目次
はじめに
健康食品の基礎知識
プラセボ効果
インビトロとインビボ
好転反応
重症アレルギーには要注意
薬事法
メディアリテラシー
天然物信仰と食経験
過剰摂取
相互作用
フードファディズムに陥らないために
生活習慣病と食品の果たす役割
生活習慣病とは
脂質異常症とフレンチパラドックス
心筋梗塞の予防法
脳卒中
血栓予防と魚油の働き
サイレントキラー(高血圧)
高血圧の予防法①塩分制限と食物繊維
高血圧の予防法②血管収縮とギャバ
高血圧の予防法③血圧上昇ホルモンとペプチド
死の四重奏と内臓脂肪
健康食品四方山話
アガリクスの悲劇
アトピービジネス
アレルギー性疾患増加の原因と衛生学仮説
残留農薬は本当に有害なのか
蒟蒻ゼリー訴訟とPL法
昭和電工トリプトファン事件
花王エコナ問題
高脂血症薬は本当に必要か?
高濃度カテキンとトクホの課題
ホメオパシーの存在意義
四季の食材-身近な食品に含まれる栄養成分-
「海のミルク」(牡蠣)
「ワカメの色の神秘」
「タケノコパワーでやる気まんまん!?」
「キャベツは生で食べるのがよい!?」
「アサリは女性の味方♪」
「魅惑の赤い宝石」(サクランボ)
「スイカの効用」
「夏バテには赤身魚」
「ナシですっきり!?」
「白身魚なのに赤い!?」(鮭)
「みかんの手」
「冬至の七種(ななくさ)」

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はじめに

医学の進歩のお陰で、2010年度の日本人の平均寿命は、男性79.64歳、女性86.39歳にまで達しています。これは世界的にも十分誇れるもので、男性は世界では4位、女性は世界1位となる堂々たる成績です。

 

しかしながら、医療技術のすぐれたこの日本でもまだ克服できていない病気があります。日本人の死亡原因をみると、2010年度において1位の悪性新生物(がん)で30.1%、2位の心疾患(心筋梗塞など)で15.8%、3位の脳血管疾患(脳卒中)で10.7%の方が亡くなっています。これら上位3つの病気は3大生活習慣病と呼ばれていますが、3つを合計すると死亡原因の6割近くを占めています。

 

このような死亡原因の偏りから現代西洋医学の弱点をうかがい知ることができるように思います。つまり、西洋医学はかつて死亡原因のトップを占めていた結核やコレラなどの感染症や外科手術の必要な虫垂炎などの急性病を克服するのには役立ちましたが、日頃の生活習慣が積み重なって発症する慢性病である生活習慣病には十分に対応し切れていないのではないかということです。

 

一方、急性病に対しては十分な効果を発揮することができず、隅に追いやられた感のある東洋医学ですが、慢性病の蔓延する現代においてはその存在価値が再評価されています。

 

東洋医学で用いられるキーワードの中には、現代でも十分に通用する優れた考え方があります。みなさんは「医食同源」とか「未病」、「上薬・下薬」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

 

それぞれ非常に味わい深い含蓄を含んだ言葉です。まず「医食同源」というのは、日頃からバランスの取れた食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方です。

 

そして、「未病」というのはまだ病気とまで言える状態ではないけれどもすでに体に何らかの異常を来たしていて、将来病気に発展するかも知れないという状態です。例えば、西洋医学でいうところの高脂血症などがこれにあたるのではないかと思います。

高脂血症は、ただ単に血液中のコレステロールや中性脂肪が通常より多い状態であるということだけで、頭が痛いとかお腹が痛いということはなく、本人に自覚症状は全くありません。しかし、長年高脂血症の状態を放置しておくと、動脈硬化になり、果ては心筋梗塞や脳卒中を引き起こして死にも至る恐ろしい病気です。

 

現在の主要な死亡原因となっている生活習慣病は、いずれも日頃の生活習慣、特に食習慣が原因となって起っています。生活習慣病は一度罹ってしまうと治療するのはとても難しい病気ですが、実はこれらの病気に罹らないようにするのはとても簡単です。病名の由来にもなっている生活習慣を改めることができれば誰にでも防ぐことができるのです。「医食同源」と「未病」は、予防医学の重要性を気付かせてくれるとても優れた考え方であると思います。

さらに、東洋医学では、薬を上薬(じょうやく)と下薬(げやく)に分類し、それぞれをうまく使い分けるという考え方があります。下薬というのは即効性のある薬ですが副作用も強く、長く飲むことのできない薬です。一方、上薬というのは効き目は穏やかですが、副作用がないので長期に亘って安心して飲める薬です。

 

生活習慣病の蔓延する現代社会においては、健康食品は日頃の食習慣の乱れを補正してくれる東洋医学でいうところの「上薬」として、「未病」から抜け出すための一助となってくれるのではないかと思います。

 

健康食品は、医薬品のように体感的にすぐによくなるということは余りないかも知れませんが、長く飲み続けることによって、体調を整え、将来降りかかるかもしれない重大な病気から私達を守ってくれる手段として有用ではないかと思います。

 

しかしながら、長く健康食品業界に携わって来た者として、最近の健康食品業界には憂いも感じています。即効性を追求し過ぎる余り、西洋医学的な下薬に成り下がっているのではないかということです。「健康食品」という言葉が認知されるようになった頃の素朴な商品作りに比べ、現在では成分の高含有量を図るために高度に精製されたものや製造効率を上げるために化学合成に頼ったものが多く見受けられるようになりました。

