第一節 未知の扉
随分山奥まで来たものだとそのちきゅうの子は思った。
京都市街から長いことバスに揺られて降りたところは栂尾山の高山寺。

ひっそりとして人気のない境内を歩いていると大きな足を見つけた。
仏足石だった。
足の指が一本多いような気がして
「一本、二本、三本……」
と数えていると、喉のあたりに ずんずん と力を感じた。
ずんずん ぐんぐん ずんずん ぐんぐん
その感覚はどんどんはっきりしたものになり
喉から渦を描くように広がっていく。
ちきゅうの子の体はこの土地と共鳴しはじめ、
ぐわんぐわん ぐわんぐわん
と、体は弧を描きながら奏ではじめた。
やがてその音楽は燃えるマグネシウムのように眩しい光となり
「Speak out ! Speak up!」
とちきゅうの子に叫びはじめた。

「あ、扉が開いた」
とちきゅうの子は心の中でつぶやいた。
内なる未知の扉が開いたような感覚。

宇宙と繋がる扉はいつでも内にある。
高山寺の煌きはちきゅうの子にそれを思い出させた。

第一節 金の川
その日、ちきゅうの子は端から海を眺めたくなり室戸岬へ来た。
もう岬という辺りまで来たとき洞窟が二つ並ぶようにしてあるのを見つけた。

若き日の空海が修行していた洞窟で
空海の口の中に金星の光が飛び込み、虚空蔵菩薩(智慧と福徳の仏様)が一体を明るく照らしながらやってきた、
という言い伝えがあるらしかった。

そのちきゅうの子は一つ目の洞窟に入ったときビジョンを見た。

それは真っ暗な闇の中で金色に光り輝く川。
真っ暗な空間はあらゆるもの、何者でもない全ての存在。
キラキラと輝いて流れる光の川は、私たちの純粋な意識。
その意識はインスピレーションがくるところ、霊性という言葉が当てはまる美しい調和の意識。
そのビジョンはそんな宇宙をちきゅうの子にみせた。
あれは空海が探求していたものだったのかもしれない。
帰り道、夜空に点滅する飛行機を見上げながらちきゅうの子はふと思った。
第一節 富士山
同じ場所から
同じ景色を見ても
こんなに違う。
現実をどう捉えるかで世界は変わる。
私たちはそれを選択する力がある。