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06.陸羽西線・鳴子温泉・陸羽東線をめぐる南東北の旅

  2月の下旬から春の「青春18きっぷ」の発売が始まり、どこへ行くあてもないのに思わず1冊購入しました。
 まず、どこへ行くか。
 仕事が終わった金曜の夜、夜行快速で旅立ち、日曜日の夜に帰って来れる場所を、と考えたのですが、首都圏を発着する夜行快速列車は「ムーンライトえちご」(新宿~新潟)と、西へ向かう「ムーンライトながら」(東京~大垣)の2本に限られています。
 一週間前にインターネットの「JRサイバーステーション」で指定席の状況を確認したところ、週末ゆえか「ムーンライトえちご」しか空いておらず、北へ向かうことにしました。

 「ムーンライトえちご」を使い、温泉に入って、かつ鉄道にもなるだけ乗っても無理のないスケジュールを、と考えた時に考えついたのが地図のルート。
 陸羽西・東線に完乗して、鳴子温泉に立ち寄り、その日は仙台で宿泊するというものですが、時間的にもかなりの余裕があり、18きっぷの普通列車の旅でもそれほど辛い旅にはならなさそうです。

 新宿を23時9分に出る新潟行の夜行快速「ムーンライトえちご」号は、18きっぷで北へ向かう旅には欠かせない存在です。
 昨年(2003年)3月のダイヤ改正以降は、車両が特急用のものに変わったのを機に、かってのように深いリクライニングをする座席ではなくなりましたが、さすがは特急用車両ゆえか揺れや騒音が少なく、寝やすかったような気がします。

 また、我々のような"ブルートレイン世代"が喜ぶ国鉄型の塗装車両(国鉄時代からの塗装を変えていない車両のこと)を使っているのも、個人的には好感度が高い理由かもしれません。

 一杯飲んで気持ちよく眠りにつき、気がついたら早朝5時前。終点の新潟に着いていました。2分の接続で村上行の快速列車に乗り換えなければなりません。
 この快速列車は窓に背を向けて座るロングシートで、景色も見られないためか、それとも通勤電車を思い出すのかは分かりませんが、とにかくよく寝られます。
 約1時間弱で村上に着き、ここから先はディーゼルカーで日本海を眺めながら北上!……だったはずなのですが、今日は睡魔に負けて夢の中…。気が付くと酒田に着いていました。

 日本海の車窓を犠牲にしてまで睡眠をとったのは、ここ酒田から陸羽西線・陸羽東線というローカル線に乗って山形縦断の列車旅を楽しみたいからなのです。

 陸羽西線には「奥の細道 最上川ライン」との愛称が付いているように、最上川に沿って走る景勝ローカル線です。
 その陸羽西線の始発は、酒田の手前の余目(あまるめ)駅からなのですが、列車は酒田始発が多く、ここまで足を伸ばしてきました。
 ちょうど接続していたのが陸羽西線・新庄行の快速「最上川2号」。酒田と新庄の間(約55km)を約50分で結び、途中の停車駅も3つしかありません。

 「Mogami-gawa LINE」というロゴマークの入った2両編成の新型ディーゼルカーのうち1両は、1人掛け座席が窓の方向に回転できる"展望仕様"になっており、車窓から最上川を楽しめるような配慮がなされていました。なかなか嬉しい演出です。

 しかしながら、今日はもう3月だというのにかなりの雪。窓ガラスが曇ってしまい、最上川もぼんやり見える程度で、車窓を思う存分楽しめなかったのは少し残念でしたが、何週間か先の新緑の時期には、美しい車窓が期待できそうです。

 新庄駅から次に乗る陸羽東線の列車まで1時間以上の待ち時間があり、駅の中を少し覗いてみました。
 新庄は山形新幹線の始発駅のためか、駅構内は豪華で広すぎるほど。駅と一緒に「ゆめりあ」という名のコミュニティー施設が併設されており、物産店や旅の情報コーナー、レストラン、映画館などがあり、時間をつぶすにはもってこいの場所です。もちろん休憩スペースもあり、列車の待ち合わせにも有り難い施設かもしれません。