  高度に精製されたものは、効き目もシャープですが、副作用もシャープです。例えば、ブラックコーヒーはきつくて飲めないという人でも、同じブラックコーヒーにミルクと砂糖を入れると飲みやすくなります。

 

また、高度に精製されることによって、本来の有用性が損なわれることもあります。自然食ブームで黒砂糖の人気が高まっていますが、精製白砂糖に比べて黒砂糖にはポリフェノールやミネラル類など有用成分が残存しているという特長があります。さらに、黒砂糖はすぐれた機能性があり、白砂糖に比べて血糖値の上昇が穏やかであるという研究も報告されています。精製白砂糖には残っていないサトウキビ由来の残存成分が糖の吸収を緩やかにしてくれるからです。

 

個人的な見解ですが、本来の健康食品は飽くまでも上薬を目指すべきであり、加熱や乾燥などのごく単純な加工に出来るだけ留めるべきではないかと思っています。

 

その他にも、強引な販売による経済的被害や不適切な使用による健康被害なども古くから発生しており、功罪半ばする健康食品ですが、使い方を誤まらなければ、健康の維持増進に大いに役立つものであると確信しています。

 

なお、適切な使い方をするには適切な情報が必要なのですが、非常に残念なことに現状では薬事法によって健康食品の効用に関する広報活動は著しく制限されています。情報が不足することによって、却ってゆがんだ形で情報が伝わり、混乱を生じているのではないかということを危惧しております。

 

本書は、そのような健康食品まつわる混乱した状況に一石を投ずるため、これまで著者がブログを通じて発信してきた健康食品にまつわる様々な情報を4つのテーマに分類して再編集したものです。

第1章では、健康食品を利用されるにあたり、気をつけていただきたいポイントをキーワード毎にまとめております。

第2章では、個々の生活習慣病の解説とそれぞれの生活習慣病の予防に役立つ食品の機能について紹介させていただきました。生活習慣病の予防には何よりも日頃の食生活が大切なのですが、それに気づいておられる方は少なく、無関心であるかあるいは闇雲に健康食品に頼っておられる方が多いのではないかと思います。そのような中、今一度食品の果たす役割について理解を深めていただき、日々の生活の中で食品を上手く病気予防に活用していただきたいと思います。

第3章では、健康食品にまつわる様々な事件や事故に関連し、私の感想を四方山話という形で綴らせていただきました。日々、様々な事件や事故が発生していますが、中には今後どのように健康食品と接していけばよいのか困惑させされるようなことも起きています。それらの事件・事故について私の考えを述べさせていただきました。

そして、第4章では、身近な食材の機能性について紹介させていただきました。これは、高額な健康食品を買うまでもなく、日頃慣れ親しんでいる食材の中にも優れた栄養機能を持ったものは数多(あまた)存在することを知っていただき、うまく病気予防に活用していただきたく、四季折々の代表的な食材をその特徴的な栄養成分を中心に解説させていただきました。   

どれほどお役に立てるのかはわかりませんが、最後までご高覧いただければ幸いです。


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プラセボ効果

皆さんは、「プラセボ効果」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。他に、偽薬(ぎやく=にせぐすり)効果、プラシーボ効果と呼ばれることもあります。プラセボは、"Placebo"というラテン語が語源で「私は喜ばせる」という意味だそうです。要は、実際には効果があるはずのない偽の薬でも、「この薬はとてもよく効く薬なんだ」などと言われて与えられると心理的な効果を発揮して、病気が治ってしまうという現象です。

             

医薬品開発などにおいては、効果を判定しようとする薬と偽の薬(プラセボ)を投与する二つのグループに分けて臨床試験が行われることが多いのです。そうしなければ、真に薬の効果で治ったのか心理的な効果によって治ったのか正確に評価できないからです。もしも、この世にプラセボ効果というものがないのであれば、単純に薬を投与する前と後で比較すれば十分だということになります。しかし、プラセボと比較しなかった臨床試験はその精度が疑われるというくらいプラセボ効果は医学界でも広く認められた現象です。

 

私がある健康食品の製造会社に勤務していた頃、手紙や電話などで会社のお客様相談室に次から次へといろんな病気がよくなったという感謝の声が続々とお客様から寄せられていました。

 

健康食品ですから、それなりに体によいと思われる栄養成分が含まれていますし、中には病院での治療を受けながら健康食品を召し上がっている方も多いので、どちらが効いたのかといえば医薬品の方が効いたに違いありません。しかし、現代医学でも治療の難しいと言われている難病・奇病まで治ったという改善例がいくつも挙がって来ていました。

 

これは、もうプラセボ効果としか考えられないと思うようになって、はたと気付いたことがあります。健康食品は栄養成分だけでなく、プラセボ効果によっても人々の健康の役に立っているのではないかということです。

 

一般には、健康食品は普段の食事からは十分な摂取量を確保できない栄養成分を補給したり、普段の食品には含まれていないような機能性成分を摂取することによって有用性を発揮していると考えられています。しかし、それだけではなく、心理的な効果も相まって健康の維持増進に役立っているのではないでしょうか。

 

逆に考えると、自分の体調にプラスになるだろうと思うことができないような健康食品は摂取すべきではないと思われます。つまり、健康食品を選ぶ際には、他人から無理に勧められて摂取するのではなく、これなら試してみたいと信頼できるようなものを選ぶべきでしょう。

 

では、どのような健康食品なら信頼できるのでしょうか。その点については、次項の「インビトロとインビボ」で述べたいと思います。

試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

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