056
056
毎朝君のために朝ご飯を作る僕。でも最近芯から寒さが染みてきて。暖房を入れても台所は底冷えが酷かった。ブルブル震えながら卵を割っていると君が急に背後からマフラーを僕の首に巻き付けた。一見、身の危険さえ感じる行為。寒そうだからとそつなく返す君に返す言葉は…ありがとう。#twnovel
057
057
夕暮れ時にテレビを見ていると、君もこたつに潜り込んできた。冬になると昔こたつに猫が隠れていた事を思い出す。暑くて慌てて出てくるんだ。君が何考えてるのと聞いたから説明してもふーんの一言で済まされて。でもこうしているとどんなに愛を囁くよりも愛し合っていると思うんだ。#twnovel
058
058
裏切ったな、とあからさまに言えたならどれだけ楽だっただろう。それじゃあまるで畜生だと、いな犬にも劣る行動だとあの夜屋上で声を荒げる事ができたならどれだけ楽だっただろう。あの日僕は静かに身を引いた。傷つきたくなくて。真実は何もしなくても君に突きつけられるものだから。#twnovel
059
059
朝起きて手を手を繋ぐと君の手は氷のように冷たくて。ハッとさせられた僕は君の目覚めに安心する。冬の朝はいつもそうだったっけ。一年経つとおぼろげになる。この季節がやってきたのかと冬の訪れを実感した。手を握ったまま暖まるまで離さない。冷たい手を暖めるのが恒例の僕の仕事。#twnovel
060
060
僕が歩きながら高架下に差しかかると後ろから足音と息遣いが聞こえてきた。振り返る前からすぐに分かったよ。追いかけてきたのは君だって。早朝で危ない場所だっていうのに君は僕の忘れた本をただ渡すためにそれだけを思って走ってきてくれた。その真っ直ぐな気持ちごと君を抱きしめた#twnovel