 新庄からは陸羽東線で山形県を抜けて、宮城県へ向かいます。
 陸羽西線の「最上川ライン」に対し、東線は「奥の細道 湯けむりライン」という愛称が付けられているように、沿線には鳴子温泉をはじめ、温泉地が点在しています。

 10時44分発、陸羽東線・小牛田(こごた)行の列車は「湯けむり」という名の快速列車。陸羽東西線ともに快速列車に乗れるなんて、少し得した気になります。
 深い雪に埋もれた瀬見温泉、最上と主要駅だけに停車した後、堺田の峠を越えると宮城県、これまでの雪が嘘のように急に青空が広がり、鳴子温泉に到着。ここで下車しました。

 1000年以上の歴史があるという宮城県の著名な温泉地・鳴子は、駅を降りた瞬間から硫黄の香りが漂っており、名湯の雰囲気が一杯です。
 大きなホテルや有名な旅館もありますが、やはり温泉地では地元の人も使う共同浴場に入りたいと思い、向かったのが「滝乃湯」というわずか150円で入浴できる浴場です。

 総ヒバ造りの浴槽がとても良い雰囲気で、温泉の香りが強く漂う乳白色のお湯につかると、夜汽車の旅の疲れも吹っ飛んでしまいます。こういう素晴らしい共同浴場に巡り会えると、旅をしていてよかったなあ、という気分になります。

 温泉ですっかり気分が良くなり、昼間だというのについつい目の前の古びた居酒屋の暖簾をくぐってしまい……。
 宮城県の名物だという「うーめん」(温麺)をすすりながら、地元の名酒を幾杯か味わっていると、もうこの先の行程は一切中止し、この温泉地に泊まりたい衝動にかられました。
 が、何とか鳴子温泉駅に足を向け、次の列車で小牛田へ向かい、東北本線に乗り継ぎ仙台のビジネスホテルにたどり着きました。

(2004/3/14)

07.青春18きっぷで行く吾妻線 温泉満喫の日帰り紀行

  3月に入って「青春18きっぷ」が使える初めての週末、吾妻(あがつま)線(渋川~長野原草津口~大前)に乗って群馬県の名湯を味わいに行きました。
 東京方面から普通・快速列車を使って吾妻線に乗る場合、あまり接続が良いとはいえず、朝の列車を逃すと2時間ほど間隔が開いてしまいます。
 それに乗るためには、上野5時13分発の高崎線始発電車に乗る必要があります。1日を有効に使うため、早起きをしてみました。

 東京5時2分発の京浜東北線に乗ったのですが、この列車が上野に着くのは5時9分。
 東北本線と常磐線の始発列車がいずれも5時10分発のため、上野到着と同時に"運動会状態"に。
 ほとんどが無事乗車できたようで、わずか1分でも乗り継げるんだなあ、と感心してしまいました。私の乗る高崎線の始発列車は4分接続なので、もちろん楽々です。

 上野から普通電車で約1時間40分、高崎に到着。7時25分発の長野原草津口行に乗り込みました。
 吾妻線は高崎より先の渋川が起点ですが、全列車が高崎方面へ乗り入れています。
 この路線には、窓に背を向けて座るロングシート電車もあるのですが、今回は東海道線色の古い電車が3両。しかも空いていて快適です。

 渋川を過ぎると単線となり、列車の乗り心地も多少悪くなりました。途中の駅では反対列車との行き違い停車もあり、次第にローカル線の雰囲気になってきます。
 昨夜、関東一帯で雪が降ったため、左手には雪景色と雄大な榛名の山並みを望むことができ、早朝の眠気さえ吹っ飛ぶ美しい車窓が続きます。

 途中の小野上駅を過ぎた辺りからは、左手に吾妻川が寄り添ってきます。吾妻線の車窓を楽しむ場合は、左側がおすすめかもしれません。
 渋川から1時間で長野原草津口に到着。
 駅名の通り、草津温泉への入口駅です。草津温泉行のJRバスは駅直結のターミナルから出発。約30分(640円)で草津温泉バスターミナルへ着きました。

