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夕暮れ時にテレビを見ていると、君もこたつに潜り込んできた。冬になると昔こたつに猫が隠れていた事を思い出す。暑くて慌てて出てくるんだ。君が何考えてるのと聞いたから説明してもふーんの一言で済まされて。でもこうしているとどんなに愛を囁くよりも愛し合っていると思うんだ。#twnovel

 

 

 


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裏切ったな、とあからさまに言えたならどれだけ楽だっただろう。それじゃあまるで畜生だと、いな犬にも劣る行動だとあの夜屋上で声を荒げる事ができたならどれだけ楽だっただろう。あの日僕は静かに身を引いた。傷つきたくなくて。真実は何もしなくても君に突きつけられるものだから。#twnovel

 

 


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朝起きて手を手を繋ぐと君の手は氷のように冷たくて。ハッとさせられた僕は君の目覚めに安心する。冬の朝はいつもそうだったっけ。一年経つとおぼろげになる。この季節がやってきたのかと冬の訪れを実感した。手を握ったまま暖まるまで離さない。冷たい手を暖めるのが恒例の僕の仕事。#twnovel

 

 


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僕が歩きながら高架下に差しかかると後ろから足音と息遣いが聞こえてきた。振り返る前からすぐに分かったよ。追いかけてきたのは君だって。早朝で危ない場所だっていうのに君は僕の忘れた本をただ渡すためにそれだけを思って走ってきてくれた。その真っ直ぐな気持ちごと君を抱きしめた#twnovel

 

 


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最後の一つだよと僕に告げて淡々と君は一人みかんを剥き始めた。がっかりしている僕にはい、とみかんを差し出してくれた。君の嘘に騙された僕。食べられないつもりでいたから、いつものみかんも余計おいしく感じられて。テレビに映る花束を見つめる君にいつか本物をあげたいと思う。#twnovel

 

 



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