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090

 

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傾く日の光が閑散とした廊下を差す。僕の選んだ道は何でもない事を特別なことと感じる道。この廊下をもう二度とは通らない道。君が教えてくれたんだ。魔法はかけられるものじゃなくてかけるものなんだって。だから僕は僕に魔法をかける。今は孤独でも一人じゃないと感じられる魔法を。#twnovel

 

 


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一人泣く夕方のソファの上、膝を抱えて君が帰るのを待つ。泣いた事に意味はなくて。無性に君に会いたかった。毎日帰ってくるはずの君なのに家を出てから帰ってくるまでの時間がこんなにも長く感じる。僕の姿を見つけた君はすぐさま僕の頭を撫でた。その手が僕にとってのとても尊い冠。#twnovel

 

 


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人の気配のない朝の駅。君は静かに缶コーヒーをくれたね。僕に別れを告げて欲しいの?その答えは分からないままでも列車に乗り込む君の横顔が孤独を色濃く映していた事は確かで。だから君の望み通りさよならと叫んだ。まだいつかの希望を断ち切れないまま声の限りさよならと叫んだ。#twnovel

 

 


093

 

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夜の映画館に二人で入る。モノクロの画面に映る落ち葉。映画の中の物語の季節は秋なのだろうか。分からない。心がそぞろなのは隣に君がいるから。本当は君を見ていたいのに無情にも物語は進んでしまうから。君を見つめる代わりに画面を見つめていた。もどかしく心で君を見ていた。#twnovel

 

 


094

 

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コーヒーの香り。君の手元にある水筒から香ってくる。少し肌寒い早朝の海辺で静かな時を過ごす僕ら。手渡されたそれはとても温かで。僕の心にまで温もりが届いてくるようだった。その時僕は小さな嘘をつく。本当はこんなにも些細なことが泣きたいほど嬉しいのに無表情という嘘をつく。#twnovel

 

 



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