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父ちゃんのタクシー(カラーVer.)
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小ぐまのきょうだい ケーキをつくる
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sigma vol.1.0
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アネモネ。
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魔法のぼうし
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プロローグ
ミドリとコンペイトウ
スーと家庭教師
サフラン
少し前のおはなし
ぼうしに頼っていた2人
素直になれない
ぼうし復活?
よろず屋にて
おとしもの
月夜
りんご
魔法使い
1日の終わり
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ニコニコしょうてんがい
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今週のキョムちゃん
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自虐的恋愛年表~なんだかすみません。~
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期末試験前也 上
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嘘つきの甥
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キュレーションの時代
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奥付
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「嘘つきの甥」 
著者:中山智幸

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キュレーション【curation】
無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること。


ジョゼフ・ヨアキムは生涯のほとんどを放浪者としてすごしました。黒人とネイティブアメリカン、そしてフランス系白人の血を引いた彼はアメリカのミズーリ州に生まれ、サーカス団に入ってアメリカ大陸を旅し、ヨーロッパにも遠征します。故郷に戻って結婚したのもつかの間、徴兵されて第一次世界大戦に出征し、そして戦争終結後もそのまま放浪の旅をつづけて、二度と故郷には戻りませんでした。
 大戦から世界恐慌へと進んでいく激動の時代。彼の人生はホーボーそのものでした。二十世紀初頭の荒々しいアメリカ社会に登場してきたホーボーはつまりは放浪労働者。インフラが整備されつつあった鉄道網を使って無賃乗車で全米を旅し、日雇いの仕事をしながら移動し続けた人たちです。北米の広大無辺な大地を移動していく彼らの生き方はある種のロマンを生み出し、のちに「さすらい」をテーマにしたさまざまな小説や詩、音楽、絵画をアメリカ文化の中に生み出しました。ジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』。ボブ・ディランの名曲『風に吹かれて』。映画『イージーライダー』。みんなその系譜です。
 でもヨアキムは単なる放浪者。ミュージシャンでも作家でも画家でもありません。彼は人生のほとんどを市井の平凡な人としてすごし、家族やわずかな友人を除けばほとんどだれも彼に見向きもしませんでした。八十歳近くになるまで、ただの名もない人だったのです。
 でも彼は、ある一回だけの偶然の出会いから、いまにいたるまでに名前を歴史に残しています。

  彼の人生をもう少しくわしく追いかけてみましょう。
 ヨアキムが生まれたのは十九世紀の終わ りです。生年は諸説あってはっきりしませんが、1890年ごろ。父は黒人とネイティブアメリカンの混血。母はフランス系の白人とネイティブアメリカン、黒人の血を引いています。その両親から生まれたヨアキムは実に複雑な民族的血統の末の子供でした。
 彼は子どものころから絵を描くのを好み、つねづね「自分はナバホの血を引いてるんだ」というのが自慢でした。ナバホインディアンは美を愛し、部族の中の芸術家を厚く遇したことで知られています。「人間にとっての究極の使命は、美をつくりだし、その美にかこまれて生きることだ」というのはナバホの教え。
 もっともヨアキムは実はチェロキーとクリーク族の末裔で、実際にはナバホの血は引いてなかったようですが。
  ヨアキムの人生は、旅から旅への放浪でした。生家は貧困にまみれていました。彼が生まれたころ、アメリカの中西部は深刻な干ばつに襲われ、農地の収穫量は激減し、家や土地を借金の抵当に入れていた多くの農夫たちは故郷を追われていったのです。鉄道員から農業に転じたヨアキムの父も、この悲惨な物語の例外ではありませんでした。
 ヨアキムは九歳になるころにはもう家を出て、サーカス団で馬の鞍を磨く仕事をするようになります。父親から十九世紀なかばの鉄道ブームの時代、鉄道員として旅から旅へと移動することの自由さ、楽しさ、鉄道への愛を聞かされていて、放浪への憧憬をつのらせていたこともあります。ヨアキムはやがて、多くのサーカス団を転々として、北米をくまなく旅するようになります。仕事もまもなく、鞍磨きからポスター貼りへと昇格しました。
 サーカス団は居心地のいい場所でした。寛大で、公平で、自由な人たち。厳しい野外生活を営み、厳しい労働を強いられ、だからこそ団結力の強い仲間たち。ヨアキムは、ハンサムで頭の回転が速く、機敏な若者へと成長していきます。
 サーカスの仲間たちと移動していくアメリカの荒々しい大地。
 岩だらけの風景。
 深い針葉樹の森。
 遠い地平線。
 彼はやがて海外にも出て行きます。イギリス、北イタリア、南ドイツ、オーストリア、バルカン半島のモンテネグロ、ロシア、そして中国。中南米。そうした異国の土地の風景は、彼の脳裏に強く焼き付けられました。
 18歳のころに彼は実家に戻り、マートルという近所の農夫の娘と結婚しました。二歳年上の姉さん女房で、今でいう「できちゃった婚」です。
 結婚して最初の四年に三人の子供が産まれますが、生活は極端に苦しい日々でした。おまけに大規模な洪水が彼の住んでいた一帯を覆い、しかも当時黒人の就労は制限されていて、農業以外の良い仕事にはほとんど就けませんでした。溝掘りや道路づくり、溶鉱炉のかまたき、採石場での石運び、炭鉱掘りーー。そんな仕事しかなかったのです。

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