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何十階段上った先は 

 

こんなにキツイなんて思わなかった。


「この区域 担当ですからね。よろしく」
大丈夫?と聞きながらずっしり重いチラシの束を渡されても
にっこり笑って、もちろん大丈夫ですっ、と答えた。
ダイエットウォーキングに給料がつくのだ。おいしいじゃあないか。
渡された予定表に、自分の名前があった。
何十棟もあるマンモス団地だ・・・・。

一度目のチラシ配りは集合ポストでよかった。
戸建の家を見落としないよう地図を見ながら回るより、効率もいい。鼻歌交じりだ。
しかし・・・。
「2度目のポスティングは玄関ドアポストでお願いします」
非情な声も、実際にやるまでは、まだそれほど重く響きはしなかった。


古い団地。
一棟に上り口が3、4個。階段を数段上がり踊り場、向きを変えさらに数段上ると両方に玄関ドア。
それが5階まで続くのだ。そしてそれが何十棟だ。
ナイロンのスタッフジャンパーは暑い。
昨日は今日ほど寒くなかった。、それでもだ。
徐々に汗がにじむ。だんだん暑くなって、耐え切れず中に着たものを一枚脱いだ。
更にスタッフジャンバーですら暑すぎて着てはいられない。汗だく。
膝が痛む。
足が笑う。

もうやだ。
むりっ。
この一棟で今日は終わりにしよう。
もう一段だって階段上らないぞ。
そうやって、上った最後の階段の最上階に そのドアはあったのだ。
おばあちゃんの手によると思われる貼り紙にはこんな風に書いてあった。
「のぼり○○段、下りも○○段 こんな最上階まで御苦労さま。いつもありがとう。」


新聞配達の人はここまで来るんだろう。牛乳の配達なんかも、ここいらでは利用されているようだ。

速達や宅配もやっぱりここまで上がってくるはずだ。
そんな汗水たらしている人への、ちょっとお茶目な気配りが
へとへとになった自分にも向けられたようで 何だか、妙にうれしかった。

面白いもの見つけた嬉しさ、話のネタを見つけた喜びも確かにあったけれど、それだけじゃない。
誰かが誰かをねぎらう言葉を見つけたこと、それがきっといろんな人の励みになっていること、

それが伝わって、嬉しかったんだ。



今日は折角の休みだというのに、足はパンパンで、湿布だらけだ。

それでも、あの貼り紙のことを考えると口元が緩む。
そうだなぁ・・明日もできるだけは頑張ろうかな、なんて単純に思ってしまったのだった。

連絡が入った。
効率悪すぎるから、明日からはみんな集合ポストでいいそうである(涙)


お気楽なイノシシの絵と お気楽だけでは済まないイノシシやハトの話

 

イノシシ。
亥年の年賀状に使った絵です。

今朝の番組で イノシシ被害についてやっていて
せっかく収穫を前にした みかん畑がズタズタに荒らされていたり
根っこから掘り返された木を前に 農家の方が真剣に困っていることを
話していた。

更に イノシシに襲われて 愛犬を亡くされた家族のコメントもあった。

山が減り、食べ物もなく 出てくるしかなかったイノシシに同情もされながら
イノシシに殺られた「犬」は、他のひとからすれば たかが「犬」でも
自分たちにとっては 「大事な家族」だったんだ・・・。
そんな 話だった。


その日捕まった若いイノシシは 小さなオリの中
柵に無茶苦茶に突進して ガンガン身体をぶつけていた。
「こんな風に獰猛な生き物で・・」と説明されていたが
イノシシにとっちゃ 出たい一心なんだろうな、と思う。

今日 近くに電車で出かけたら
駅近くの広場に こんな掲示があった。(うろ覚えではあるが)

「ハトにエサをやらないでください
あなたのその行為が街を汚します
ハトはそのことを知りません」

どんなひとが考えた文なんだろうな。
言いたいことが溢れて書き切れなかった感じ。
なんだか味のある掲示物だった(の割に 「うろ覚え」)。


前はたくさんいた ハトが
今日は一羽もいなかった。


マフラー

「できの悪い子ほどかわいい」 なんて親に言われても
何だか嬉しくなかったが
まあ、姉妹で較べれば 確かにデキの悪い方だった。

それでも 結構不思議な仲良しで 

(今思えば 赤面ものだが)
姉はその才女揃いの学校に 私の描いた下手くそな漫画を持って行っては
誰とはなしに見せびらかし

私は私で、
姉の通う、そのお嬢様学校の友達や、
近くの男子校の賢い坊ちゃん仲間でやっている趣味のバンドのライブに、
狭い公立校区内でぶらぶらするしか遊び方を知らないような私の友達を 
引き連れて応援に行った。
いやはや、思い出すと なかなかこっ恥ずかしい姉妹であった。


絵と何の関係があるのかというと
これは WEB上の文字制限付き創作バトルで大いにコケた自作の
後から描いた挿絵だからです。
お題は「マフラーを巻いた女の子が・駅で・特別な日に」でした。
できの悪い子ほど可愛い・・かどうかはともかく
まあ、どの子(作品)もそれなりに愛着はあったりします。


タクシーの客 その2

 

運転手さん 急いでっ!!
言葉の端っこが トゲトゲしてる。

乗り込んできたのは なんてことない 近隣のごく普通の住宅地。
行き先もまた となり町の駅から 少し先の住宅地。

ちょっと そぐわない感じがするのは
女性の化粧と服装のせいだろう。
若い子が街中を歩いていたら気にも留めない 流行りの格好だけど
ちょいと年上のおねえさんだ。

時間を始終気にしている様子で 
ミラーに映る表情は かなり険しい。

おおざっぱなルートを言って あまり慣れてないことをほのめかす。
「仕事始めたてなんでー」なんて のんきな言い方したら
キレちゃいそうな雰囲気だ。

近くまで行ったら 言うから。
とにかく 急いで!!

年下の女性だろうが お客はお客。
覚悟はしていたけれど ものの言い方にちょっとひっかかる。
まだまだ 修行が足りんなぁ・・・・。

急ぐ先はやっぱり 狭い道を入った住宅地で
どうやら 勤め先のスナックだ。
出勤時間に遅刻できない、そんな事情のよう。

くねくね カクカク
精一杯急いでも
スピード出せる道じゃない。

それでも やっとたどり着く。
イライラした表情のまま
「待ってて!!!」
と 転げるように 店に飛び込んでいく。


遅刻だったら こっちにクレームだろうか。
料金踏み倒されちゃうんだろうか。
待つ時間は長く感じる。

やっと女性は店から出てきて 料金を払う。
タイムカード、間に合ったみたいだ。


「ありがとう」
やっと笑顔になったそのひとは
乗車した時より ずっとずっと美人に見えたそうだ。



お礼

 

ずいぶんと ばらばらな内容で

まとまりのない 絵柄ですが

 

読んでくださって(観てくださって)ありがとうございます。

 

描きためたものも 残り少なくなってきました。

 

ぼつぼつ溜めて また 次の1冊を作りたいと思っております。

 

(絵は 戌年の年賀状の絵です。)



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