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或は天心にて

僕の兄は全てを支配していて全てを慈しみ全てを恨んでいる。

「みっとないもっと上手くやれよ」「ごめんなさい」「なんで仕事一つマトモに出来ねえの」「ごめんなさい」「つかこんだけ事大きくしてこれだけで済むのって俺のおかげだからなわかってんの」「ごめんなさい」「お前本当に俺と同じオヤジから生まれたの」


 僕らは世間で言うところの双子のようなものだった。性こそ違えど同じ肉から生まれた僕らは形質が似ていた。だが生まれたときから彼が全てを従えることは父の命で決まっていて、僕も彼に奉仕する八百万の一つだった。彼のご機嫌を取り彼の命を受け入れ彼の為に世界を紡ぐ。全ては彼のもので絶対だった。

「お前の泣きそうな顔、」

 彼の左目が強く光った。それが合図。
 


「まだスサのほうが上手くやったよね」

彼は嗤うのだ。「にいさま、」

「そうだスサにやらせよう、もう一回」

彼はそうやって嗤うのだ。「にいさまやめて」

彼は僕らの義弟を始末に向かわせたらしい。義弟はいつも泣いている。いつも殺すものがないか探して泣いている。
「やめてやめて繰り返すなんて、やめて」

「今度は綺麗に――殺してやれるんじゃない?」

―――生き返らせてくれると言ったのに。

 彼は全てを支配していて全てを愛していて全てを欲している。彼は全てを支配でき組み敷けると思っている。それは心の持ちようも同じだと考えていて従わないものを憎んでいる。

「お前に友達なんていらないじゃんあはは精神異常者」

 僕はこの遠い柩で独りぼっちだけれどいつも彼に隷属していて逃げられないでいる。だって僕は彼なしでは存在しえないし生きて行けない。片割れの僕らはそうして永遠に生きて行く。僕の生きる意味は彼を生かすこと。

「愛してるぜ出来損ない」

或は天心にて
アマテラスとツクヨミとスサノオ





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