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会食

こころ

「わかっているわ」
 カシス提督は頷いた。
「しかし、あなたと本当にリアル世界で一緒に食事ができるのは、いったいいつになるのでしょうね」
 再び仮想空間と現実の空間を組み合わせた拡張現実の部屋で、カシス提督はシファと、豪華なテーブルで向い合って食事をしている。

「なかなかうまくいきませんね」
 シファは頷いた。
「でも、いくらか気が楽です」
「そうなの?」
 提督は驚いた。
「ええ。
 予め後悔すると分かっているだけ、まだましです」
「あなたにはそうでない困難がいくつもあったわね」
「提督もそうではないでしょうか」
「そうね。ええ。でも私は、もともとなにも期待していないから、後悔も小さなものよ」
「それでも提督はお辛そうですが」
「あら」
 提督は微笑みながらナプキンを手にし、口を拭いた。
「まったく、あなたには隠し事ができないわね。
 そのとおりよ。
 どうにも、命というものは寂しがり屋なものね。
 人恋しさはどうして、こうも捨てられないのか」
「私は人間ではありませんが、その気持ちは私も強く持っています」
「そうね。そうだから、あなたは人の心を動かせるのね」


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