 バスターミナルから5分ほど歩くと、草津温泉のシンボル「湯畑」があります。源泉を汲み上げて湯の花を採取する場所で、硫黄の香りと湯煙が漂う中、滝のようにお湯が溢れ出ています。
 昨今、沸かし湯や循環湯を使う温泉も多い中、ここは正真正銘の「温泉」であることが実感できる場所です。

 そして、草津温泉の素晴らしいところは、地元民用の共同浴場が18カ所もあり、そのすべてに無料で入られることです。
 早速、湯畑の近くにある『千代の湯』に行ってみました。
 5人も入れば満員になるような小さな温泉でしたが、湯質も良くほのぼのとした雰囲気が一杯。すべての温泉を巡ってみたい気分になりましたが、これは次回の楽しみに取っておくことにして、再びバスで長野原草津口駅に戻りました。

 長野原草津口からは、12時5分に出る大前行に乗って吾妻線の全線完乗を目指します。
 15分ほどで万座・鹿沢口駅に到着。万座温泉への入口駅であり、列車の多くがこの駅止まりなのですが、高架上に片面だけのホームで、少々、貧弱な感じもしました。

 そこから5分ほどで、いよいよ吾妻線終着の大前駅にたどり着きました。
 片面ホームがポツリとあるだけの静かな無人駅で、駅前には嬬恋温泉の一軒宿「つまごい館」くらいしか見当たりません。列車に乗ってきたのはわずか5名。全員が私と同じ「鉄道マニア」でありました。
 1日5本しか列車が来ない終着駅。のんびりと温泉に入るというのもいいかもしれません。

 大前から折り返し列車に揺られ約25分、川原湯(かわらゆ)温泉駅に到着。今度はこの駅で下車してみました。
 長野原草津口駅の1つ手前、渋川寄りにある駅で、800年もの歴史を持つ温泉地があります。
 ここでは現在、「八ッ場(やんば)」という名のダム工事が進んでおり、近い将来には付近一帯が水没させられる予定になっています。温泉街はもちろん、JR線や国道も沈んでしまうため、その付け替え工事も進行中のようです。
 温泉の入口には「ダムに沈む川原湯温泉へようこそ」という看板も見受けられ、何ともいえない寂しさを感じました。

 駅から歩いて10分程度で温泉街へ着いたのですが、移転した旅館や家屋も多く、静まりかえっています。飲食店などもほとんどが閉店中。温泉地として寂れつつあることが伺えます。

 共同浴場の「王湯」に入湯。300円という良心的な値段で内湯と露天風呂が楽しめます。
 源頼朝が開湯したといわれるためか、建物には笹竜胆(ささりんどう)の家紋が大きく掲げられており、歴史の深さを感じました。
 貸切状態の内湯と露天風呂をはしごし、肌がつるつるする良質な湯を堪能しました。

 それにしても、今時ダムを作って街を沈めるなんて、時代錯誤のような気がしてなりません。
 特に「飲み水対策」などとして、東京都をはじめとした都県が税金を使って作っているかと思うと、風呂に入りながら腹立たしいやら情けないやらで、複雑な気分になってしまいました。

(2005/3/6)


七つのローカル線紀行【あとがき】

 この『七つのローカル線紀行』は筆者が運営するサイト「鉄道紀行への誘(いざな)い」で掲載された内容に、若干の加筆・修正を加え、一つの「電子本」としてまとめたものです。2002年から2005年にかけて書かれているため、列車の時刻や観光地の状況など、現状と少し異なることがあるかもしれません。この点を含めてお読みいただけましたらと思います。

 「青春18きっぷ」や「北海道&東日本パス」など、普通・快速列車が自由に乗れる切符でローカル線の旅を楽しむ際の参考になりましたら、本望です。

2011年6月
西村 健太郎

七つのローカル線紀行【奥付】



七つのローカル線紀行



公開日 : 2011年6月23日
最終更新 : 2011年6月23日

著者 : 西村健太郎
[プロフィール]

編集・制作 : 鉄道紀行舎(http://kikosya.jp/
発行所 : 株式会社paperboy&co.「パブー」


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この本の内容は以上です。


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