顔すんなよ、すれ違いザマに器用に、通行人1の分際で!

 

 いいか、よく聞け! 「この子も将来、このお父さんみたいに…」じゃなく、「このお父さんも昔、この子みたいだったのか…」と思えば、俺がちょっとうれしいじゃないか。

 

 まあ、確かに俺と息子は似ていない、今は。

 でも、クリソツだった時期もあるんだ、信じてくれ!

 

 かわいそうに十月十日も羊水なんかに浸かったせいで、パンパンにむくんだ顔でヒョッコリと汚穴から出てきた後の数時間は、とうさんとクリソツともっぱら噂になった。

 

 ハックション!

 またナースどもが俺の噂をしてやがるな。さ、思い出しオナ二ーでもするか。


毎日とうさん5

 とうさんちゅう生き物は、女にジロジロと視姦されるのも大事なお仕事だ。

 

 いまだに、歴史ある子連れ父なんかがそんなめずらしいのか、ファミレスで盗撮されたことすらある。

 きっと江戸時代の本家、子連れ狼も同じ悩みを抱えていたろう、「携帯撮影は勘弁して欲しいでちゅよねぇ~、大五郎ちゃん」、「ちゃ~ん」。

 

 ファミレスの隣の席にかあさん集団がいようものなら、遠慮なしに一部始終を覗き見される。

 当然、とうさんらしい珍プレイや空振り三振的子育て連発を期待されているのはヒシヒシと感じる。

 

 しかしこの俺様がそんなやっすいプレッシャーに負けるはずもなく、ファインプレイやスーパープレイ子育てを連発だ(プレイの詳細はまだ未定)。

 

 そして、かあさん集団に勝利の一瞥をくれてやる。

 たった一度や二度くらい穴っぽこ痛めたくらいでデカイ顔しやがって、どうせ散々出し入れして、元々ガバガバだったくせにって感じで。

 

 こういう態度に腹が立つらしい。かあさん集団ムッ。

 ふん、くやしかったら、チンコ立ててみろ、バ~カ~!

 使い古された女の子育ての猿真似なんてするもんか! 俺はまっさらな新品の男の子育てをやるんだい。

 子育て男が全員、てめえらの下請けだと思ったら、大きな間違いだ!

 

 どうやら心の声がさっきからダダ漏れだったみたいで、これみよがしに男に育てられた子供はいかにダメになるかの女に都合のいい想像話を語り出す。

 

 こういうとき、女ルールでは「ムキッ~、後で靴に画ビョウ入れてやる~」とか思うだけなのだろうが、俺には関係ねえ。

 

「おい、そこのクソババアども! とぼけんな、てめえらのことだ、時計回りでドブスと、もっとドブスと、正統派ドブスと、トップドブス。これみよがしにしょうもねえ負け惜しみ言いやがって。どうせ旦那にはもちろん、他の男にも構ってもらえず、長年欲求不満なんだろ、腐ったマンコの臭いがプンプンすんだよ、俺は今、ピザ食ってんだ!」くらいは軽く朝飯前のマシンガンボーイズトークを、かあさん集団が退散するまでしちゃうから、マジで。

 

 子供を連れているとキチガイと認識されずらいが、隠れ狂犬父に喧嘩を売る際はご注意を!



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